相場展望12月16日 米国、テーパリング早期完了⇒「利上げ」へ 日本株、年末までに資金化し、調整に備える?
2021年12月16日 09:16
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)12/13、NYダウ▲320ドル安、35,650ドル(日経新聞より抜粋)
・新型コロナ変異種「オミクロン型」の感染拡大への警戒感から、景気敏感株を中心に売り優勢となった。
・米連邦市場公開委員会(FOMC)の結果発表12/15を前に過去最高圏で推移する。米株には利益確定売りが出やすかった。
・FOMCで量的緩和縮小加速が決定される見通しで、積極的な買いは見送られた。
・航空旅客が減り受注に響くとボーイング、事務用品のスリーエム、化学のダウ、クレジットのアメックスなど景気敏感株が幅広く売られた。
・ハイテク株の多いナスダック総合も反落し、アップル、エヌビディアが売られた。
【前回は】相場展望12月13日 岸田首相に望む『外国人投資家が日本に戻る、 魅力ある本当の成長戦略の提言・実行』を 今年最後の米FOMCに注目
2)12/14、NYダウ▲106ドル安、35,544ドル(日経新聞より抜粋)
・米11月卸売物価指数(PPI)の上昇率が市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ前倒し観測が広がり、ハイテク株を中心に売りを促した。
・米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を12/15に控え、押し目買いの動きも限られた。
・長期金利上昇で、セールスフォース▲4%安、マイクロソフト▲3%安と、2銘柄でNYダウを▲140ドルほど押し下げた。
3)12/15、NYダウ+383ドル高、35,927ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)は12/15の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(量的緩和の縮小)加速を決め、2022年の利上げ回数を1回から3回に増やすとの予想を示した。
・ほぼ市場の想定内の結果と受け止められ、FOMCを通過した安心感から買い優勢となった。
・長期金利の落ち着きを受け、ハイテク株など高PER(株価収益率)銘柄も上昇。
・アップル、マイクロソフト、セールスフォース、メルク、ビザなどが高い。
●2.米国株の課題:(1)テーパリング加速 (2)早期利上げ (3)FRB資産縮小
1)(1)はFOMC12/15で決定済、残る課題は(2)(3)
・11月生産者物価指数は前年同月比+9.6%と最大の上昇となり、「テーパリング加速」を促した。
・テーパリングで減少額を現行150億ドル⇒300億ドルに引上げると、完了時期は来年6月⇒3月に短縮される。
・FRBはインフレ抑制のための手段「利上げ」時期を早期化できることになる。
・支持率低下で回復させたいバイデン大統領は、「物価低下」に主眼を置いた。
・FRBも「雇用」⇒「インフレ抑制」へと政策ターゲットを変更している。
・次の課題は(2)「利上げ」であり、金利先物市場では2回の金利引上げを見込んでいる。したがって、2回の利上げであるならば、米株式市場の下落は限定的となるだろう。問題は3回を超える見通しの場合で、米株式市場にとって「サプライズ」となる可能性がある。その場合、それなりの調整となりそうだ。
・「利上げ」してもインフレ抑制効果が少ないとなれば、「FRB資産縮小」し市場から資金を回収することでインフレ退治することになる。通常は「利上げ」を数回以上実施してから、「資産縮小=市場から資金回収」する手順を踏むと考えられる。ただ、インフレ抑制効果をみながらの「資産縮小=資金回収」であるが、
そのペースと規模は、インフレ抑制次第となりそう。この場合、株式市場からの資金引き揚げとなるので、株式相場にとって「利上げ」&「資金回収」のダブルパンチとなる厳しい状況を迎えることになると思われる。
2)膨張したマネーが引き起こした、過剰マネー相場の歪みを修正する時期は必ず訪れる。
●3.FOMC決定後のパウエルFRB議長記者会見
1)最大雇用に向けて経済は速やかに進展している。
2)FRBは最大雇用の達成前に、「利上げ」も可能。
