対ロシア貿易額増大、中国の内需が要因か

2022年3月2日 10:59


*10:59JST 対ロシア貿易額増大、中国の内需が要因か
■中露首脳会談で15カ条の協力文書を締結
北京冬季五輪に出席したロシアのプーチン大統領は、2月4日の中露首脳会談で、天然ガスや金融インフラに関する協力を強化することを表明した。中ロ両国が署名した協力文書の中には、中国石油天然ガス公社(CNPC)と年間100億立方メートルのロシア産天然ガスを極東地域のガス管を通じて中国に供給するための長期契約も含まれている。2014年に締結した契約では、年間380億立方メートルのロシア産ガスを中国に30年間に供給するという内容であった。今回の契約では、供給量を増やし、年間480億立方メートル供給するという。そのほか、ロシア全域からの小麦輸入を拡大することも認められ、これも15カ条の一つである。今回の取り決めはロシアのウクライナ侵攻前に決定したことであるが、小麦輸入を増やし、ロシアへの経済支援をするのではないかという見方も多い。

■2021年の中国の穀物輸入による現状
中国では、主食となる米、小麦、トウモロコシの3大食糧自給率は98%に達成し、供給に問題はないと政府が表明している。中国の税関総署によると、2021年の穀物輸入が急拡大したという。2021年の穀物輸入は前年同期比18.1%増の16,453.9万トンとなり、穀物総生産量(68,285万トン)の24.1%を占めている。

(1)トウモロコシの輸入量が急増しており、同比152.2%増の2,835万トン、総生産量の(27,255万トン)10%を占めている。2021年中国の養殖業統計データによると、アフリカ豚熱の流行で低迷していた養豚業(同比+27.4%)が引き続き急速に回復に向かっている。トウモロコシの輸入拡大は国内の家禽・養豚業の飼料需要が背景にあるとみられる。

(2)小麦の輸入は、同比16.2%増の971.68万トンとなった。小麦の主な輸入先は、米国(28.06%)、カナダ(26.14%)、オーストラリア(28.14%)、フランス(14.57%)、ロシア(1.07%)で、上記の国で全体の総輸入量の97.9%を占めている(図表参照)。

(3)大豆は、同比3.8%減の9,651.8万トンとなった。2021年国内の大豆生産量はわずかの1,640万トンとなり、大豆の輸入依存は85.5%に上る。米中貿易摩擦やコロナ禍の影響を受け、主要な輸入先であった米国からの大豆輸入シェアが減少し、第三国(ブラジルなど)からの輸入シェアが拡大している。

■対ロシア貿易額、21年輸入額1,468.87億米ドル
2022年1月17日に発表された国家統計局データによると、2021年ロシアによる貿易総額は前年同期比35.8%増の1,468.87億米ドルとなった。ロシアによる輸出額と輸入額はそれぞれ678.65億米ドル(+33.8%)と793.33億米ドル(+37.5%)となり、過去最高を記録した。中露首脳会談で、プーチン大統領は、「我々は貿易額を年間2,000億米ドルまで増加させるという目標に向かって確実に進んでいる」との表明もあった。

2021年にトウモロコシや大豆などの先物が高騰した影響で、中国は主原料のトウモロコシを減らして小麦に変えたことにより、飼料用として小麦の需要が高まっている。国家糧食物資備蓄局によると、2021年の小麦の飼料用需要は4,000万トンに上り、前年同期比95.7%増の2,200万トン増となった。ロシア産の小麦原価は国内生産より安価で、飼料コストも低減できるという。中国の税関当局によれば、今後も国内の糧食安全の需要に応じてロシアからの小麦輸入を拡大する方針だという。《RS》

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