映画『ニトラム/NITRAM』青年はなぜ銃を求めたのか? 無差別銃乱射事件の真実に迫る

2021年12月29日 12:10

 映画『ニトラム/NITRAM』が、2021年3月25日(金)より全国ロードショー。監督はジャスティン・カーゼル、主演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。

■“普通になりたかった青年”はなぜ銃をとったのか?

 映画『ニトラム/NITRAM』は、第74回カンヌ国際映画祭主演男優賞、第11回オーストラリア・アカデミー賞最多8部門を受賞した作品。1996年4月28日日曜日、オーストラリアの世界遺産でもある観光地ポート・アーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件、通称「ポート・アーサー事件」の犯人を描いた初の映画作品だ。

■オーストラリア史上最悪の無差別銃乱射事件「ポート・アーサー事件」

 「ポート・アーサー事件」は、銃規制の必要性を全世界に問いかける先駆けとなった歴史的事件。アメリカ合衆国で起きた「コロンバイン高校銃乱射事件」の3年前、オーストラリアで2倍以上の死者数を出している。当時27歳の単独犯の思想的動機が不明瞭であることも拍車をかけ、新たなテロリズムの恐怖に各国が騒然となった。

 映画『ニトラム/NITRAM』が描くのは、事件当日に至るまでの犯人の日常と生活。舞台は、90年代半ばのオーストラリア、タスマニア島だ。かつて囚人の流刑地だった、観光しか主な産業がない閉塞したコミュニティに暮らす20代半ばの青年が、いかにしてオーストラリア史上最多の被害者を出した銃乱射事件の犯人となったのか?何より「普通」の人生を求めていた彼が、なぜ銃を求め、いかに入手し、犯行に至ったのか?その不可解な半生が、臨場感と緊張感をもって描かれる。

■ケイレブ・ランドリー・ジョーンズがカンヌ国際映画祭主演男優賞受賞

 主人公ニトラムを演じるのは、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。『ノーカントリー』でデビュー以降、『アンチヴァイラル』『ゲットアウト』『スリー・ビルボード』『フロリダ・プロジェクト』『デット・ドント・ダイ』などに出演し、注目を浴びるスターだ。ニトラムの内面に巣食う孤独と劣等感、屈折した男性性とナルシシズムを痛々しいまでのナイーブな演技で表現し、カンヌ国際映画祭、シッチェス・カタロニア映画祭などで主演男優賞に輝いた。

■ジャスティン・カーゼル監督の“最高傑作”との呼び声も

 監督は、カンヌ映画祭国際批評家週間特別賞を受賞した『スノータウン』で華々しいデビューを飾り、“現代オーストラリア最高の映画作家”と称されるジャスティン・カーゼル。マリオン・コティヤールとマイケル・ファスベンダーを主演に迎えたハリウッド・メジャー作品『アサシン クリード』や、低予算で国内ロケを行った『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』など、メジャーとインディペンデント、グルーバルとローカルの間を行き来する若き巨匠だ。

事件から25年しか経過しておらず、オーストラリア国内でも未だ議論が続いていることから、当初映画化にあたっては否定的な声も多かった『ニトラム/NITRAM』。それにも関わらず、犯人の人物像を多角的・多層的・多極的に描き切った倫理的な姿勢、その比類なき映像美学と圧倒的なリアリティが、国内ジャーナリズムからも高く評価され、ジャスティン・カーゼル監督の最高傑作にして到達点とも評されている。

【詳細】
映画『ニトラム/NITRAM』
公開日:2021年3月25日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか全国公開
監督:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント
製作:ニック・バッツィアス
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジュディ・デイヴィス、エッシー・デイヴィス、ショーン・キーナン

2021年/オーストラリア/英語/ヴィスタ/110分/原題:NITRAM/日本語字幕:金関いな/配給:セテラ・インターナショナル

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