コロナ禍で孤立する中国(2)【中国問題グローバル研究所】
2021年11月11日 15:47
*15:47JST コロナ禍で孤立する中国(2)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。
◇以下、「コロナ禍で孤立する中国(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
グローバルリーダーとしての資質の問題
こうして孤立路線を継続した場合、今後数年間における中国の役割はどのようなものになるのだろうか? ビジネスの世界ではZoomやその他のプラットフォームを用いたバーチャルなやり取りが受け入れられているかもしれないが、社会のあらゆる局面において、人と人とが直接顔を合わせることの恩恵を過小評価してはならない。コロナ後の世界は以前と同じではなく、制限や変化は今後何年も続くであろうが、それでも、人間が社会的な生物であることに変わりはない。同僚間であれ、学生間であれ、政治指導者間であれ、中国社会のあらゆるレベルにおいて、対面によるやり取りが大きく減った状態は今後も続くと思われる。
中国はおそらく世界のリーダーの役割を担いたがっており、それを要求する場面も出てくるだろうが、その「リーダー」が動画のリンク先にしか現れないとしたら、いったい何が起こるだろうか? 習近平にとって、ローマでのG20首脳会議と気候サミットCOP26は、国際舞台に登場するのに理想的な場であったが、彼はそうしなかった。他の外交官は現地に移動していたが、海外訪問に慣れているはずの習氏は、国を出ることを拒否したのだ。このことは、何を物語るのだろうか? 国外にいる間に、政敵による陰謀が起きることを恐れているのだろうか? それともCOVID-19の感染を危惧しているのだろうか? あるいは、他国の首脳から、新型コロナウイルスの起源について情報を公開しなかったことを非難されると不安なのだろうか? 誰にも確かなことはわからないが、他国の首脳と顔を合わせなければ、国際社会での自身の評判や影響力をどのように高めればよいかを、知ることは難しくなる。
中国経済は、国内のロックダウンが終わった当初は好調であったが、現在は難しい状況に陥っている。 不動産セクターにおける過剰債務の問題は、特に中間層の経済を圧迫しており、国内消費も依然として低迷している。 国内経済のさまざまなセクターで抑制策がとられているとはいえ、海外からの投資機会は引き続き存在する。ただし、中国内外のビジネスパーソンが移動も対面でのミーティングも事実上できないのであれば、機会をフル活用する方法も、機会を部分的にでも開拓する方法も、見つけ出すことは困難である。バーチャルでのつながりには、限界があるのだ。
さらに、COVID-19に起因する混乱によって顕わになったサプライチェーンの脆弱性に関しても、ビジネス界からの懸念が寄せられるはずである。 コロナ後の再建活動の一環として、企業はサプライチェーンの混乱から自社を切り離そうとすることが予想され、その結果として、中国は確実に困難を抱えることになると思われる。
昨年私はこのコラムで、この前例のない世界的なロックダウンの後で、どのような世界が出現するだろうかと問いかけた。そのロックダウン後の世界に対する注目が徐々に高まっており、現状では、中国のビジネスパーソンや学生や旅行者は国内にとどまり、中国はきわめて熱心な海外からの旅行者以外に対しては閉ざされた国になると予想される。このことからもわかるように、過去30年間の中国との関わりを指標として、今後の中国との関係を予測するのは難しい
国外の我々は、中国が国際社会から距離を置き、幻想を肥大させ、敵愾心を募らせ、怒れる孤立へと逆戻りする事態にならないことを祈らなければならない。 気候変動対策に取り組み、将来またパンデミックが発生した時に適切に対応するには、中国の関与は不可欠だからだ。一方で、中国指導部の偏執的な態度を見ていると、当面の間は、そうした関与が進むことはなく、限定的なものにとどまると考えられる。
写真:ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/《FA》