負荷で骨が強くなるメカニズム発見 骨粗しょう症の治療などに期待 阪大

2021年11月3日 11:24

 宇宙飛行士が宇宙で過ごした後、骨が弱くなってしまうという話は有名だ。どのような仕組みでこの現象が起こるかこれまで明らかになっていなかった。大阪大学は10月27日、重力などの力が加えられることで「骨の質」が良くなるメカニズムを解明したと発表。この発見により、無重力下における骨の状態維持や、高齢者の骨粗しょう症治療法が開発されることが期待される。

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 今回の研究は、大阪大学大学院工学研究科の松垣あいら准教授、大学院生の松坂匡晃博士前期課程生、中野貴由教授の研究グループが行い、10月27日に「Biomaterials」誌に掲載された。

 これまで骨粗しょう症などの骨の診断は、骨密度によって行われてきた。骨密度とは、X線や超音波を用いて骨に含まれるカルシウムやミネラルの量を測定したものだ。検査によって骨粗しょう症と診断された時の治療法は、カルシウム剤やビタミンD剤の服用がある。また女性の場合、女性ホルモンの低下で骨密度が下がることから、女性ホルモンを補う薬剤による治療が行われてきた。だが骨の「材料」の補充だけでなく、骨の質も重要であることがだんだんと明らかになってきた。

 骨はリンとカルシウムを含むアパタイトとコラーゲンからできている。このアパタイトとコラーゲンが整列して並んでいる状態を、「配向化構造」という。研究グループはこれまでに、このアパタイトとコラーゲンの配向化構造が骨の強度に重要であることを明らかにしてきた。最初に骨芽細胞が配列化することで、骨の配向化構造が作られることも明らかにしている。

 今回研究グループは、骨の中の圧力を感じる細胞であるオステオサイト(骨細胞)が、骨芽細胞にどのような影響を与えているかを調べる培養モデルを作成。オステオサイトにモーターで作り出した流れによる圧力を加えたところ、骨芽細胞が綺麗に配列することがわかった。また遺伝子解析により、プロスタグランジンE2が骨芽細胞の配列を制御していることも判明。

 さらにプロスタグランジンE2の受容体を阻害したところ、骨芽細胞の配列が乱れてしまった。このことから、この物質が骨芽細胞の配列化、ひいては骨の配向化構造に重要な役割を持っており、治療ターゲットとしての有力候補であることがわかったという。

 これまでは骨密度でしか測れなかった「骨の強さ」が、骨の質の影響を大きく受けていること、そしてそのメカニズムが明らかになった。今後、宇宙などの無重力空間で起こる骨の異常を防ぐ方法や、寝たきりや体が動かせないことで起こる骨粗しょう症の治療に貢献していくことに期待したい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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