相場展望2月24日号 プーチン、現在「何も得られず」⇒「紛争拡大」 米FRBは、ウクライナでより困難な舵取りへ

2022年2月24日 09:22

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/21、祝日「ブレジデント・デー」のため休場

【前回は】相場展望2月21日号 株式市場はウクライナ侵攻を楽観視、危険 日本株式市場も、踊り場で正念場

 2)2/22、NYダウ▲482ドル安、33,596ドル(日経新聞より抜粋
  ・ウクライナ情勢緊迫化に伴うロシアと欧米の関係悪化を警戒したリスク回避の売りが優勢となり、8カ月ぶりの安値となった。
  ・ロシアは2/21、ウクライナ東部の一部地域を独立承認し、軍隊の派遣を決めた。
  ・バイデン大統領は2/22午後に、ウクライナ情勢について演説し、ロシアに対して「大規模な金融・経済政策に踏み切る」と表明した。制裁については、ロシアの金融機関や国債などが対象になるとの考えを示した。ただ、演説では詳細説明がなく、制裁対策に言及するに留まった。
  ・地政学リスクの一段の高まりによる相場下落を予想した短期筋が「売り持ちの株価指数先物に利益確定の買い戻しを入れた」ようで、NYダウは演説開始前の▲700ドル超の下落から、下げ幅を縮小した。
  ・ボーイング・ナイキ・ディズニーの下げが目立ち、アップルも売られた。2/22に決算発表したホームデポは利益率が悪化して▲9%下落した。反面、マクドナルド・アムジェンなどディフェンシブ株の一角は上昇した。

 3)2/23、NYダウ▲464ドル安、33,131ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは5日続落で、2021年3月以来となる11カ月ぶりの安値となった。
  ・ウクライナ情勢を巡る不透明感が続いており、投資家が株式の持ち高を減らす動きが続いた。
  ・景気敏感株からハイテク株まで、幅広い銘柄に売りが膨らんだ。
  ・ロシアが、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に派兵を決めたことを受け、ウクライナは非常事態宣言を発令する方針となった。
  ・ウクライナは2/23、政府系サイトにサイバー攻撃が発生したと伝わった。
  ・米国防総省の高官は2/23、ロシア軍の一部がウクライナ国境まで5キロメートルの位置に迫っていると明らかにした。ウクライナ周辺に配置したロシア軍の8割が攻撃開始に向けた位置に移動済みで、「最大限の臨戦態勢に入っている」と指摘した。
  ・欧米政府はロシアの行動次第で、追加制裁に動く構えを示している。
  ・市場では不透明感を嫌気し、運用リスクを回避する動きが続いた。
  ・マイクロソフト、アップル、セールスフォースに下げが目立ち、テスラ▲7%安、AMD▲5%安と下げた。
  ・SP500は▲1.8%安と、昨年6月以来の安値で終えた。

●2.米国株:FRBは、ウクライナ紛争で(1)さらなる物価急騰(2)景気減速で、より困難な舵取りへ

 1)長短金利差(10年:2年)が2/23、0.392%に縮小 ⇒ 債券市場は景気後退を示唆 ⇒ 株式市場は織り込んでおらず、市場の反応には今後注意を要す。

 2)VIX(恐怖)指数は2/23に31.02と、節目20を超えた状況が続き、警戒感が高まる。

 3)ウクライナ情勢緊迫後、株式市場は下げ局面入り。
   NYダウ 日経平均
   2/09 35,768ドル  2/10 27,696円
   2/23 33,131     2/22 26,449
     差異 ▲2,637     差異 ▲1,247
     下落率▲7.37%    下落率▲4.50%

 4)懸念される悪材料
  ・ウクライナ情勢の緊迫化 ⇒ 欧米とロシアとの対立激化 ⇒ 景気後退リスク
  ・原油・天然ガス・農産物の上昇強まる ⇒ インフレ圧力のさらなる押し上げ
  ・米利上げ、FRB資産縮小 ⇒ インフレ退治 ⇒ 株式相場に逆風

 5)米連邦準備制度理事会(FRB)の悩みが、ウクライナ情勢緊迫化で増大
  ・インフレ抑制に加えて、ウクライナ問題で原油高と景気後退の追加問題を抱え、苦悩が深まり、難しい舵取りが迫られる。

●3.米2月消費者信頼感指数110.5に低下、前月111.1(ブルームバーグ)

●4.米2月PMIは56.0に上昇、コロナ感染後退で経済活動は全般に上向く(ロイター)