3)3月中旬までのテーパーを終了する軌道。
4)利上げは、テーパー終了後。
5)テーパー終了から利上げまでの期間はあまり長くないないと予想。
●4.米国FRB、(1)2022年に3回利上げ (2)量的緩和終了は3月に前倒し (3)インフレ抑制鮮明(時事通信より抜粋)
1)米連邦準備制度理事会(FRB)は12/15、連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、米国債などを買入れる量的緩和策の縮小ペースを加速させ、終了時期を2022年3月に前倒しする方針を決めた。
2)FOMC会合の参加者の政策金利見通しは、2022年中に事実上のゼロ金利政策を解除し「3回利上げ」するシナリオを提示。インフレ率が39年ぶりの高水準に達する中、FRBは物価高の抑制に軸足を置く姿勢を明確にした。
3)FOMC後の声明は、高インフレは「一時的」とする従来の文言を削除。物価高への警戒感を強めた。
4)新型コロナ危機対応で導入した量的緩和策の縮小ペースは月300億ドルへと2倍に引上げ。その終了時期の想定を2022年6月から3月に前倒しした。縮小緩和を早期に終え、利上げの準備を整える。
5)FOMC参加者の「金利引上げ」の中心的な見通しは、利上げ回数が
(1)2022年中に3回と前回9月時点の1回から増え、
(2)2023年は3回
(3)2024年は2回
となった。
インフレの高止まりを受け、金融引き締めが進むシナリオが示された。
6)インフレ率の見通しは、2022年が2.6%(9月時点は2.2%)、2023年は2.3%(2.2%)に上方修正。FRBが目標とする2%を上回り、高インフレが長期化する可能性があると予想した。
7)実質GDP(国内総生産)の伸び率は2022年が4.0%(3.8%)と堅調な成長を予想。失業率は改善が続き、2022年に3.5%へ低下すると見込んだ。
8)FOMCでは、政策金利を年0~0.25%に据え置くことも全会一致で決めた。
●5.米11月生産者物価指数は前年同月比+9.6%、2010年11月以降で最大(共同通信)
1)過去最大の伸びで、インフレ上昇を警戒。
●6.米上院・下院で債務上限2.5兆ドルの引上げ法案を可決(ロイターより抜粋)
1)連邦政府の債務上限は引上げによって31兆4,000億ドルとなる。
2)上院では50対49、下院では221対209で可決され、バイデン大統領に送付される。
3)デフォルト懸念は回避。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)12/13、上海総合+14高、3,681(亜州リサーチ)
・中国政府の景気重視スタンスが好感され、3ヵ月ぶりの高水準に回復した。
・先週閉幕した2022年の経済政策方針を決める重要会議「中央経済工作会議」で積極的な財政政策と緩和的な金融政策の継続が確認された。
・また、中国メディアは12/13、2022年分の公益事業向け特別地方債に関し、当局は前倒し審査・承認の方針を決めたと報じた。
・業種別では、ゼネコン・建機・セメントなどインフラ関連が高く、不動産は安い。
2)12/14、上海総合▲19安、3,661(亜州リサーチ)
・新型コロナ感染拡大が不安視される流れで、浙江省ではクラスターが相次ぎ、12/13までに上場企業17社が業務停止を強いられている。
・天津市でオミクロン型が初確認されたと報道があり、北京冬季五輪の開催を来年2月に控えており、「ゼロコロナ」政策を掲げる中国で厳格な対策は必至。経済活動の停滞が懸念されている。
・業種別では、景気敏感株が売られ、反面、メディア関連は急伸した。
3)12/15、▲13安、3,647(亜州リサーチ)
・小売売上高が前年同月比+3.9%で予想+4.7%を下回り、国内消費の伸び悩みが嫌気された。
・米国の半導体製造装置の輸出規制強化など、中国への圧力も不安視された。
・業種別では、消費関連の下げが目立ち、反面、発電株は急伸した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)12/13、日経平均+202円高、28,640円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米株式相場の上昇を受け、東京市場は一時+350円超まで上昇したが、米FOMC、日銀が金融政策を週内に決める会合を控え、様子見気分が強まった。
