アクリル板が感染リスク上げる? 会話しづらく大声誘発 卓上空気清浄機が有効
2022年1月16日 16:52
新型コロナウイルス感染症の感染経路は当初、その感染率の低さから接触感染が主な経路とされ徹底した手洗いや手指消毒が奨励された。しかし、様々な証拠から米国CDCやWHOはエアロゾル感染が主流の感染経路であると発表し、さらに感染力の強いオミクロン株では空気感染であると公式発表している。当初より店舗や事業所等でエアロゾル感染回避のためにアクリル板などを用い飛沫感染防止に努めてきたが、粒子が短時間で落下しない空気感染である場合、アクリル板などの利用はむしろ空気感染リスクを高めるという実験結果も出ている。アクリル板などで空間を仕切った場合、音声が聞き取りにくくなり無意識的に声が大きくなり空中に浮遊するウイルス量を増加させてしまうからだ。
こうした研究を行ったのは医療系のコンサルタント会社のマトリクス株式会社だ。マトリクスは八戸工業高等専門学校、青森県産業技術センター八戸工業研究所との共同研究でアクリル板使用がエアロゾル対策に効果が薄い事を科学的に明らかにした。
研究結果は以下のとおりだ。アクリル板を利用した場合、(1)感染源となる呼気のエアロゾルを防ぎきれないこと。(2)男性の場合で約5倍、女性の場合で約3倍離れて会話しているのに相当する聞きづらい状態になる。(3)床置き空気清浄機は使い方に気をつけないと空気を浄化しきれない。(4)実験した機材のうち、卓上空気清浄機のみがテーブル環境で対面へのエアロゾルを防げた。
アクリル板を用いた場合、男性の声に相当する周波数500Hzの音を約14dB小さくし、女性の1kHz近傍の音を約9dB低下させる。これはアクリル板がないときと比べ男性で約5倍、女性で約3倍離れて会話しているのと同様の聞きづらい状態だ。このためアクリル板の使用は呼気のエアロゾルを防げない上に会話を聞きづらくさせることで無意識的に大声での会話を誘発する、というのが実験での結果だ。
また、空気清浄機の使い方についても洋室のようなテーブルと椅子の生活空間の場合には効果が低く、卓上型の空気清浄機の方がより効果を発揮することを明らかにした。口や鼻に近い位置で空気を吸い込むように空気清浄機を使用することが重要なようだ。オミクロン株は明らかにこれまでの株より感染力が強い。空気感染の疑いがある以上、これまでの感染対策も根本から見直さなければならないようだ。(編集担当:久保田雄城)