銀行貸出残高、500兆円超え 中小への貸出急増 資金繰り支援から本業再建支援へ

2021年10月21日 11:32

 新型コロナワクチンの接種率は約6割に達しており、ワクチン効果が出始めたのか感染者数も急激に減少している。しかし、未だ経済正常化への道筋は見えず先行き不透明な状況が続いている。コロナ禍の長期化により3社に1社が過剰債務の状態にあると言われており、今年春以降はコロナ関連倒産が月に100件を超える高水準で推移している。

 昨年2020年の企業倒産は新型コロナ関連の各種資金繰り支援が功を奏し歴史的な低水準を記録した。しかし、今年に入り売上回復が見込めないまま返済がスタートする過剰債務の中、あきらめ型倒産、息切れ倒産が急増している。政府はリスケ支援策を強化しているようだが資金繰り支援のみでは企業の債務は膨らむばかりで、今や本業自体を再建する支援が求められる状況だ。昨年からの資金繰り対策の影響で銀行の自治体向け、中小企業向けの貸出額は歴史的急増となり、総貸出金残高は500兆円を超えたようだ。

 9月21日、東京商工リサーチが国内銀行の貸出状況を調査・分析したレポートを公表しているが、これによれば、21年3月期の総貸出金残高は501兆611億円、前年比5.1%の増加と急増し、調査を開始した10年3月期以降、500兆円超は初めてだ。総貸出金残高のうち中小企業等向けは340兆8744億円で前年比4.4%の増加、貸出金全体に占める構成比は68.0%と約7割におよんでいる。伸び率は前年の1.9%増から2.5ポイント増の大幅な増加となっている。

 業態別に見ると、中小企業向けが増加したのは大手行で7行中5行、地方銀行は62行中61行、第二地銀は38行中37行となっている。本店の所在地別では、全10地区で前年を上回り、増加率のトップは北海道の9.5%増、次いで中部6.5%増、四国6.2%増、九州5.7%増、東北5.5%増の順となっている。貸出比率では近畿78.7%がトップ、四国と関東が77.9%、中部76.1%、九州70.0%と続いている。

 コロナ禍の長期化で中小企業の業績回復は見込みが立たない中、3月末にはゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)も終了し、銀行は当初の赤字補填から本業支援へとシフトし始めているが未だ動きは鈍いようだ。レポートは「コロナ禍で苦境から抜け出せない中小企業の本業支援と同時に、アフターコロナを見据えた経営再建、事業再構築への支援という重い課題への取り組みも求められている」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)

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