TACは調整一巡、22年3月期大幅営業増益予想

2021年10月12日 08:48

 TAC<4319>(東1)は「資格の学校」を運営し、新事業領域への展開も強化している。教育事業では事業環境の変化を見据えた新サービス提供を推進し、出版事業では高等学校商業科教科書を発刊して事業領域を拡大する。22年3月期は大幅営業増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は急伸した9月の戻り高値圏から反落の形となったが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお11月5日に22年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■「資格の学校」を運営

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。

 21年3月期の構成比(調整前)は、売上高が個人教育事業57%、法人研修事業21%、出版事業20%、人材事業2%、営業利益が個人教育事業▲35%、法人研修事業62%、出版事業70%、人材事業2%だった。

■教育事業は事業環境変化を見据えて新サービスも展開

 21年3月期の教育事業受講者数は、20年3月期比0.7%増の20万8587人(個人が4.7%減の12万68人、法人が9.1%増の8万8519人)となった。

 教育事業の分野別売上高構成比は、財務・会計分野が20.2%、経営・税務分野が15.6%、金融・不動産分野が22.5%、法律分野が6.8%、公務員・労務分野が22.8%、情報・国際分野が7.2%、医療・福祉分野が1.3%、その他分野が3.6%だった。21年3月期は会計士が11.7%増、マンション管理士が13.4%増、建築士が25.4%増などとなり、財務・会計分野、金融・不動産分野の構成比が上昇した。

 新型コロナ収束後の事業環境変化を見据えて、オンライン講座の実施、カリキュラムの見直し、新たなサービスの提供などにも取り組んでいる。21年3月には「TACテストセンター」サービス開始を発表した。日本全国の主要都市に直営校舎を持つ強みを生かして、大人数の試験会場になり得る教室や、個人で受験できる個別ブースを試験用として貸し出すとともに、試験を実施するために必要となる総合的なサービスを提供する。

■出版事業は事業領域拡大

 出版事業はTAC出版と早稲田経営出版の合算売上高(20年実績でTAC出版が4億34百万円、早稲田経営出版が81百万円、合計が5億16百万円)で業界15位規模となった。

 さらなる事業拡大に向けて、既刊の「SPI3の教科書」に加えて、就活書「これさえあれば。」シリーズ全5点を刊行する。

 また検定教科書分野への事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)を発刊する。全国の高等学校での採択の後、22年4月から全国の商業学校で使用される。さらに高校2年生、3年生で使用する会計分野の強化についても、文部科学省への検定申請を行い、ラインナップ拡充を推進する方針だ。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

■22年3月期大幅営業増益予想

 22年3月期の連結業績予想は売上高が21年3月期比3.8%増の205億円、営業利益が48.3%増の6億円、経常利益が10.6%減の5億78百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.3%減の3億80百万円としている。配当予想は1円増配の6円(第2四半期末3円、期末3円)である。

 新型コロナウイルスの影響で不透明感が強いが、資格試験・検定試験等の多くが予定通りに実施される見込みであり、増収・大幅営業増益予想としている。経常利益と親会社株主帰属当期純利益は、前期計上の助成金収入や受取補償金が剥落して減益予想としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比12.4%増の57億36百万円、営業利益が21.4%増の6億22百万円、経常利益が22.5%増の6億28百万円、親会社株主帰属四半期純利益が23.6%増の4億32百万円だった。

 個人教育・法人研修事業において新型コロナウイルスの影響が和らぎ、出版事業の拡大も寄与して大幅増収増益だった。セグメント別の売上高(前受金調整前の現金ベース売上高)は、個人教育事業が13.9%増の26億23百万円、法人研修事業が28.3%増の11億47百万円、出版事業が37.6%増の11億41百万円、人材事業が18.3%増の1億44百万円だった。

 受講者数は個人が前年同期比23.7%増の4万4987人、法人が6.9%増の3万1049人、合計が16.2%増の7万6036人だった。分野別に見ると、財務・会計分野が26.3%増、経営・税務分野が32.3%増、金融・不動産分野が15.4%増、法律分野が33.2%増、公務員・労務分野が11.8%増、情報・国際/医療・福祉/その他分野が0.7%増だった。各分野とも順調だった。

 なお第1四半期から収益認識に関する会計基準を適用し、出版事業における返品の可能性のある取引について計上方法を変更している。これによって、従来基準に比べて売上高が72百万円増加、売上原価が30百万円増加したが、従来から売上総利益相当額について返品調整引当金を計上していたため、差引売上総利益以下の各段階利益に与える影響はないとしている。

 通期予想は据え置いて、新型コロナウイルス感染状況に応じた臨機応変な対応、新たな売上獲得や新たな事業領域への挑戦、オンライン受講増加に伴う教室床面積最適化と校舎賃借料の適切なコントロールなどを推進して大幅営業増益予想としている。季節要因で下期は赤字となる傾向があるが、通期ベースでも収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は急伸した9月の戻り高値圏から反落の形となったが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。10月11日の終値は243円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS20円54銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS313円88銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約45億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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