火星の海はなぜ消えてしまったのか 東大の研究
2022年2月5日 10:59
かつて火星にも地球と同じように海があったが、それは何らかの理由で消滅してしまった。この謎に迫るかもしれない実験的な分析に、東京大学の研究グループが成功した。
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研究は、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の横尾舜平博士課程学生と廣瀬敬教授らを中心とする研究グループにより行われ、3日に「Nature Communications」で公開された。
そもそも地球にはなぜ海があるのかという話になるのだが、単純に「水があり、重力があるから」というだけで説明できるものではない。地球自体の持つ磁場が水素を地球に引き留めているから、というのが重要なファクターであると考えられている。
そのような磁場は40億年ほど前までは火星にもあったらしい。だが、何らかの理由で消失し、結果として火星からは水素が失われ、最終的には海が蒸発してしまった、と目される。
今回の研究は、地球や火星のコアのような超高圧環境を、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル(LH-DAC)と呼ばれる技術によって作り出し、そこにおける液体の挙動を調べた、というものである。
LH-DACを用いて、鉄-硫黄-水素合金を高圧下で融解する実験を行ったところ、液体鉄-硫黄-水素合金は、冷えるにしたがって硫黄の多い液体と水素の多い液体に分離していくという事実が判明した。さらに条件を変えて調べたところ、火星のコアにおける圧力ならびに温度と、この分離が発生する条件は重なっていることも分かったという。
またこのことから、重要な可能性が示唆される。つまり、最初は超高温によって均質な状態であったコアは、冷えて分離を生じることによって対流を起こし、これにより磁場が発生する。しかし、冷却がさらに進むと対流は収まるので、磁場は消失する、と考えられるのである。
以上は理論的な推測であるので、現段階では詳しいことは分かっていない。実際の火星コアに関する研究が、いま火星にいる火星探査機インサイトによる調査の結果などによってより詳しく判明すれば、この仮説を検証することが可能であるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)