技術開発能力が不安視される、日本の復権のシナリオとは?

2022年2月6日 19:48

 かつて「技術大国」と言われていた日本だが、現在の国際的な地位は著しく後退してしまっている。

 

 2021年、アメリカで認められた特許件数を企業別に表したTOP20において、日本企業はわずか3社だった。2011年には10社もの日本企業がランクインしていたことを鑑みると、勢いの衰えを感じざるを得ない。特許の出願数では中国に抜かれており、国としての勢いを反映しているとも見て取れる。

 資源に乏しい日本が国際的な競争力を保つためには、技術開発能力が必要不可欠と言えるだろう。そのためには今まで日本企業が積み重ねてきた技術や特許をベースに、新たな技術開発を進めていく必要がある。そこで重要になるのが人材の育成だ。現役の技術者たちが研究しやすい環境を整備すると共に、未来を担う技術者たちを育てていくことも必要不可欠だ。

 そんな中、日本企業の中にも、地道な種まき活動に尽力している企業も増えている。

 国内大手の電子部品メーカー・ローム株式会社では、半導体に関する技術の更なる活性化と発展を目的として、大学や高等専門学校、公的研究機関に所属する研究者を対象にした2022年度研究公募を2月22日まで行っている。この研究公募制度は2016年に創設され、学生を含めた若手研究者による有望な研究が援助を受けられることで知られている。また、同社では2021年から、スタートアップ企業を対象にしたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動を開始。総額50億円の投資枠を新設するなど、10年先の成長の種となるべき、新規事業の創出を積極的に目指している。

 大手総合化学メーカー・旭化成株式会社のグループ企業である旭化成ファーマ株式会社でも、創薬に関する共同研究を目的とした公募によるオープンイノベーション活動を2018年より開始。創薬研究のプロフェッショナルである同社の研究員と共に創薬研究を促進し、実用化を図ることが狙いで、募集テーマも、難病・難治性の「自己免疫疾患領域」や急性期疾患の「救急領域」など多岐にわたる。

 九州電力(株)では、ICT(情報通信技術)を活用した独創的で斬新なアイデアと九電グループの保有する経営資源を組み合わせることで、新たなビジネスの創出を目的とした「九州電力オープンイノベーションプログラム2022」を募集。アイデアの革新性や協業の可能性が選考基準となっており、こういった公募には珍しく、企業や団体だけでなく、個人での応募も可能となっている。人材の育成や発掘はもちろん、地方の活性化に繋がる取り組みとしても期待されている。

 少子高齢化によって働き手不足が不安視されている我が国にとって、生産性を維持・向上させる為には、研究開発の促進が急務だ。研究やイノベーションに取り組みやすい法制の整備や、知的財産権の保護など、国が担う責務も大きい。それと同時に、企業が技術開発への出資や人材の確保・育成を推し進める必要がある。この両輪がスムーズに回り出せば、現状を打破して、「技術大国」復権も見えてくるのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)

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