129億光年先の星を発見、最遠記録を大幅に更新 千葉大などの研究
2022年4月2日 09:20
NASAハッブル宇宙望遠鏡を用いた国際共同研究チームが、129億光年かなたの宇宙空間に、単独の星の姿を捉えることに成功した。米国ジョンズ・ホプキンス大学が中心となり、日本からは千葉大学の研究者も参加している研究プロジェクトによるもので、2018年に記録された90億光年という記録を大幅に塗り替えた。
【こちらも】NASA、矮小銀河で超大質量ブラックホールを発見 世界初
地球から観測された、このEarendelと名付けられた星の光は当然、129億年前の光である。宇宙ができてからいま約138億年であるため、宇宙ができて9億年ほどの頃、つまりは宇宙初期の光を捉えたものということでもある。宇宙の進化の過程や、星と銀河の生成に関し手がかりをもたらしてくれるものと期待されている。
今回の研究に用いられているのは、重力レンズと言って、自然の集光現象を利用した方法である。2018年に90億光年離れた星を観測したときと、使われている技術そのものは同じだ。ただ、90億年前よりさらに古い、宇宙誕生からまもない頃の星の光を観測することが望まれていたので、今回の発見はその期待を満たすものであったと言える。
さて、EarendelはWHL0137-08という銀河団の背後の遠方銀河にある。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたその銀河団の遠方銀河を解析していた際、研究チームは星のような光を発見した。詳細な検討を加えたところ、それは確かに、重力レンズによって増幅された、単独の星の光であったのである。
このEarendelが具体的にどういう星であるのかについて、詳しいことはまだ分かっていない。研究チームは今後、2021年の末に打ち上げられたばかりであるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用い、温度はどれくらいか、重元素をどれくらい含んでいるかなどといった点についての、詳細な観測を行うことを検討していると言う。
なお研究の詳細は、「A highly magnified star at redshift 6.2」と題され、Natureに掲載された。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)