ペットボトルを常温で効率的にリサイクルする技術開発 産総研

2021年11月11日 16:13

 産業技術総合研究所は8日、ペットボトルや化学繊維などに使われているプラスチックの1種「PET樹脂」を、常温で効率的に再び原料に戻す触媒技術を開発したと発表した。常温での処理が可能になったことで、低コスト化が可能になるという。

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■プラスチックのリサイクル技術
 現在、プラスチックゴミによる環境汚染が社会問題化している。そこで注目されているのがプラスチックのリサイクル技術だが、その方法には、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの2つがよく知られている。

 マテリアルリサイクルは、使用済みのPET樹脂を回収・選別後に、PET樹脂の状態はそのままで溶解し、再形成する。不純物のため、リサイクル後の製品は品質が低下するというデメリットがある。

 これに対してケミカルリサイクルは、PET樹脂を一旦化学的に低分子化合物にまで分解して再合成する。リサイクル後の製品の品質は維持されるものの、分解のために高温(200度以上)が必要であり、コストが高くなってしまう。

 今回の研究グループの研究成果は、このようなケミカルリサイクルにおける問題点を解決するものである。

■PET樹脂を常温で効率的に分解し原料に戻す触媒技術
 研究グループは、市販のペットボトルをフレーク状にしたものに、メタノール、炭酸ジメチル、アルカリ触媒であるリチウムメトキシドを適切な比率で混合した。結果、室温において3時間ほどで、90%以上のPET樹脂が分解することが解ったという。さらに反応温度を50度に設定したところ、PET樹脂は全て分解された。

 その後、単純な精製操作によって、PET樹脂の原料として再利用可能な、テレフタル酸ジメチルの高純度(99%以上)の結晶を得ることができたという。

 また副産物として、炭酸エチレンも高収率で得られたという。炭酸エチレンはリチウムイオン電池の電解液などとして使われている。

 研究グループでは今後、今回開発した技術の社会実装を目指し、触媒の改良、反応のスケールアップ、さまざまなPET樹脂含有製品への応用などの研究を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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