ソニーが自前のEV発売へ、本格化するEVへの異業種参入! (下)
2022年1月6日 11:18
VISION-S 01のデータでVISION-S 02をイメージすると、肝(キモ)はソニーの誇るイメージ・センシング(車両周囲の状況を認識するテクノロジー)技術の中でも、走行中の全方位(360度)を常に監視して危険回避行動を執る「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」と称されるイメージ・センシングシステムだ。
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VISION-S 01には、IMX390×7個、IMX456×5個、Inner電子ミラーカメラ×1個、超音波センサー(Ultrasonicc)×12個、レーダー×5個、LiDAR×3個という合計33個のセンサーが車体を取り囲むように配置されていた。VISION-S 02のセンサーは、40個という情報があるので、VISION-S 01の公道走行で得られた知見がプラスされた、完全武装のSUVと言えるかも知れない。
VISION-S 01の発表時には、「ソニーのクルマ」を販売する訳ではないと”公式”にコメントしていたソニーが方針を変えた理由を、記者会見で吉田社長がいみじくも「試作車への反響が大きかった」と表現していたことが印象深い。
ソニーがEVの高い安全性と快適性をどうやって実現するかという答えであり、センサーのセールスマンとして生まれたVISION-S 01は、高度な技術と部品を自動車メーカーやサプライヤーに売り込むツールとしてではなく、第1級の完成された製品として社会が求めている判断したのだ。
今回、新会社を設立して「EV参入を本格検討」すると発表したソニーが、「検討の結果断念」することは余程のことがない限りあり得ない。
ソニーがファブレスメーカーとして事業を開始すれば、自前の工場すら持つ必要がない。既存の自動車メーカーにとっては悪夢のような話だが、ソニーというコンダクターが振るタクトを見詰めて、EVを製造する自動車メーカーが出現する可能性がある。アップルがiPhoneで完成させたビジネスモデルが、大いに参考になるだろう。
内燃機エンジン自動車に比べて、EVが比較的参入が容易な事業分野であることは以前から指摘されていた。要するに、熾烈な競争が懸念される事業分野とも言える。ひたすら価格競争力を追求して「安かろう、悪かろう」のEVを売りまくるメーカーと、「とにかく安いクルマ」を求めるユーザーは必ず存在する。反対に、シンパシーを感じているメーカーの製品を、放っておけないユーザーも間違いなく存在する。
20年11月に発売されて1年以上が経過しているのに、未だに品薄状態が続くプレステ5を思うにつけ、ソニーのEVに前のめりになるソニーマニアは少なくない筈だ。プレステ5の100倍はする高額商品だから、マーケットがプレステ5同様に熱狂するかどうかは分からないが、完成された製品を過不足なく供給する責任も受け止めながら、EV進出への最終決断につなげることを期待する。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)