相場展望1月6日号 新年お祝儀買い大幅高も、FOMC議事で冷や水 FOMC議事: 早期利上げ&FRB資産縮小が必要
2022年1月6日 08:34
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/3、NYダウ+246ドル高、36,585ドル(日経新聞より抜粋)
・(1)米景気の回復基調が続くとの期待と、(2)年初で年金基金などの新規資金の流入を期待し、景気敏感株が上昇し、ハイテク株の一角も買われた。
・新型コロナ感染拡大が続くが、米市場では「ワクチン普及で行動制限が長期化の公算は小さく、投資家のリスク選好姿勢が年明けも続いた」との指摘があった。
・アップルが一時+3%上昇し、米企業として初めて時価総額3兆ドルを突破した。米長期金利が上昇し、利ザヤ拡大の思惑から金融のGサックスなどが買われた。景気敏感で航空機のボーイング、原油先物高で石油のシェブロンも上げた。
【前回は】相場展望1月3日号 岸田首相で『日経平均は上がるか?』 主要中央銀行緩和縮小、世界株式上昇は踊り場
2)1/4、NYダウ+214ドル高、36,799ドル(日経新聞より抜粋)
・新型コロナ感染拡大しても米経済の回復は続くとの期待から、建機のキャタピラー・航空機・旅行など景気敏感株を中心に買われ、連日で過去最高値を更新した。
・長期金利が一時1.68%と昨年11月下旬以来の水準に上昇し、利ザヤ拡大につながるとの観測からJPモルガン・Gサックスなど金融株が買われた。
・長期金利の上昇を受け、割高感が意識された高PERのハイテク株が売られ、業種別の明暗が鮮明だった。アップル・マイクロソフト・テスラ・エヌビディアが下げた。
3)1/5、NYダウ▲392ドル安、36,407ドル(日経新聞より抜粋)
・上昇して始まったが、午後の公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を積極的なタカ派寄り、と受け止めて下げに転じた。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を前倒しで進めるとの見方が強まり、米長期金利が上昇したため、ハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄の主力株が軒並み売りが広がった。
・長短金利差の縮小が利ザヤ悪化につながると金融株が売られ、消費財も売られた。
・アドビは▲7%安、エヌビディア▲6%安、テスラ▲5%安で終えた。
●2.米国株は、FOMC議事要旨の1/5発表『(1)早期利上げ (2)資産縮小』を受けて、急反落
1)米連邦制度理事会(FRB)は1/5公表した、12/14~15開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨
・労働市場は「非常にタイト」で、インフレ高進の抑制のため、
・(1)予想より早い利上げ & (2)FRB保有資産の縮小と早期化が必要
になる可能性があるとの見解を示した。
2)『利上げ時期』については、市場予想は当初6月頃との見方から、4月に前倒し観測があった。今回の発表で、さらに早期化され「3月」あるいは「3月以前」に実施する可能性が浮上した。
3)『FRB資産縮小』の市場の事前の見方は、「4回利上げ後、2年先」との意見が多かった。今回の議事要旨では、『余剰資金の市場からの回収を、さらに早期化』する、しかも【最初の利上げ後に始めることが適切】ということであり、これは『市場にとって大きなサプライズ』となる内容であろう。
4)市場ではこのサプライズを受け、
(1)債券市場では金利が急騰し、10年物国債利回りは1.698%・+8.32%上昇、2年物国債利回りは0.828%・+1.93%上昇
(2)株式市場は急落、NYダウ ▲392ドル安 ・▲1.07%低下
ナスダック総合▲522安 ・▲3.34%低下
SP500 ▲ 92安 ・▲1.94%低下
半導体株指数 ▲129安 ・▲3.22%低下
5)今後の株式市場から目が離せなくなった。
●3.2022年株価予想(ブルームバーグ)
1)ウェルズファーゴ 夏までにSP500は▲10%調整、年終盤は盛り返す。
2)Gサックス リターン低下を予想。
3)ブラックロック リターン低下を予想。
4)JPモルガンチェース 米国株は停滞する可能性。
●4.米12月ADP雇用統計は+80.7万人増、予想40万人の2倍で5月来で最大(フィスコ)
●5.米10年債利回りは1/3に1.6%台に急伸、年初では2009年以来の上昇幅で最悪のスタート(ブルームバーグより抜粋)
1)米国債オプション市場では、
・10年債利回りが2月半ばまでに1.95%に達すると見込む取引も見られた。
