中小企業、原価上昇し売上は回復せず、利益確保が課題 資金繰りも悪化

2021年10月6日 07:39

 コロナ禍が長期化する中、相次ぐ緊急事態宣言の発出などの影響で飲食業や宿泊業を中心に経営体力を消失し倒産が増勢を強めている一方で、ウイズコロナに適応し業績を持ち直している企業も見られ、業種・業態によりバラツキが見られる。コロナ禍で打撃を受けている業種は個人向けサービス消費関連が中心だが、経済全体として回復基調の中、仕入れ原価の上昇が始まっており、川下企業を中心に、価格転嫁が難しく、利益確保が課題となっているようだ。また、昨年2020年は資金繰り支援策が奏功し、企業倒産は歴史的な低水準を記録したが、今年に入り中小企業の借入難易度は悪化に反転し、資金繰りの問題も発生しそうだ。

 9月30日、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が「中小企業景況調査(2021年7-9月期)」の結果を公表している。これによれば、中小企業の7-9月期の業況判断DIは全産業でマイナス28.4、前期比2.6ポイントの減少と2期ぶりの低下となり、産業別では全産業で低下したものの、業種別では製造業、サービス業など一部の業種で上昇した。

 原材料・商品仕入単価DIは全産業で35.4、前期差6.7ポイントの増加と後退局面が底を打った直後の20年7-9月期以降5期連続の上昇となっている。「原材料・商品仕入単価」と「採算」の両方に回答した1万7550企業のうち「原材料・商品仕入単価」が上昇し「採算」も悪化したと回答した企業は前期の2754企業から3492企業となり、全ての産業で前期より増加しており仕入れ原価上昇の中で利益確保が課題となっているようだ。産業別に採算DIの前年同期比を見ると、製造業で21.0%減、建設業27.1%減、卸売業25.3%減、小売業46.0%減、サービス業38.6%減と川下での採算悪化が目立つ。

 借入難易度DIは長期資金が全産業でマイナス7.1、前期差は1.9ポイントの減少と4期連続でマイナス幅が拡大、同じく短期資金についてはマイナス4.6と前期差1.1ポイントの減少と3期連続のマイナス幅拡大だ。産業別には長期資金が製造業でマイナス4.1、非製造業でマイナス8.2、短期資金で製造業がマイナス0.6、非製造業でマイナス6.1と非製造業での悪化が目立つ。20年は、後退局面底打ち後、コロナ資金繰り支援も相まって借入難易度は大幅に改善したが今年に入り非製造業を中心に再び悪化している。原価上昇による採算悪化の中、追加的な支援が必要なようだ。(編集担当:久保田雄城)

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