飲食倒産は小康状態もコロナ関連では増大 宣言地域外で増加傾向
2021年9月15日 08:20
コロナ禍1年半が経過し、企業の経営体力は限界に達しつつある。1年目の2020年中は各種資金繰り支援が奏功し、企業倒産件数は歴史的な低水準で推移した。しかし、今年に入り過剰債務の問題が浮上するなど事業の再建それ自体が課題となり、コロナ関連倒産は増勢を強めている。中でも相次ぐ緊急事態宣言の発出等で強い営業制限を課せられた飲食業での倒産増加が目立ち、特に酒類提供禁止の影響が直撃した居酒屋の倒産が顕著だ。
飲食業ではコロナ以前から人手不足による人件費高騰などで労務関連倒産が増加傾向であったが、コロナ禍に入った昨年から人手不足も緩和され、また資金繰り支援も充実したために業界全体の倒産は減少に転じ、現在は小康状態にある。しかし、21年1-8月のコロナ関連倒産では前年同期比で急増となっており、特に宣言発出やまん防適用の地域外での息切れ倒産が増加傾向となっている。
9月6日、東京商工リサーチが「飲食業(1-8月)の倒産」レポートを公表している。これによれば、21年1月から8月における負債1000万円以上の飲食業倒産の累計は447件で前年同期比23.3%の減少となっている。しかし、このうちコロナ関連倒産は204件で飲食業倒産全体に占める割合は45.6%と半数近くに達し、20年の1月から8月までの累計62件と比較すると225.8%の増加と3.3倍に増加している。
業種別にみると、「酒場、ビヤホール(居酒屋)」は倒産全体100件のうちコロナ関連倒産が62件で全体の62.0%を占めている。また、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」は42件で前年同期比5.0%増とコロナ関連以外も含めた件数でも唯一増加した。レポートは「酒類提供が経営の柱になっている業種では、営業時間の短縮に加え、酒類提供の制限が深刻な打撃を及ぼしていることがわかる」と指摘している。
飲食業全体における倒産件数の前年同期比を都道府県別にみると、増加が19府県、減少が24都道府県、同数が4県となっているが、増加した19都道府県のうち、青森、岩手、山形、長野、福井、和歌山、鳥取、島根、山口、大分の10県は8月末時点で宣言やまん防の対象地域外である。レポートでは「全国的に感染拡大が続くなかで、宣言地域外では協力金などの支援が乏しく、コロナ禍での来店客数の減少や客単価の低下などの影響が大きくなっているようだ」と分析している。(編集担当:久保田雄城)