理研ら、高温超電導接合実装のNMRで2年間の永久電流運転に成功 世界初
2021年9月28日 17:45
理化学研究所、科学技術振興機構(JST)などの研究グループは24日、高温超電導線材の超電導接合技術を実装したNMR装置(核磁気共鳴装置)について、約2年間の永久電流運転に成功したと発表した。これまでは、数日間の永久電流運転の例しかなく、約2年間に及ぶ永久電流運転の例は世界で初めてだという。
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なお、永久電流とは、超電導コイルを半永久的に流れ続ける電流のことをいう。
■高温超電導線材とは?
超電導とは、物質を一定の温度にまで冷やすと、電気抵抗が0になる現象をいう。
この一定の温度には2つある。液体ヘリウム温度(-269度)と液体窒素温度(-196度)の2つだ。そしてそれぞれ、液体ヘリウム温度で超電導状態になる線材を低温超電導線材、液体窒素温度で超電導状態になる線材を高温超電導線材という。
超電導コイルはこれらの線材を巻いてつくられる。
ところで、低温超電導線材を冷やすために使われる液体ヘリウムは、希少で高価だ。一方、高温超電導線材を冷やすために使われる液体窒素は安価である。しかも、高温超電導線材は液体ヘリウム温度まで冷やすと、低温超電導線材よりもはるかに強い磁場を発生させることができる。
そのため高温超電導線材の幅広い実用化が期待されている。
超電導コイルにするためには、この高温超電導線材を超電導接合しなければならない。ところが、高温超電導素材は脆く扱いが難しいため、その超電導接合には技術的な困難が多い。
■2年間の永久電流運転に世界で初めて成功
研究グループは、2018年に高温超電導線材の超電導接合技術(住友電気工業などが開発したiGS接合)を実装したNMR装置(核磁気共鳴装置)を開発。400メガヘルツの磁場で約2年間の連続運転をおこなった。
その結果、長期間に渡って、安定的な永久電流が維持されることを確認。磁場の変化率は、2018年の1時間当たり10億分の1から、2年目にはわずか1時間当たり300億分の1にまで減少したという。これは、外部からの電流の補給なしに300万年に渡って磁場を維持できるレベルだ。
研究グループでは、今回の研究成果は高温超電導接合を実装したNMR装置の実用化に向けて、重要な成果であるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)