・海外などの短期筋が、買戻しを進めているとの見方があった。
・海運株、アドテスト、東エレク、ファストリが上昇、リクルート、トヨタが下落。
2)12/14、日経平均▲207円安、28,432円(日経新聞より抜粋)
・新型コロナ「オミクロン型」への警戒が再び意識され、欧米の株式相場が下落した流れから東京市場でも売りが先行し、下げ幅は一時▲300円を超える場面があった。
・米FOMC通過後の上昇を見越した買いが入り、小幅上昇に転じる場面もあった。
・岸田首相が衆院予算委員会で、自社株買のガイドライン設定を示唆、下落幅拡大。
・空運や鉄道、ファストリ・エムスリー・東エレクなどが安く、トヨタが買われた。
3)12/15、日経平均+27円高、28,459円(日経新聞より抜粋)
・米国株に比べて割安感が根強く、安値圏では主力銘柄の押し目買いが入った。
・米FOMCの結果発表を控え、様子見姿勢が強く、持ち高を一方向に傾ける動きは限られた。
・中国の11月小売売上高が前年同月比3.9%増と市場予想を下回り、重荷になる。
・トヨタ、リクルートが買われ、ファストリ、ダイキン、KDDIの売りが目立った。
●2.日本株は売り圧力強く、2022年前半を見据えて、年末までに資金化も1つの考え
1)上値での売り圧力の強さで、30,000円乗せは難しそう
短期的にはレンジ内での値動きとなり、方向感の出にくい相場が続くと予想する。
2)2022年前半の懸念材料を前に、年末までに売却して資金化が得策となる可能性も?
(1)春に日経平均は調整しやすい上に、米国中間選挙年は過去3回調整の経験則リスク。
(2)米FRBテーパリング後の政策金利引上げリスク。
(3)北京冬季五輪の2月開催に向けて米中対立懸念リスク。
3)岸田首相の「自社株買ガイドライン設定」発言は、日本株最大の買い主体となっているのは事業会社であり、自社株買い制限で、株式相場の需給悪化を招く懸念がでてくる。岸田首相の発言は、株価上昇を期待する向きには、マイナス効果にしか過ぎない。年金運用の基金にとっても、退職等の年金の受給者にとっても、悪い話である。
4)12月の地合いは良くない。
5)経験則上から、「11~12月は株価上昇」期待であるが?
・年間の月間上昇確率が高い上位1~3番に「11月・12月」が該当している。
・11月経験則は、ハズレとなった。
・12月も経験則通りとなり難い要因がある。
・インフレ高進による抑制としての金融政策の転換。
・金融緩和の縮小(テーパリング)の加速、金利引上げの足音。
・金利上昇で、高PERのハイテク株の多いナスダック総合は下落する。
・株式市場が売られ、債券市場に資金がリスク回避で流出する。
●3.岸田首相が自社株買い規制に言及、「ガイドライン」検討、株価下落(ブルームバーグ)
1)衆院予算委員会で12/14、岸田首相は「企業の自社株買位の関連してガイドラインをつくる」可能性について言及した。企業が投資家から資金を調達すべき株式市場が、投資家に資金を供給する場所になっているとした。また、自社株買の制限は、新しい資本主義を実現する観点から、「大変需要なポイントでもある」とも述べた。ただ、画一的に規制することは、「少し慎重に考えなければいけない」とした。
2)自社株買の制限検討を求めた立憲民主党の質問に答弁した。
3)発言を受け、東京株式市場は午後に入り、下げ幅を拡大し、日経平均は一時▲300円超の値下がりとなった。
●4.企業動向
1)ブリジストン 防振ゴムと化成品事業を売却、売却損▲1,190億円(時事通信)
2)日本製鉄 タイの電炉大手2社を買収へ、最大1,000億円規模(ブルームバーグ)
3)トヨタ 電気自動車の販売目標2030年に世界で350万台(NHK)
●5.企業業績
1)東建コーポ 第2四半期営業利益+72.2億円・前年同期比+6.3%増(フィスコ)
予想は76億円だった。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2607 不二製油 業績堅調。「大豆ミート」がJAS規格へ。
・6856 堀場製 業績好調。
・4612 日本ペイント 業績堅調。
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