上皮細胞が前がん細胞を排除する仕組み解明 がんの予防治療に期待 早大
2021年10月27日 11:21
早稲田大学は25日、早稲田大学高等研究所の丸山剛(まるやまたけし)准教授を中心とする研究グループが、非免疫細胞の上皮細胞が前がん細胞を認識し、排除する仕組みを解明したと発表した。研究グループでは、今回の研究成果は、がんを予防的に治療する革新的な医療技術の開発につながることが期待できるとしている。
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■非免疫細胞の上皮細胞が前がん細胞を認識し、排除する
これまでも非免疫細胞である上皮細胞が接触する前がん細胞を認識し、排除することはしられてきた。いわゆる細胞競合である。
しかし、この細胞競合において、上皮細胞がどのようにして前がん細胞を認識するのかについては、よく解っていなかった。
今回の研究グループの研究成果はこの点を解明するものである。
■非免疫細胞の上皮細胞が前がん細胞を認識する仕組み
まず、前がん細胞の表面にはMHC-Iと呼ばれるタンパク質の一部が突き出している。これが鍵になる。
次に、表皮細胞の表面にはAltRと呼ばれるタンパク質の一部が突き出している。これが鍵穴になる。
このMHC-IとAltRが相互作用することで、つまり、鍵が鍵穴にきちっとはまることで、表皮細胞の前がん細胞との境界部分に細胞骨格形成因子が集積し、前がん細胞を上皮細胞層から押し出し、体外へ排除するというわけだ。
研究グループは、培養容器の中に細胞競合モデルを構築し、分析することで、このことを突き止めた。
また、研究グループでは、AltRと相互作用するMHC-Iの部分を人工的に合成することにも成功した。そして、研究グループは、このRec.MHC-I α3と呼ばれるタンパク質にマウスの発がんを抑制する働きがあることを確認した。研究グループによれば、これは、Rec.MHC-I α3の投与によって、上皮細胞による前がん細胞の排除が促進された結果だと考えられるという。
研究グループでは、今回の研究成果は、がんを予防的に治療する革新的な医療技術の開発につながる可能性が高いと期待している。ただ、前がん細胞の検出は非常に難しく、今後、前がん細胞を検出する技術の開発が課題となるだろうとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)