どこで何を学ぶかは、自分で決める。都道府県の枠を越えた新しい進学「地域みらい留学」の取り組み(連載第1回)

2021年10月18日 11:45

 「住む場所を変えれば、出会う人も変わる。学ぶ場所を変えれば、新しい世界が見える」。生まれ育った都道府県の枠を超えて、地域の魅力的な高校へと進学する「地域みらい留学」という事業があります。この連載では、この事業に取り組まれている「(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム」さんから、事業への思いとその背景にある課題についてご紹介いただきます。

どこで何を学ぶかは、自分で決める。都道府県の枠を越えた新しい進学「地域みらい留学」の取り組み(連載第1回)

 本記事の原稿は、都道府県の枠を越えて地域の高校へ進学する「地域みらい留学」事業に取り組んでいる「(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム」(以下、地域・教育魅力化プラットフォーム)の辻田雄祐さんに寄稿していただきました。
 (グーテンブック編集部)

この記事の話し手:辻田雄祐さん

この記事の話し手:辻田雄祐さん神奈川県出身。地域・教育魅力化プラットフォーム参画と同時に島根県に移住。地域みらい留学事業の統括を担当。学生時代・大学職員時代から「子どもが自立しにくい日本社会」に課題感を感じ、親子がお互い自分らしく生きていくうえで、親以外の大人との出会いや地域全体で子どもを育てることの重要性を人生のテーマとして追いかけている。

「地域みらい留学」とは|都道府県の枠を越え、地域の高校へ進学

 はじめまして。一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォームで、地域みらい留学事業の統括をしている辻田雄祐です。

 私たちは、「意志ある若者にあふれる 持続可能な地域・社会をつくる」をビジョンに掲げ、若者の主体的な学びや地域活性につながるさまざまな取り組みを行っています。

 その取り組みの1つが、地域みらい留学です。

 地域みらい留学とは、「都道府県の枠を越えて、地域の学校に入学し、充実した高校生活をおくること」です。
 その機会を通して意志ある若者を増やし、また地域を元気にすることを目指しています。

 地域みらい留学には現在、2つの仕組みがあります。
 1つ目は「地域みらい留学(高校進学)」。これは中学卒業後、地元ではない地域の特色ある高校で3年間を過ごすという選択肢です。
 2つ目は「地域みらい留学365(高2留学)」。こちらは高校2年生時の1年間、入学した高校に在籍しながら、地域の高校に国内留学し過ごすという選択肢です。
 中学生と高校1年生に向けて、どちらも新しい高校生活の選択肢としてご用意しています。

地域みらい留学

地域みらい留学都道府県の枠を越えて、地域の学校に入学し、充実した高校生活をおくること。北海道から沖縄まで日本の各地域にある魅力的な学校には、そこでしかできない体験と新しいチャレンジが待っています。

地域・教育魅力化プラットフォーム

地域・教育魅力化プラットフォーム 地域・教育魅力化プラットフォームは、意志ある若者が育つ魅力ある教育環境を実現し 新たな人の流れを生む かけがえのない一助となる」というミッションを掲げ、地域みらい留学をはじめとした、地域の高校魅力化に関わる様々なプロジェクトに取り組んでいます。

地域みらい留学の魅力

 地域みらい留学の魅力は、地域ならではの自然や文化との出会いと、多様な人々との出会いです。
 都会ではなかなか体験することのできない本物の自然や、脈々と受け継がれてきた伝統文化が地域にはあります。参画校の中にはそういった自然や文化を活かした課外活動や部活動を行っている学校がたくさんあるので、「そこでしかできない体験」に溢れている環境が魅力です。

 また、全国から留学してくる生徒、地元から進学した生徒、地域の大人たちといった年齢も背景も様々な人との出会いがあります。
 学校生活や、寮やホームステイでの暮らしを通して、多様な価値観をもった人と触れ合い、その考えを学ぶことができるのです。
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 左:北海道奥尻高等学校 右:熊本県立矢部高等学校

地域みらい留学が目指す、2つの目的

 私たちは、地域みらい留学の活動を通して、次の2つの目的を達成したいと考えています。

 ①意志ある若者の育成
 ②持続可能な地域づくり

 「生まれ育った場所で進学する」という当たり前を越えた新たな選択肢を用意することで、子どもたちにもっと「自分はどこで高校生活を送りたいのか」を考えるきっかけづくりをしたいのです。
 中学生、高校生という年齢で自分のこれからを自ら考え、決断する。そして全く知らない地域に飛び込み、新しい人との出会いの中で自分自身と向き合っていく。その経験を通して、意志ある若者を育んでいきたいと思っています。

 また、もう一つ目を向けているのが地方の可能性と課題です。
 私たちは、日本の未来の縮図が地方の今にあるのではないかと考えています。地方に残る共感、コミュニティ、贈与などの文化、伝統は、日本だけでなく世界の未来への可能性だと考えています。
 一方で、東京一極集中が進み、地方の少子高齢化や一次産業の衰退、貧困や格差の拡大などの課題が今まさに起き、地域の持続可能性が低下しています。

 そこでキーになるのが「学校(高校)」ではないかと我々は考え、この地域みらい留学の活動を始めました。
 高校が魅力的になっていくことにより、進学する若者が増え、地域で学び成長し、その意志を持った若者がさらに地域を魅力的にしていく……。つまり、地域が魅力的になっていくことと、高校が魅力的になっていくこととほぼ等しいと考えています。

 地域みらい留学を通して、「意志ある若者の育成」と「地域・社会づくり」という2つをテーマに寄与していきたいと思っています。
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 北海道美幌高等学校

地域みらい留学の本質的な価値を伝え、共感の輪を広げていきたい

 「意志ある若者の育成」と「地域・社会づくり」。この2つの目的を達成するために、私たちが担っている役割は大きく3つあります。

 ①地域みらい留学の参画校の魅力を伝えていくこと
 様々な地域の特色ある学校の魅力を、まずは保護者や中高生に知ってもらえるよう、テーマ別学校説明会や学校個別説明会を通してご紹介しています。

 ②地域みらい留学をすることの価値を、留学経験者や在校生のストーリーを通して届けていくこと
 説明会で興味を持ってくれた方にはさらに、経験者のトークイベントや相談会という場をご用意しています。
 そこで地域みらい留学のイメージをより明確にし、留学に際しての不明点や不安を払拭していただくことで、モヤモヤを解消し”意志”へと変えていくきっかけをつくりたいと考えています。

 ③地域みらい留学の価値を見える化し、地域みらい留学に共感してくれる人の数を増やすこと
 多くの方に地域みらい留学のことを知っていただき、その価値を知ってもらえるよう、共感の輪を広げたいと考えています。

 新型コロナウイルスの感染拡大からもわかるように、私たちは1年先に何が起こるのか予測しづらい時代を生きています。不確かな未来を前にして、自分たちで社会を創ることの重要性は高まっていると考えられます。

 また、地域みらい留学へ参画している学校や地域は、生徒の成長はもちろん、都道府県外の生徒募集を通して、地域を活性化・魅力化することを目的にされていることが多いです。
 都道府県外から生徒が入学することで、その若者が地域で成長し、地域が活性化していきます。

 県外生徒を受け入れ、高校を起点に町の未来と生徒の未来を重ね合わせながら、地域や学校の魅力化づくりの一助になっていきたいと考えています。(連載第2回へつづく)

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