プラスチックゴミで食糧問題を救う新たなリサイクル方法 東工大ら

2021年11月9日 13:29

 プラスチックは軽くて丈夫でとても便利な素材だが、ゴミとなった時の処理は大きな社会問題となっている。東京工業大学らの研究グループは、植物を原料として作られたプラスチックをアンモニアで処理することで、農作物の肥料を作り出すことに成功したと発表。これが実用化されれば、プラスチックの廃棄問題を解決し、同時に農作物の収穫量を増やすことで世界の食料問題にも貢献できるだろう。

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 今回の研究は、東京工業大学の阿部拓海大学院生、青木大輔助教、大塚英幸教授らと、東京大学の神谷岳洋准教授、京都大学の沼田圭司教授らにより共同で行われた。研究成果は10月28日付けで、王立化学会誌「Green Chemistry」に掲載された。

 プラスチックゴミの処理については、大きな社会問題である。プラスチックは丈夫で壊れにくく腐ったり錆びたりしない。だがそれは逆に、不要になった時に分解されず長期にわたってゴミとして残ってしまうという問題になる。これらのプラスチックゴミを飲みこんで命を落とす野生動物がおり、自然環境への影響も問題となっている。

 現在プラスチックゴミの一部はリサイクルされている。リサイクルの方法には主に3つある。1つはマテリアルリサイクル。そのまま、または溶解などして再度原料として使用する方法だ。2つ目は、ケミカルリサイクル。分子を長く繋げてできているプラスチックを、分子にまでバラバラにしたりガス化して分解し、リサイクルする方法だ。そしてもう1つはサーマルリサイクル。固形燃料などの熱源として、また燃焼する時に発電することによるリサイクルだ。

 今回新たに開発されたリサイクルは、プラスチックを分解して肥料として利用するものだ。植物由来のイソソルビドという分子を原料にして作られたポリカーボネートを、アンモニアを加え90度で処理すると6時間で植物の肥料となる尿素に変化する。高価な触媒(反応を進める化学物質)も必要がない。

 さらに研究グループは、ここで得られたポリカーボネート分解物が植物にどのような影響を与えるかを調べた。シロイヌナズナというアブラナ科の植物にポリカーボネート分解物を与えたところ、成長を促進。さらには、尿素とイソソルビドを1:1に混ぜたものよりも、その成長促進度は高かったという。これはポリカーボネート分解物の尿素とイソソルビドの割合が0.7:1であることが理由のようだった。

 この研究結果により、まだまだ出続けるであろうプラスチックゴミを少ないコストで有効にリサイクルし、さらに肥料として食料問題にも貢献していける可能性に期待したい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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