2021年ノーベル生理学・医学賞、温度と触覚の受容体を発見した2氏が受賞
2021年10月6日 07:31
headless 曰く、 2021 年のノーベル生理学・医学賞は米カリフォルニア大学のデービッド・ジュリアス氏と、米ハワード・ヒューズ医学研究所のアーデム・パタプーチャン氏 (レバノン出身) が共同受賞した。授賞理由は温度と触覚の受容体の発見 (プレスリリース)。
1990 年代後半、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンが痛みの感覚を与える仕組みを研究していたジュリアス氏は、同僚とともに数百万の DNA フラグメントから細胞をカプサイシンに反応させる単一の遺伝子を特定。さらなる実験により、この遺伝子がこれまで知られていなかったイオンチャンネルタンパク質をコード化することが判明し、発見されたカプサイシン受容体は後に TRPV1 と名付けられた。その後ジュリアス氏は TRPV1 が痛みを感じる温度で活性化する熱感知受容体であることに気付く。TRPV1 の発見はさらなる温度感知受容体の解明を導く重大なブレイクスルーとなり、ジュリアス氏とパタプーチャン氏はそれぞれ別にメンソールを用いて冷たさを感知する受容体 TRPM8 を特定した。
パタプーチャン氏は機械刺激を触覚や圧力として感知する受容体も特定しようとしており、個別の細胞をマイクロピペットで突くと測定可能な電気信号を発する細胞株を発見。機械刺激により活性化する受容体をイオンチャンネルだと仮定し、それをコード化する遺伝子を特定した。発見されたイオンチャンネルは Piezo1 と名付けられ、同様の働きをする第 2 のイオンチャンネル Piezo2 も特定される。その後の研究で Piezo2 が触覚感知に欠かせないものであることや、固有需要として知られる体の姿勢や動きの感知に重要な役割を担うことが判明する。また、Piezo1 と Piezo2 が血圧や呼吸、膀胱の制御など、生理学的に重要なプロセスを調整することも判明している。
2 氏の研究成果は我々が周囲の環境を認知・順応する仕組みに関する知見をもたらし、慢性痛を含む幅広い疾病の状態に対する治療法の開発に用いられているとのことだ。