記憶と睡眠の関係を解明 光で記憶を消去する技術用いて 京大など

2021年11月20日 07:48

 京都大学、理化学研究所などは15日、光で記憶を消去する技術を使い、記憶と睡眠の関係を解明したと発表した。研究グループによれば、今回の研究成果は、発達障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、アルツハイマー病、その他の認知症などの記憶 ・学習障害だけではなく、統合失調症やうつ病などの治療法の開発にも広くつながっていく可能性があるという。

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■光で記憶を消去する技術とは?

 記憶は神経細胞と神経細胞がシナプスを介して機能的に強く結合することで形成される。逆にこの結合が解除されると、記憶も消去される。

 研究グループは、光に反応するタンパク質「SuperNova」を用いて、この結合の形成において重要な役割を演じるタンパク質を不活性化することで、光で記憶を消去する技術を開発した。ちなみに、SuperNovaはイソギンチャクに由来するという。

 これまでにも、薬剤を使って記憶を消去することはできたが、光を用いて消去できるようになったことで、脳内の狙った場所で、狙った時間に、記憶の消去が初めて可能となった。

 研究グループは、この技術を用いて、記憶と睡眠の関係を解明した。

■記憶と睡眠の関係とは?

 研究グループは、SuperNovaを導入した後、マウスに学習させ、記憶を形成。その後、マウスの脳の海馬、前帯状皮質などに、時間を変えながら光を照射して記憶を消去し、記憶と睡眠の関係を詳しく調べた。

 するとマウスの海馬において、学習直後とその後の睡眠時の2段階で、シナプス結合の強化が起っていることが解った。研究グループによれば、これによって短期記憶が形成されるという。

 さらに翌日の睡眠時には、前帯状皮質で、シナプス結合の強化が起っていることが解った。つまり、学習の翌日には長期記憶の形成が始まっていることになる。

 研究グループでは、シナプス結合の強化に関する異常は、発達障害やPTSD、アルツハイマー病などの記憶 ・学習障害だけではなく、統合失調症やうつ病の発症にも関与していることが示唆されており、本研究成果は、これらの病気の治療法開発にも広くつながっていく可能性があるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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