・米国株が最高値圏から上昇し、年内少なくとも3回の利上げ見通しを強めた。
・金利先物市場が織り込む「利上げ開始時期は、5月」となっている。
・アメリベット・セキュリティーズは、「今週のデータで力強さが増したなら、3月の利上げ開始もあり得る」と述べた。
●6.米11月離職件数は前月比37万件増の452万件と過去最高、求人件数は減少も1,056万人と高水準(ロイター)
1)採用件数は669.7万人で、ほぼ変わらず。
●7.バイデン大統領は、インフレとの闘いで、食肉加工巨人企業に宣戦布告(ブルームバーグより抜粋)
1)バイデン氏の経済対策を巡る議会交渉が何カ月も続く中、米家計にとって最大の懸念である物価上昇問題から、バイデン大統領が「あまりにも遠ざかってしまった」と、多くの民主党議員が不安を表明していた。
●8.ブラックストーン、米国株一時▲20%調整⇒戻り、10年債利回2.75%(ブルームバーグ)
1)ブラックストーンのウイーン氏の「2022年びっくり10大予想」シナリオ。
(1)一時▲20%近く下落⇒年末は前年末比では変わらず。
(2)タカ派に転じた米金融当局の政策で、米10年国債利回りは2.75%に達する。
(3)上記(2)を米国株が乗り越えるには、「力強い企業収益」だけでは不十分だ。
●9.ガードマン氏、積極的な利上げで米株価は2022年に▲10~▲15%下落(ブルームバーグより抜粋)
1)米金融当局がインフレの高進の下でタカ派姿勢を強め、年内に4回の利上げに踏み切る可能性があるとの予想を理由に、米株価は2022年に「緩慢かつ時間をかけた下落に見舞われる可能性がある」、とした。
2)フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、年末までに現行高水準から少なくとも1.00%(0.25%を4回)引き上げられると、語った。一連の利上げのうち、1回の利上げ幅は0.50%となる可能性もある。
3)ガードマン氏は、かつて影響力のあるニュースレターを発行し、現在はアクロン大学寄付基金の会長を務める。ガードマン氏は『米金融当局の金融引き締め開始に伴い、疑いなく、年内に弱気相場が到来する』とコメントした。アクロン大学寄付基金も株式を▲10%減らした、と明らかにした。さらに、「株式市場への関与を減らし、合理的な姿勢で静観するのが、向こう1年~2年は適切な取引方法と考える」と強調した。
●10.OPEC+は1/4、現行の小幅増産ペースを2月も維持すると決定(共同通信)
●11.米国で1/3、1日の新規感染者数は108万人、フランスで20万人超と最多記録(テレ朝)
1)まだ、重症者や死亡者数が増える結果につながっていないが、航空会社や飲食店では職員が不足し、正常な運営が不可能な状態にあり、学校は登校を延期、医療システムを圧迫している。(ブルームバーグ)
新型コロナ入院患者数は、昨年9/11以降の約4カ月ぶりに10万人を超えた。(CNN)
2)サプライチェーンの悪化も続いている。
●12.欧州ガス価格が30%超の高騰、ロシアからの供給が細り逼迫(ロイターより抜粋)
1)ロシアのプーチン大統領は12月、ドイツからロシアのガスをポーランドやウクライナに転売したため、ガスの流れが逆転して価格が高騰した責任はドイツのガス輸入業者にあると発言した。
●13.世界最大の一般炭輸出国インドネシアが、石炭の輸出禁止を1/1に発表した(ロイターより抜粋)
1)インドネシア政府が石炭輸出禁止を発表した理由は、国内の発電所の石炭備蓄が少なすぎて、約20の発電所が稼働停止に追い込まれるため、と述べた。インドネシア政府は1/5に再評価するという。
2)2021年インドネシア産の石炭輸出先は、中国・インド・日本・韓国で73%占めている。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/4、上海総合▲7安、3,632(亜州リサーチより抜粋)
・新年初商いは新型コロナ感染の影響が不安視される流れとなった。中国では一部地区がロックダウン(都市封鎖)が実施され、工場閉鎖を余儀なくされる事態も散見される状況だ。
・コロナ感染は、自動車産業が多く集まる西安市に続いて、電子・繊維・アパレルなどの産業が集積する浙江省寧波市などにも広がっている。
・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、消費関連は下げ、不動産・金融が高い。
2)1/5、上海総合▲37安、3,595(亜州リサーチより抜粋)
・中国の経済活動縮小が不安視される流れとなった。北京冬季五輪の開催を控え、「ゼロコロナ」政策を続ける中国では、感染が集中する一部地区でロックダウンを実施している。
・また、米国で長期金利が上昇基調を強める中、新興国から投資資金が流出するとの懸念がくすぶっている。
