改正道交法、クルマ運転者への新しい罰則規定と課題は
2022年1月3日 11:48
2022年6月30日に施行される新しい「改正道路交通法」には、これまでと異なる罰則と重要な規定変更が幾つかある。大きく自動車運転“規制強化施策”と“規制緩和処置”に分けられる。規制強化の大きなポイントは「あおり運転」の厳しい処罰と「高齢者運転対策」だ。
混乱必至の「改正道路交通法」 2022年6月30日施行
■規制強化策
あおり運転(妨害運転)に対する罰則規定創設
東名高速道路走行車線上で「あおり行為」によって妨害を受けた父親らが死亡する悲惨な交通死亡事故をきっかけに「あおり運転」が社会問題化した。それらに対処する「あおり運転」(妨害運転)に対する罰則が創設され、免許の取消処分の対象に追加された。「あおり運転」対策を強化する改正自動車運転処罰法である。
具体的には、「他の車両等の通行を妨害する目的で、一定の違反行為であって、当該する他の車両などに道路における交通の危険を生じさせる恐れのある行為(妨害運転)をした場合」、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、および免許の取り消し(欠格期間2年、前歴や累積点数がある場合には欠格期間が最大5年に延長)とする。
また、「あおり運転」(妨害運転)により著しい危険を生じさせた場合。この罪を高速自動車国道などにおいて行ない、他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合。5年以下の懲役または100万円以下の罰金、免許の取り消し処分とする。欠格期間3年、前歴や累積点数がある場合には欠格期間が最大10年に延長される。
具体的妨害運転の行為まで踏み込んで明記しており、通行区分違反や急ブレーキ禁止違反、車間距離不保持や進路変更禁止違反など10項目の妨害行為が記載されている。
また、自転車による妨害行為にも触れ、他の車両を妨害する目的で執拗にベルを鳴らす、不必要な急ブレーキをかけるなど、自転車の「あおり運転」を危険な違反行為と規定し、3年間に2回違反した14歳以上の者は「自転車運転者講習」の受講が義務づけられる。
■高齢運転者対策の充実・強化を図るための規定の整備
近年多発しているペダル踏み違いなど、高齢運転者による交通事故情勢を踏まえて、高齢運転者対策の充実・強化が図られた。
75歳以上で一定の交通違反歴がある者は、運転免許証を更新する際に、実際に車を運転して能力を確かめる運転技能検査を義務付ける。この検査は、更新期限の6カ月前から繰り返し受検することができるが、不合格の場合は運転免許証を更新することはできない。
一定の交通違反歴も具体的に明記され、信号無視や過度のスピード超過などの違反歴や交通事故歴などが想定されている。
運転技能検査(実車試験)の合格者は認知機能検査を受け、「認知症の恐れなし」と判定された場合は高齢者講習に進み、「認知症のおそれあり」と判定された場合は医師の診断を受ける必要が生じる。運転技能検査の対象は普通免許であり、その免許が不合格になっても原付免許や小型特殊免許は希望により継続することができる。
■規定には付帯事項があり、規制緩和処置のひとつとして
サポカー限定免許の新設
申請による運転免許の条件付与等の規定が整備され、運転できる自動車等の種類を、自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等の先進安全機能を備えた安全運転サポート車(サポカー)に限って運転できるサポート車(サポカー)限定免許が創設される。
■その他の規制緩和処置
中型免許の新設/大型免許取得条件緩和
第二種免許および大型免許、中型免許の受験資格が緩和される。「特別な教習」を修了した者については、第二種免許、大型免許、中型免許の受験資格が「19歳以上、普通免許等1年以上」に緩和される。
21歳(中型免許は20歳)に達するまでの若年運転者期間に、違反点数が一定の基準に達した場合は、講習の受講が義務づけられる。講習を受講しなかった場合や、受講後に再び基準に達した場合は、特例を受けて取得した免許が取り消される。
準中型免許が18歳で取得できる
すでに普通免許を取得していて、さらに限定解除審査に合格すれば、車両総重量5トン以上7.5トン未満の自動車を運転できる。審査は指定自動車教習所で4時間以上の教習等を受けた上での審査または運転免許試験場での技術審査のいずれかに受かる必要がある。
マイナンバーカードを免許証に
2021年12月23日、警察庁はマイナンバーカード(=個人番号カード)との一体化について、2025年3月末に全国で実現することを明らかにした。警察庁は2022年、この一体を含めた道路交通法改正案を国会に提出。所定の手続き後にマイナンバーカードを携帯していれば、運転免許証を家に置いたままでも「免許証不携帯」に問われない。ただし、マイナンバーカードが免許証として使えるようになっても、免許証の発行・更新は続く。(編集担当:吉田恒)