新種の寄生甲殻類、「オシリカジリムシ」と命名 鹿児島大の研究

2022年2月3日 11:54

 鹿児島県出水市の干潟で、新科新属新種の珍しい甲殻類が発見された。鹿児島大学大学院理工学研究科の上野大輔准教授らが発表を行い、標準和名「オシリカジリムシ」と命名された。

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 オシリカジリムシが発見されたのは、2021年5月である。鹿児島大学農林水産学研究科・修士課程の学生是枝伶旺さんが、出水市にある小次郎川河口干潟の砂泥の中から、1匹のチワラスボを採集した。チワラスボというのは泥の中で暮らす、ハゼの仲間の珍しい魚で、絶滅危惧種に指定されている。そのチワラスボの臀鰭から、体長約1.3mmの甲殻類の雌個体が発見された。

 小型甲殻類の分類を専門とする上野准教授が詳しく調べたところ、当該の生物は新種であり、また、形態上の特徴から既存の属、科に該当するものが存在しないため、新科新属新種として報告された。新属もだが、特に新科が設定されるのは非常に稀なことである。学名はChoreftria shiranui(コレフトリア・シラヌイ)。コレフトリアというのはギリシャ語で「踊り子」を意味する。シラヌイは出水市に面する八代海の別名、不知火海に由来するものである。

 発見されたばかりの新科新属新種のことであるから、生態などはまだほとんど謎に包まれている。だが発見されたときにチワラスボの臀鰭に取り付いていたことから、上野准教授の好きな歌のキャラクターにちなみ、標準和名は「オシリカジリムシ」とされた。さらに、その属と科もそれぞれ「オシリカジリムシ科」「オシリカジリムシ属」である。

 なお、オシリカジリムシ(おしりかじり虫)は、NHKエンタープライズが所持する商標に該当するが、事前相談の上、許諾済みであるとのこと。

 鹿児島沿岸には多くの干潟があり、今後も新種の発見が期待されている。従って、本種の保全も視野に入れ、今後の研究を進めていくことが必要ではないかという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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