「2025年問題」で地方の不動産価値が下落するリスク 資産運用にも注意を

2021年9月7日 07:59

 2025年問題が直前に迫った。つまり、800万人を超える団塊の世代が75歳の後期高齢者になるのだ。少子高齢化と人口減少が進む中、団塊の世代が所有する戸建住宅や分譲マンション、別荘などの不動産財産の相続ラッシュが始まる。それによって、空き家の売却件数が増加する公算が高い。しかも新築による住宅供給量は減少する気配がない。コロナ禍の中で停滞する建築計画も、ワクチンの接種率が高まれば再び動き始める気配だ。

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 オリンピック需要を狙った不動産投資熱も下がり始める現在、これら諸事情によって肝心の不動産購入ニーズが供給量を下回ることは確かだろう。地域によっては不動産価格の大幅な下落が始まるのではとの見方が強い。とくに生産緑地法のより税優遇がなされてきた土地は、2022年度より営農義務期間の30年を終える農地が全体の約8割に及ぶとされる。これらは徐々に住宅用地などとして売却されることになろう。

 2025年問題では社会保障費が拡大する点も示唆している。厚労省のデータでは、2018年度の社会保障費が約120兆円に対し、2025年度は140兆円と20兆円の増額が予想されている。これは限られた財政が負担しきれる増額幅ではないことから、各自治体で公共サービスの大幅縮小が始まるともある。

 これまで市町村合併の中で、少子化が顕著な地域では保育園や小中学校の統廃合が進み、過疎化が進む地域では病院や高齢者施設でさえ廃止する傾向にある。さらに各自治体はコンパクトシティ計画(立地適正化計画)によって、生活エリア・経済活動エリアの縮小化を推し進めている最中だ。この対象外エリアにある不動産は利便性が低くなり、将来的に不動産の利用価値が下がることになるだろう。

 そこで今後の空き家対策だが、売却したいと考える不動産い関しては、2025年問題が顕著化する前に売却する選択肢を意識しておくべきだろう。先に述べたように、地域によっては大幅な価格下落の可能性がある。下落リスクが高いのは以下の地域だ。

・コンパクトシティ(立地適正化計画)外
・災害危険区域(土砂・津波・地震など)
・市街化調整区域・生産緑地

 なお都市部では、公示価格を始め、不動産価格が下落しにくい条件にあるためじっくりと空き家対策を計画することができる。建て直しやリフォーム、賃貸への利用など、資産価値を高める資産運用の方法が工夫できるだろう。とはいえ、今後不動産価値を維持できるエリアはかなり限られてくることも念頭に置いて計画を立てておきたい。

 このように、今後の不動産を利用した資産運用は事前の情報収集を徹底していきたい。その1つに2025年問題があり、不動産を所有する高齢者の動向に注意を払わなければ、思わぬ損失を被りかねないと留意していただきたい。(記事:TO・記事一覧を見る

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