【編集長の視点】トヨタ自動車は業績上ぶれ期待を高めて売られ過ぎ修正買いが増勢

2021年10月13日 09:48

【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】

■分割権利落ち後安値から4連騰、円安・ドル高進行で業績上ぶれ期待強める

 トヨタ自動車<7203>(東1)は、今年10月8日につけた株式分割の権利落ち安値1818円から底上げしている。11日の為替相場(ロンドン)で、一時1ドル=113円と2018年12月以来、約2年10カ月ぶり、同じくユーロも1ユーロ=131円台と3カ月ぶりの円安・ドル高水準となったことから、為替感応度の高い同社株の業績上ぶれ期待を高め売られ過ぎ修正買いが増勢となった。株式需給的にも、分割の権利を取った投資家の分割株式売りが一巡し、信用取組も売り残・買い残とも増加し厚みを増していることが買い手掛かりとなっている。

■1ドル・1円の為替感応度は400億円で想定レートは1ドル=105円

 為替相場は、前週末8日の米国の9月の雇用統計発表以来、平均時給が市場予想を上回り原油価格の上昇も加わりインフレ懸念を強め、FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の縮小)が早まるとして急速な円安・ドル高となっている。同社の為替感応度は、1ドルが1円変動すると営業利益が400億円、1ユーロが同じく1円変動すると70億円とされており、今2022年3月期の為替想定レートが1ドル=105円(前021年3月期実績106円)、1ユーロ=126円(同124円)としているだけに、輸出採算が改善するとともに為替変動益の影響が業績に大きくプラスとなる。前期は円高・ドル安で2550億円のマイナス影響となっただけに、様変わりとなる。

 同社の今2022年3月期業績は、営業収益30兆円(前期比10.2%増)、営業利益2兆5000億円(同13.8%増)、税引前利益3兆1100億円(同6.1%増)、純利益2兆3000億円(同2.4%増)と営業収益、営業利益は増収増益転換、税引前利益と純利益は続伸が予想され、純利益は前期に続く過去最高更新となる。今年8月、9月に半導体部不足やコロナ禍による東南アジアからの部品供給のサプライチェーン問題で8月~10月の生産計画を見直し、今期の車両生産台数が期初予想の930万台から900万台程度に減少するが、業績は期初予想を達成するとしており、円安・ドル高メリットが業績上ぶれ要因になる可能性が大きい。

■分割権利落ちの理論価格を下回り信用取組も2倍台と厚み

 株価は、今年8月に同時発表した今期第1四半期のV字回復業績と株式分割(1株を5株に分割、基準日9月30日)、自己株式取得(取得上限株式数4100万株、上限取得総額2500億円)によるトリプル効果で再度1万円大々台に乗せ、生産計画見直しで9661円まで調整したが、株式分割の権利取りで上場来高値1万4600円まで買い進まれ1万385円で分割権利を落とした。落ち後は、理論価格をクリアする落ち後高値2080.5円をつける場面もあったが、全般相場の急落とともに分割権利落ち後安値1818円まで調整、出直りを窺っている。PERは12倍台と割安で、株式需給的にも1株が5株となった投資家の分割株式売りが一巡し、落ち後の急落で信用売り残が増加し信用取組は2.01倍と厚みを増している。まず分割権利落ち後高値を奪回し、分割権利落ち埋めに発進しよう。(日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集長・浅妻昭治)

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