新型コロナオミクロン株は弱毒化 増殖はしやすい 東大医科研らの研究

2022年2月5日 09:43

 2021年末に国内では1度落ち着きかけたかと思われた新型コロナウイルス感染症だったが、変異種であるオミクロン株の出現により、再度感染者数が増加している。東京大学医科学研究所らの研究グループは、オミクロン株は病原性が弱まった一方で、感染力が高く進化したウイルスであることが判明したと発表した。敵の姿を正確に知ることは、今後の新型コロナウイルスとの戦いを正しく進めていくために重要である。

【こちらも】変異株含む新型コロナウイルスを不活化する光触媒開発 東大ら

 この研究は、東京大学医科学研究所の佐藤准教授が主催する研究チームである「The Genotype to Phenotype Japan」によって行われ、その成果は1日のNatureオンライン版で公開された。

 2021年末に南アフリカから広がり始めた新型コロナウイルスの変異種であるオミクロン株は、あっという間に世界中に広がり、現在は多くの国で感染の主流になってきている。変異のたびに性質を変化させているウイルスを相手に正しい戦略を練るためには、敵の姿を知ることが大切だ。研究グループは、従来型、第5波の原因となったデルタ株、そしてオミクロン株の特徴を比較した。

 研究グループはまず、培養細胞に新型コロナウイルスを感染させて、48時間後の細胞の様子を観察。すると、オミクロン株では従来型やデルタ株と比べて合胞体を作っていないことがわかった。

 合胞体とは、ウイルスに感染した細胞が、周りの細胞と融合してしまい巨大な細胞の状態になっている状態のことをいう。感染された細胞の表面にウイルスの持つスパイクタンパク質が作られ、周りの細胞と結合していくために生じる。合胞体は新型コロナウイルス感染症患者の肺に見られ、炎症や症状の悪化と関連している。

 次に3種類のウイルス株をハムスターの鼻に感染させて、体重、呼吸状態の変化を15日間にわたって観察。すると、従来株、デルタ株ともに体重減少と呼吸状態の悪化が見られたが、オミクロン株では顕著に少なかった。培養細胞とハムスターの実験から、オミクロン株は従来型、デルタ型と比較して、病原性が少ない、つまり症状が軽い可能性が明らかになった。

 一方、人の集団でのオミクロン株の増殖スピードを数理的解析により検討。すると、オミクロン株はデルタ株と比較して2~5倍増殖スピードが早いことが明らかになった。

 これらの結果により、オミクロン株はデルタ株と比較して、増殖能力が上がった一方で病気の重篤さは弱まっていることがわかった。

 しかし依然としてオミクロン株での重症化のリスクはゼロではない。感染者が増えることで再度医療が逼迫する可能性は続いている。今後再び新たな変異株が現れる可能性への備えも必要だ。引き続き感染症対策が重要であることは確かだろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

関連記事

最新記事