 1)2月購買担当者景気指数(PMI)の前月51.1からの改善は、従業員の病休からの復帰、人の移動の増加、原材料の入手が容易になったことが要因。

 2)ただ、コスト上昇は依然と重い。

●5.ウクライナ関連:プーチンの軍事力を使った脅し外交と、露の米独仏を分断した戦術も露の強硬策が裏目となり、米英ユーロ圏の共同戦線に集結させ手こずる ⇒ プーチンは現時点で『何も得られず』 ⇒ 欧米の制裁の甘さもあり、プーチンは『紛争拡大』へ

 1)ロシアの通常戦力の75%がウクライナ国境周辺に展開=報道(時事通信)

 2)プーチン大統領は親露派の2地域の国家承認と、軍隊派遣を国防省に指示(フィスコ)

 3)米国、親ロシア派の国家承認に対抗措置へ(共同通信)
  ・親露派地域に米国人は新たな投資・貿易・融資を禁じる大統領令を出すと明確化。

 4)EU、ロシアが親露派2地域の独立を承認すれば、制裁をすると警告(共同通信)

 5)ロシア株式の指標であるMOEX指標は2/17終値~21終値の2営業日で▲13.5%下落
  ・2014年クリミア併合した2014年3月以来の下落率を記録した。

 6)ウクライナ大統領2/22、「ロシアとの断交を検討」、「国境は不変」対決姿勢(時事通信)

 7)独首相、天然ガス管「ノルドストリーム2」計画中止を表明、親露派承認を受け(AFP)

 8)英首相、露の5銀行と富裕層の3個人の資産凍結を表明(ブルームバーグ)

 9)プーチン大統領2/22、「ミンスク合意は、もはや存在しない」と表明(時事通信)

 10)グレーテス国連事務総長がロシア批判「平和維持の概念を曲解」(読売新聞)

 11)米国、バルト3国に部隊を派遣、NATO加盟国の防衛強化(時事通信)

 12)米大統領、「侵攻の始まり」と表明し、対ロシア制裁の第1弾発表(共同通信)
  ・親露派武装勢力が樹立したウクライナ東部の2地域のロシアの独立承認について、バイデン氏は「とんでもない国際法違反で、断固たる対応が必要だ」と強く非難。「ロシアが大規模な軍事攻撃を準備していると考えている」と述べ危機感を表明。

  ・米国は用意していた経済制裁の内、銀行や富裕層を対象とする制裁を発動した。

 13)ブリンケン米国務長官は2/22、露外相会談を中止、米露首脳協議も「侵攻がない」という前提条件を満たさず、とした。(朝日新聞)

 14)ウクライナ2/23、全土に非常事態宣言発令へ(フィスコ)

 15)ロシアの在ウクライナ大使館閉鎖へ、ロシア国旗降ろしたとロイター報道(時事通信)
  ・露外交官の退去が始まったとみられる。

 16)仏独外相、ロシア大統領を非難「約束守らない」「うそばかり」(AFP時事)

 17)欧州連合(EU)は2/24に臨時会議を開催「ウクライナ最新の展開と、ロシアに行動の責任を負わせる方法について議論」する。
  (1)欧州中央銀行(ECB)は、傘下の銀行にロシア関連リスクの報告を指示。
  (2)EUは、ロシア債の購入を禁止へ。
  (3)独首相、ロシアとの天然ガス管の活用を凍結、「弱腰」から転換(ブルームバーグ)
   ・独首相がモスクワを訪れた2/15、ロシア政府は展開する部隊の縮小を発表したが、実際には部隊増強が進んだ。
   ・対話を継続する約束も、ロシアは守らなかった。
   ・独外相は2/22、パリで「ロシアは全ての約束を破った」と批判した。
   ・独環境相、「ドイツは、ロシアのガスなしでもやっていける」。ドイツはガス供給の55%をロシアに依存している。
  (4)英国防相、プーチン氏は「正気を失っている」と述べた。(AFP時事)

 18)プーチンは2/23、「外交解決」に言及(ブルームバーグ)
  ・ロシアのプーチン大統領は、「ロシアの利益と安全保障が確保される限り、『外交的解決』の可能性を依然として否定しない」と主張した。

 19)米国は、ロシアが侵攻や軍事行動を起こす口実が得られるような事件を煽る恐れがあると警告している。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/21、上海総合▲0安、3,490(亜州リサーチより抜粋
  ・売り圧力が意識される流れとなった。
  ・上海総合指数はこのところ急ピッチで上昇し、足元で約4週間ぶりの高値水準を回復していた。短期金利が上昇し逆風の中、銀行貸出の最優遇金利が据え置かれた。もっとも、下値を叩くような売りはみられなかった。
  ・経済政策に対する期待感が持続している。
  ・業種別では、銀行・保険が冴えない。短期金利が長期金利よりも上昇したことによる利ザヤ縮小と、景気の悪化がを警戒。反面、不動産が冴えなかった。
  ・重慶市など一部都市で、1軒目購入の頭金率が引き下げられ、好感された。

