太陽光と水から水素と過酸化水素を効率よく生成の光触媒電極を開発 名大など

2022年4月1日 08:25

 名古屋大学、神戸大学、科学技術振興機構などは3月23日、光触媒であるヘマタイト(赤さび)を、助触媒となるスズ(Sn)とチタン(Ti)の複合酸化物(SnTiOx)で被膜することで、太陽光と水から水素と過酸化水素を効率よく選択的に生成することに成功したと発表した。過酸化水素はさまざまな産業的な用途に使われており、今回の研究成果は、水素製造の採算性を向上させ、水素の普及に貢献することが期待されるという。

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■水素製造の採算性

 近年、CO2の排出による地球温暖化が急速に進行しており、脱炭素社会の実現はもはや待ったなしの急務となっている。この脱炭素社会実現のための次世代エネルギーとして、現在、注目を集めているのが水素だ。

 だがその製造コストは高く、採算性は良くない。もし水素と同時に有用な化成品を製造できれば、この問題解決の一助となりうる。

 そのような有用な化成品の1つとして考えられるのが、過酸化水素だ。過酸化水素は消毒剤、洗剤、化粧品、漂白剤、浄水、土地改良などさまざまな産業的な用途に使われている。

 だがこれまで、水素の製造と同時に過酸化水素を生成することはほとんどできなかった。

■水素と同時に過酸化水素を効率よく選択的に生成

 研究グループはまず、導電性ガラスの表面にスズとチタンを添加したヘマタイトを塗布し焼成。この焼成によりヘマタイトの表面にスズとチタンの複合酸化物(SnTiOx)の膜を形成した。この膜が助触媒として機能することで、水素と共に過酸化酸素が効率よく選択的に生成されるという。

 ちなみにヘマタイトは、酸化鉄の1種(赤さび)で、安全、安価、安定。しかも可視光線を幅広く吸収できる優れた光触媒で、水素製造において、触媒として機能する。

 研究グループでは今後、今回開発した光触媒電極の効率をさらに高めていくと共に、セルを構成。小型モジュール化することで、社会実装に向けて、弾みをつけていきたいとしている。

 脱炭素社会の実現に向けて次世代エネルギーとして注目が集まる水素製造の採算性改善に期待したい。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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