イラン産原油が原油高に歯止めをかけるか!?
2022年3月2日 16:45
●注目される核合意
ウィーンで開かれているイラン核合意の再建交渉が、原油価格にとって大きなカギを握るかも知れない。
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ロイター通信の報道によると、各国は米国の制裁解除とイランの開発制限の条件などを話し合っていると見られており、大詰めを迎えている。
特にこの1カ月はウクライナ危機により、WTI原油先物は1バレル=90ドル台で推移。2月24日のロシアによるウクライナへの侵攻で、一時100ドルを超えた。
原油価格の上昇に歯止めがかからず、世界的にインフレの要因になっていた。イランの核合意がまとまり、原油輸出が再開されれば、原油高を止める切り札になるのか?
●交渉は予断を許さず
イランの石油埋蔵量は世界第2位であり、世界の約10%を占める。
イランはトランプ前米政権時に、原油禁輸などの厳しい経済制裁を受けている。2021年8月に発足したライシ政権は反米保守強硬路線と言われており、たびたび米国の制裁を批判。交渉は一筋縄ではいかない。
欧米側が交渉の期限を設けていることや、国際原子力機関(IAEA)の査察報告にイラン側が不満を示していることから、交渉がうまくまとまるかは不透明な状況である。
●実現すれば原油安に?
そもそも地政学リスクの影響で、原油の価格が左右されており、実態の需給は反映されていないのではないかという見方もある。
洋上在庫もまだまだあると見られており、OPECプラスの生産動向もどうなるかは分からない。
仮にイランの核合意がうまくいったとしても、制裁解除は段階的に実施されるため、すぐに輸出再開とはならない。それでも合意がまとまれば、原油価格への影響は大きいだろう。
イランでは数年間生産がストップしており、再稼働には時間がかかると見られている。
一方でOPECプラスや米国なども増産しており、ウクライナ情勢が好転するなどすれば、急激な原油安になる可能性もありえる。
イランも原油価格の動向を注視していると見られており、交渉の駆け引き材料にもしてくるだろう。原油価格の行方は、様々な要因が絡み合っており、しばらくは一喜一憂が続くかも知れない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)