間もなく解禁される「無線給電」、どんな利用が可能なのか? (上)
2022年2月6日 08:06
10m以上離れたスマホや様々なIoTデバイスへの給電が、日本でも2022年度内に可能となる。
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電波を使って離れた場所にあるデバイスに給電する無線給電は、既に米中のスタートアップ企業では実用化が進められている。
日本では国土の狭隘さがネックとなり、電波の利用は技術基準適合証明等の厳格な管理下にあったが、規制当局である総務省は無線給電に対する方針を転換する。
まず、2022年中には「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」を屋内限定として、920メガ(メガは100万)ヘルツ付近の電波による無線給電を免許届け出制で始める計画だ。2年後には屋外へも利用を拡大し、2030年頃を目途に大電力の給電も視野に入れるなど、段階的な規制緩和を実施する方針を決めた。
規制当局が今回解禁する無線給電の周波数帯は、920メガヘルツ帯と2.4ギガヘルツ帯、そして5.7ギガヘルツ帯の3つだ。うち、2.4ギガヘルツ帯と5.7ギガヘルツ帯は人体への影響を考慮して無人環境での利用に制限される。有人環境であることが前提となるIoTデバイスの利用は自動的に920メガヘルツ帯になる。
無線給電メリットの1つ目は、電気配線が不要になることだ。5Gの通信環境によって、あらゆるものがIoTデバイスにつながると喧伝されているが、現状では膨大な数のIoTデバイスに電力を供給するための配線かバッテリーが必要になる。
その悩みを一気に、かつ広範に解決するのが無線給電だ。920メガヘルツ帯に認められる送電(出力)電力は1ワット以下と少ないが、IoTデバイスには消費電力が少ないという利点がある。送電効率が絡むので1ワットを送電しても、1ミリワット程度の給電になるが、IoTセンサーを駆動させる上で問題はないという。
無線給電システムとして日本でお馴染みなのは、米アップル製のスマホ「iPhone(アイフォーン)」に導入された「置くだけ給電」だ。米無線給電のスタートアップ、パワーキャストが開発した「Qi(チー)」と呼ばれる機能は、置くだけで充電できるという斬新さが業界の話題をさらった。
いずれ「置く」という動作すらも必要がなくなる。自分の部屋に戻るだけで充電がスタートして、翌朝には何を意識することもなく満タンのスマホを手にして、外出することが可能になるだろう。 (下)に続く(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)