・業種別では、ハイテク関連が下げ、自動車も冴えない、反面、金融はしっかり。
●2.中国12月財新製造業PMIは50.9、市場予想50.0を上回る(フィスコ)
●3.中国・恒大集団に違法建築の39棟を解体命令、人工島リゾート海南島「海花島」で(CNN)
●4.中国・雲南省でM5.5の地震、23人けが、8,000軒以上の建物に被害か(日テレ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/4、日経平均+510円高、29,301円(日経新聞より抜粋)
・大発会の終値は2021年11/25以来の高値水準となった。前日の米株式市場の上昇と、新年入りした機関投資家の買いが優勢だった。
・市場では「相場全体の上げ下げに左右されにくい、業績期待の高い銘柄への選別色が強まりつつある」という声があった。
・東エレク・アドテストなど半導体関連の上昇が目立ち、信越化・ソニー・ファナックが高く、ファストリ・キッコーマン・TOTOが下落した。
2)1/5、日経平均+30円高、29,332円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場で景気敏感株が買われた流れで、流動性の高い大型株が上げた。
・一方、半導体関連株や成長株の下落で、日経平均は前日終値近辺で一進一退。
・トヨタなど個別銘柄への選別色が強く、相場全体で見ると方向感がなかった。
・116円台前半の円安ドル高も好感され、保険・銀行株も高かった。
・反面、米長期金利の上昇を背景に、割高感が意識される半導体関連株が軟調。
・米金融政策や長期金利の動向を見極めたいとの雰囲気が強く、膠着感が強まった。
2.日本株は大発会で予想外の大幅高、今後は要注意
1)日経平均1/4の+510円の急騰は、Cスイスと野村による先物主導による買いに、アルゴの買いが加わり、予想外に大幅上昇となった。現物市場では、東エレク・信越化・ソニーなどの値がさ株が牽引した。だだ、上昇幅に比べて東証1部の売買出来高は11億株にとどまっており、本格的上昇につながるか? 注目したい。また、空売り比率も40.9と通常よりも低くかったことも、真空地帯を上昇できた背景がある。
2)なお、先物市場の売買で30~40%のシェアをもつアムロは売り筆頭の▲4,517枚売り越しており、アムロの動向にも注視したい。
●3.日銀の低金利政策で、国債保有残高▲14兆円減の521兆円、13年ぶり減少(読売新聞より抜粋)
1)前年末に比べ▲14兆円減、減少は2008年以来となる。
2)日銀は2013年に大規模金融緩和策を導入したが、2016年に市場の金利を低く抑える政策に転換し、必要以上に国債を買う必要がなくなり、保有残高が減少しやすくなっていた。
●4.国内コロナ「第6波」の懸念強まる、米軍内のクラスター波及も(共同通信)
1)全国で1/4発表された新型コロナの新規感染者数が計1,268人となった。1,000人を超えるのは昨年10/6以来。
2)米軍内のクラスター(感染者集団)が地域に波及しているとの見方もある。
3)米軍岩国基地、外泊禁止など新たな行動制限、12月以降コロナ感染243人(中国新聞)
4)岸田首相は1/4、オミクロン株感染者全員の入院方針見直し表明(中日スポーツ)
●5.名古屋のデパート4社、去年の売上高が前年を上回る、松坂屋は14.5%増(東海テレビ)
1)ただ、コロナ感染前の2019年比は、7~9割ほどの水準にとどまっている。
●6.ドル円は1/4、116円台前半に円安
1)新型コロナ変異株「オミクロン株」による経済への悪影響は限定的との見方が広がる中、円相場は1ドル=116円台前半の円安となった。
2)2017年1月以来、約5年ぶりの円安水準。
●7.トヨタの2021年米国での自動車販売はGMを超えて、初の首位(ロイターより抜粋)
1)2021年の米国での自動車販売台数は、トヨタが233.2万台・前年比+10%増、GMが221.8万台・▲13%減だった。フォードは204万台。
2)年間ベースで、GMが首位の座を失うのは1931年以来始めて。
●8.企業動向
1)ソニー EV事業の本格化に向け子会社「ソニーモビリティ」設立へ(Impress Watch)
2)味の素AFG コーヒーなど88品目を20%値上げ、3月納品から(読売新聞)
●9.企業業績
1)スカイマーク 国内線回復で搭乗率8割で、コロナ禍後初の12月黒字(共同通信)
2)ファストリ 12月ユニクロ既存店売上は前年同月比▲11.1%減(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任で願いします)
・2127 日本M&A 業績成長期待。
・4188 三菱ケミカル 業績好調。
・3091 ブロンコビリー 業績好調。