ソフトバンクGに続発するネガティブ・ファクト、方針転換の成否も孫社長の腹次第?
2022年2月12日 16:17
英半導体設計アームの買収を持ちかけたのも、買収断念を決断したのもエヌビディアだったのに対して、ぬか喜びで踊らされた格好なのがソフトバンクグループ(SBG)だ。12億5000万ドル(約1437億円)という膨大な違約金を貰っても割に合わぬ思いだろう。
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意外なのはSBGのように世界中の成長企業に触手を伸ばす投資会社が、独禁法への懸念をあまり意識していなかったのではないかと思われることだ。企業スケールに比して法務部門が脆弱なのか、推進部門の発言力が余りにも強すぎるために、立ち止まって問題点を洗い出すことすらできていない印象だ。
業績絶好調でアームの買収が頓挫しても、何ら不安を感じさせないエヌビディアに対して、SBGは対極にある。
21年11月8日に開催された21年7~9月期の決算説明会で、連結決算(国際会計基準)の最終損益が3979億円の赤字であることを発表した孫正義会長兼社長は、「真冬の嵐のど真ん中にある」という認識を示した。
翌々月の22年1月には有力な後継者候補と目されていた、マルセロ・クラウレ副社長執行役員最高執行責任者(COO)の退任が発表された。退任理由は公表されていないが、クラウレ氏の報酬を巡る対立があったとの見方が有力だ。
有力者が退任した直後の2月には、エヌビディアに対するアームの売却が頓挫したと伝えられた。「泣きっ面にハチ」ということわざに倣えば、「冬の嵐のど真ん中で大地震」のようなものだ。
8日に開催された決算記者会見で、孫社長は2021年10~12月期の連結決算(国際会計基準)について、純利益が前年同期比98%減290億円だったと発表しながら、アームが年内にも新製品の投入を開始して第2の成長期に差し掛かり、爆発的な利益を生み出す企業になると加えた。まるでエヌビディアへの売却断念を忘れたかのような切り替えの早さで、「22年度中に半導体業界史上、最大の上場を目指す」と決意を表明した。
ハイテク株に対する投資家の投資意欲が減退する前に売却したいという前のめりな気持ちと、精一杯の表現でアームの素晴らしさを伝えて、より多くの資金を回収したいという思惑が明白に示された、分かり易い会見だった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)