老化した神経幹細胞の効率的な若返りに成功 認知症の治療法開発に期待 京大
2021年12月22日 11:06
京都大学は17日、胎生期(受精から出産までの期間)に活性化している遺伝子を活性化し、同時に、老齢期において活性化している遺伝子を不活性化することで、マウスの老化した神経幹細胞を効率的に若返らせることに成功したと発表した。
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この若返りにより、神経幹細胞は幼若期並みに分裂、分化し、多数の神経細胞を産生。マウスの認知機能が改善することが確認された。今回の研究成果は、アルツハイマー症など認知症について、神経幹細胞の若返りによる神経細胞の補充療法開発に繋がることが、期待できるという。
■神経幹細胞とは?
神経幹細胞は、分裂、分化し、神経細胞を産生する。だが胎生期には盛んに神経細胞を産生するものの、老齢期になると老化し、ほとんど神経細胞を産生しなくなる。そのため老齢期になると、認知機能が低下してしまう。
もし神経幹細胞を若返らせることができれば、認知機能の改善が期待できる。
■クロマチン構造に働きかけて、神経幹細胞を若返らせる
私達のDNAはコンパクトに折りたたんで核内に収納されている。この折りたたみの構造を、クロマチン構造という。
このクロマチン構造は、遺伝子の活性と深く関係している。クロマチン構造が緩んだ部分の遺伝子は活性化し、締まった部分の遺伝子は不活性化する。
研究グループは、老化したマウスの脳において、独自に開発したiPaD(inducing Plagl2 and anti-Dyrk1a)と呼ばれる方法を用いて、このクロマチン構造に働きかけ、胎生期に活性化している遺伝子を活性化。同時に、老齢期において活性化している遺伝子を不活性化した。すると遺伝子の活性化のパターンが、若年期のものに回復。少なくとも3カ月以上に渡って、多数の神経細胞が産生され、マウスの認知機能の改善が確認されたという。
研究グループによれば、神経幹細胞はヒトの脳内にも存在しており、今回の研究成果は、アルツハイマー病などの脳疾患に対して、自分の神経幹細胞から神経細胞を再生する治療法の開発に繋がることが期待できるという。
今後研究グループでは、マーモセットなどの霊長類についても、同様の効果が期待できるかどうか、研究を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)