 2)2/22、上海総合▲33安、3,457(亜州リサーチより抜粋
  ・世界経済の混乱が警戒される流れとなった。
  ・ウクライナを巡りロシアと欧米の対立が激化する中、原油先物価格が急伸した。急速な資源価格の上昇は、企業収益の足枷が危惧された。
  ・また、中国当局が再び産業統制に動いていることを不安視している。
  ・ただ、下値を叩くような売りはみられない。
  ・中国経済対策への期待感が相場を下支えしている。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、医薬品・金融・インフラ関連が冴えない。反面、半導体関連が高く、太陽光関連・石炭・石油の一角が物色された。

 3)2/23、上海総合+32高、3,489(亜州リサーチ)
  ・中国経済対策への期待感が相場を支える流れだった。
  ・景気鈍化懸念がくすぶる中、当局は景気対策を強めるとの見方を改めて意識。
  ・また、前日まで下げが急ピッチだっただけに、値ごろ感に着目し買われた。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立った。反面、石炭・石油は安く、銀行・保険・不動産・空運も売られた。

●2.香港株式市場(ハンセン指数)で、中国テクノロジー株が大幅続落(ブルームバーグ)

 1)2/21までの2日間で、約▲6%下落した。

 2)中国当局がテクノロジーセクターの規制を強める懸念が再燃した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/21、日経平均▲211円安、26,910円(日経新聞より抜粋
  ・ウクライナ情勢が緊迫し地政学リスクを巡る警戒から、運用リスクを回避したい投資家の売りが優勢となり、一時▲570円を超える下落となった。
  ・午前に、ホワイトハウスから「米露首脳会談」が報じられた後、指数先物が買い戻されると、日経平均も下げ幅を縮小した。
  ・投資家のリスク回避姿勢は今後も続きそうだ、との声が市場参加者にあった。
  ・東エレク・信越化など半導体関連株が売られ、ダイキン・リクルートが売られた。一方、NTTデータ・トレンドが買われた。

 2)2/22、日経平均▲461円安、26,449円(日経新聞)
  ・ウクライナ情勢の緊迫が、ロシアと欧米の関係悪化を警戒してリスク回避の売りが優勢となり、主力値嵩株などに売りが広がり、1/17(26,170円)以来の安値。
  ・ロシア情勢を巡る懸念に揺れ、欧米のロシア制裁が世界景気に悪影響を及ぼすとの見方から投資家心理が悪化した。
  ・香港ハンセン指数などアジア株安に連動した売りを織り込み、日経平均は一時▲600円を超えて下落する場面があった。
  ・東京市場は2/23の祝日休場とあって、米市場の反応を見極めたいたいと下げ渋る場面もあったが、値ごろ感を意識して買い直す動きは続かなかった。
  ・第一三共を始め医薬品株や、直近の下げが目立ったリクルートなどが買われたが上昇銘柄の一部に限られた。東エレク・ファストリ・キッコーマンが下落、一方、トレンド・エムスリーが上昇。

 3)2/23、祝日「天皇誕生日」のため休場

●2.日本株:日経平均の先行き底値の見通しは、20,000円割れ~23,690円

 1)1株当たり収益率(PER)からみた日経平均の予想
  ・リーマンショック2008年のPERは9倍台
    EPS 2,060円×9倍= 日経平均 18,540円
    EPS 2,060円×10倍= 日経平均 20,600円
  ・今回の上昇相場の起点まで戻る=PER 11.5倍
    EPS 2,060円×11.5倍=日経平均23,690円

 2)世界的に物価が上昇する中で、ウクライナ緊迫化がさらなる原油・天然ガス価格に大きな影響を与えることが懸念される。そのため、実際に侵略戦争が起こった場合は、一時的な株価下落があり、想定以上に大きいかもしれないことに留意したい。その理由で株価下落した時は、自律反発が期待できるので『買い場』となりやすい。

 3)ウクライナ問題は、日経平均はNYダウに比べ織り込みが遅れているともいえるので注意したい。なお、日経平均が堅調にみえるのは、先物手口において外資系が買い越し基調継続中にあり買い支えされているためともいえよう。外資系先物の動向に留意したい。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3141 ウエルシア   業績堅調
 ・4552 JCRファーマ  業績好調
 ・4151 協和キリン   業績堅調

関連記事

最新記事