【どう見るこの相場】「2050年カーボンニュートラル」の政策継続性は木材関連株の株高継続性
2021年9月14日 07:39
【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】
■再生エネルギー関連株や原発関連株が動意付き、先取りの動きも
菅義偉人首相が、自民党の総裁選挙に立候補しないと表明した9月3日以来、株価が急騰し、日経平均株価が、1800円超高して3万円大々台を回復し、東証株価指数(TOPIX)に至っては、年初来高値を更新した。しかも、連日で東証1部の売買代金が3兆円を超える大商いとなり、前週末10日には東証第1部銘柄の約9割が値上がりする全面高であった。
この急騰相場を前に、自らの退陣が大歓迎高相場の引き金になるとは、菅首相の心中は複雑でいかばかりか、不本意で心穏やかではいられまいと勝手に忖度した。ところが、9月9日の記者会見は、いつもの淡々とした口調の緊急事態宣言の延長の説明が大部分で、退陣については極くわずか、新聞の見出しになるような発言はなかった印象だ。一国の総理にまでのぼり詰めた政治家らしい自負も聞き取れず、いささか不穏当だが、1年で最高権力者の座を譲らざるを得ない泣き言や恨み言めいた本音も響いてこなかった。
記者会見に何を期待していたのかと問い詰められそうだが、ということからも、立候補者の顔ぶれが揃いつつある自民党の総裁選挙は、総裁の座を射止めるポイントは、新型コロナウイルス感染症対策はもちちろん、政治姿勢としても「アンチ菅」ということになりそうだ。上から目線の強権政治ではなく、国民の目線と合わせて国民の声を聞く力、話す力、共感する力、納得してもらえる力が求められており、総裁選挙でなお派閥の力学が大手を振るい、この基準をクリアしたと納得してもらえる新総裁が選ばれなければ、来るべき任期満了後の総選挙の顔にはなり難く、株価が期待している自民党の大敗懸念の後退も大勝の可能性も危うくなるはずである。
ただ菅首相の政治的な「レガシイ(遺産)のなかでも、後継総裁・総理に継承され政策継続性が期待されるものもある。その最たる政策は、「2050年カーボンニュートラル」だろう。というのも、総裁選挙の結果で誰が新総裁・新総理になろうが、その国際舞台への初デビューが、今年10月30日、31日にイタリア・ローマで開催予定の20カ国・地域(G20)首脳会議になる政治スケジュールになっているからだ。
菅首相も、昨年11月にテレビ会議形式で開催されたG20リアド・サミットで「カーボンニュートラル」への決意を国際公約と表明してアピールした。もう一つの「菅レガシイ」とされる携帯料金の引き下げは、退陣表明と同時に「官製値下げ」圧力が緩和するとして大手通信キャリア株が、買われ動意付く皮肉な結果となったが、これと異なり「カーボンニュートラル」は、後継内閣の「一丁目一番地」の目玉政策であり続けることになる。現に株式市場では、総裁選挙の各候補の立候補表明の記者会見とともに再生エネルギー関連株や原発関連株が動意付き、先取りの動きがみられた。
■「カーボンニュートラル」に別のカタリスト(材料)を上乗せして関連株をリサーチ
そこで今週は、「カーボンニュートラル」に別のカタリスト(材料)を上乗せして関連株をリサーチすることとした。浮上したのは、木材関連株である。そのカタリストの一番目は、10月1日に脱炭素社会を目指すグリーン戦略の一角を担う「公共建築物木材利用促進法の一部を改正する法律」が施行され、10月を「木材利用促進月間」、10月8日を「木材利用促進の日」としてキャンペーンが予定されていることである。同改正案は、今年6月11日に可決・成立し、木材利用を公共建築物だけでなく民間建築物までに拡大、木造の高層建築物まで普及させることを目的にしている。
カタリスト(材料)の2番目は、同じく今年6月15日に閣議決定された「森林・林業基本計画」である。今年春から強まった外材の価格高騰、木材不足の「ウッド・ショック」にも対応して国産材の自給率を高めるべきとして、同基本計画では、森林、林業、木材産業による「グリーン産業」を目指し、建築物向けの国産材の供給量を2019年の約1800万立方メートルから2030年に約44%増の2600万立方メートルに増加させるために、再造林や複層林化の森林資源の適正な管理・利用など5つの柱を推進する。いわば木材利用促進法改正法が、需要サイドの住宅建材メーカー株、合板メーカー株、木材商社株などへの呼び掛けとすれば、基本計画は、供給サイドの林業産業、木材産業へのテコ入れともなるものだ。
木材関連株は一部、住友林業<1911>(東1)やウッドワン<7898>(東1)などが、今年8月安値から底上げに転じている動きはあるが、この第1、第2のカタリスト(材料)とのシナジー効果が顕在化すれば、関連銘柄は多様化・重層化し、ハウスメーカー、住宅建材メーカー、合板メーカー株だけでなく、林業機械株や製材・木工機械株、「地産地消」のエネルギーで地域活性化にもつながるバイオマス発電株、さらに再生エネルギー関連ではこのところ特異人気のペロブスカイト太陽電池株などへの注目度が一層高まる展開になるはずだ。
前週末10日の米国市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、4日続落して271ドル安となった。このところの東京市場は、米国離れで独自の強調相場を続けているだけに、週明けも米国株安を問題外として値幅効果の大きい主力株買いが続く可能性もあるが、木材関連株の株高継続性に期待して待ち伏せ買いをするのも一法となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)