大和ハウスら開発の植物工場システム、初導入 鹿児島で

2021年11月9日 08:14

 大和ハウス工業は8日、三協立山と共同開発した植物工場システム「agri-cube ID(アグリキューブ・アイディー)」の初導入が決定したと発表した。導入先は、鹿児島市でエネルギー事業や飲食事業などを展開しているMisumi(ミスミ)で、ミネラルウォーター工場だった既存施設をリノベーションして導入する。

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 今後は、Misumiが植物工場の事業運営(野菜の生産・販売)、大和ハウス工業が野菜の販路サポート、三協立山が植物工場の栽培サポートをそれぞれ担う。年間の売上高目標は1億8千万円を見込んでいるという。

■agri-cube IDの概要

 agri-cube IDは、植物工場の建設から栽培・運営サポートまで、ワンストップでサービス提供する植物工場システム。2011年から植物工場の研究を行ってきた三協立山と、2012年頃から小型植物工場の販売を実施している大和ハウス工業が、大量生産できる大規模植物工場を目指し、2019年10月に共同開発した。

 植物工場の建設は、栽培実証・事業検討といった小規模から大規模植物工場まで対応。工場の空きスペースへの導入なども可能だが、将来の事業規模拡大を想定した工場のトータルプランニングも行う。Misumiは延床面積1,282平方メートルの既存施設を活用することで、イニシャルコストの削減を図ったという。

 野菜の栽培には、フリルレタス(業務用向け1株200g)が最短35日間で栽培可能なオリジナルの促成栽培技術を用いる。栽培設備は、共同開発した送風システムと最適配置したLED照明で野菜に風と光を均一に当てて、生育ムラが出ないように設計。併せて、大和ハウス工業が開発した養液管理システムを導入し生育を促進する。

 栽培・運営サポートでは、植物工場を運用している三協立山の知見・技術を提供。工場管理者への事前指導や工場稼働後の現場教育、運用開始後のサポートなどを行う。

 植物工場は、安定生産や食の安全などの観点から近年関心が高まっている。天候や地域などに左右されずに収穫でき、害虫が侵入・発生しにくいため農薬を使用せずに野菜の育成が可能。また、出荷時の付着性菌数の低減化が図れ、これまでより野菜の鮮度を長く維持できるため、フードロスの削減にも寄与するという。

 矢野経済研究所の調査(2020年9月発表、完全人工光型植物工場運営市場規模)によると、2019年度の植物工場野菜生産者出荷金額は84億9,000万円で、前年度比142.2%と増加傾向。2024年度には360億円に達する見込みという。

 Misumiの植物工場は、11月10日より操業開始を予定。同社は今回の導入を機に、農業事業に本格参入する。大和ハウス工業と三協立山は、今後も協業でagri-cube IDの導入先を拡げ、2026年度には年間5棟の導入を目指すという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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