ネット広告、AdTech市場が拡大 2兆円市場に 動画配信が急成長
2021年12月28日 09:34
広告代理店の電通が2020年3月、19年にインターネット広告費がテレビ広告費を上回ったと発表し話題となった。インターネット広告費は近年、動画配信の広がりなどを背景に、その額とシェアの拡大を加速させている。この傾向がコロナ禍の巣ごもり需要でさらに加速し、またAIなど統計数学を活用した「AdTech」と呼ばれる新たなマーケティング手法の活用も広がり、コロナ禍で広告市場全体は低迷しているものの、ネット広告は堅調に成長を続けているようだ。
12月17日、野村総合研究所がレポート「2027年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」を公表している。これによれば、「巣ごもり消費」として動画配信サービスの人気が高まり、加入者が増加しているようだ。レポート内で推計されている動画配信市場の規模は、19年には2286億円、20年は2972億円、前年比130.0%、21年は3580億円、同120.5%とコロナ禍の巣ごもり需要を背景に大きな伸び率を示している。しかし、22年は3735億円、同104.3%、23年3875億円、同103.7%と伸び率は鈍化し、27年は4181億円、同101.0%になると予測されている。レポートは「市場の飽和が徐々に見え始める中、収益源の多様化の動きも加速している」と指摘する。
こうした動画配信市場の拡大とその飽和見込みに比例しネット広告のマーケティング手法も変化を見せている。注目すべきは、AIや金融工学のノウハウを活用しインターネット上で出稿と広告枠のマッチングを行うAdTechの活用の広がりだ。AdTech活用の広告市場規模は、20年には1兆8888億円であったものが21年には2兆404億円、前年比108.0%、22年は2兆1045億円、同103.1%、27年には2兆5734億円で20年比136.2%まで拡大する予測だ。
内訳を見ると、予約型広告が20年に2025億円、27年には1273億円、成果報酬型が20年に985億円、27年に490億円と減少傾向で、検索連動型が20年に6787億円、27年に8081億円と微増傾向になっている。一方、標的顧客や標的コンテンツをリアルタイムに変更することで広告効果を最適化できる運用型広告は20年に9091億円、21年は1兆307億円、27年には1兆5890億円、20年比174.8%とその額とシェアを大きく拡大させるという予測だ。ネット広告への出稿は自社標的を明確にした運用が求められる時代に移行しているようだ。(編集担当:久保田雄城)