アフターコロナに向け再加速、アジアの拠点目指す福岡市のまちづくりとは?

2021年12月19日 08:55

コロナ禍において、世界各国が失業率の増加に頭を悩ませる中、日本の失業率はずば抜けて低い。先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)の調べによると、ヨーロッパ諸国が10%前後を推移する中、日本は2%台をキープしている。理由は様々考えられるが、コロナ禍の特例措置として実施された、従業員の休業手当の一部を国が負担する、「雇用調整助成金」の存在が大きいだろう。ただ、この雇用調整助成金の助成限度額が、徐々に縮小されていくようだ。

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金などの1日1人あたりの助成限度額を、2022年1月より、段階的に縮小することを発表した。4月以降、雇用情勢を見ながら判断するとしているが、早期退職希望者の募集や、リストラなど、企業のスリム化が加速するのでは?と懸念する見方も出ている。そんな中、新たな雇用の創出をテーマに掲げ、猛烈な勢いで開発を進めている地域がある。福岡市が推進する「天神ビッグバン」だ。

 かつて老朽化したビルが建ち並んでいた福岡市の天神地区を、国家戦略特区による「航空法高さ制限の特例承認」や、独自の容積率緩和制度などを組み合わせることで規制緩和を実施。積極的に民間投資を呼び込むことで、新たな雇用と空間を創出するプロジェクト「天神ビッグバン」は、着実にその成果を上げて来ている。昨年からのコロナ禍に対しても、感染症時代に対応した安全安心なまちづくりに向けて方向修正し、「感染症対応シティ」を目指す方針を固めた。

 既に感染症対応シティに対応したビル建替の計画も進められている。日本生命保険相互会社と積水ハウス株式会社が進めている「(仮称)天神一丁目北14番街区ビル」に関する概要が、先日公開された。オフィスの自然換気システムの導入や、通行料の多い箇所への非接触検温センサー設置など、感染症対応シティに向けた取り組みが盛り込まれている。ビル自体のデザイン性も優れており、ゆとりある歩行者空間や、通路沿いや壁面にも緑化を進めるそうだ。更に環境負荷に配慮した、省エネ性能の高いビルになるらしく、まさに近未来型のオフィスビルと言えるだろう。

 また、同社は、感染症対応シティにも対応し、九州初の「ザ・リッツ・カールトン ホテル」が入居することで話題を呼んでいる「(仮称)旧大名小学校跡地活用事業」にも参画している。

 西日本鉄道(株)が進める「福ビル街区建替プロジェクト」では、計画の変更が発表された。感染症対応シティへの対応に加えて、産学官連携で進める「国際金融拠点」誘致に伴い、よりハイスペックなオフィスの需要が高まることを見越しての変更だ。西日本最大規模となる基準階面積のオフィスを有する、国内最高水準の大型複合ビルを目指す予定だ。

 因みに福岡市では、天神の魅力向上に貢献する一定の要件を満たす、魅力あるデザイン性に優れたビルへの建替えを、「天神ビッグバンボーナス」と認定し、それに応じたインセンティブを付与する制度を展開しており、上記の3つのビルも認定を受けている。そういった効果もあり、現時点での建築確認申請数は52棟、竣工棟数は43棟となっており、コロナ禍に見舞われる中でもまだまだ「天神ビッグバン」の快進撃は続いている。行政が主導し、民間企業が呼応する、まさしく官民一体となって、この難局を乗り越えようとする姿が見て取れるのではないだろうか。この福岡市のケースがモデルとなり、各自治体に寄り添った形で広がれば、アフターコロナを生き抜く糸口を、全国単位で見出せるのではないか。明るい未来を予感させるこの取り組みに、今後とも注目していきたい。 (編集担当:今井慎太郎)

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