バルチック海運指数から見える海運株の好調

2021年9月4日 08:48

●海運株が好調

 日経平均が伸び悩む中、日本の海運株が好調である。商船三井、川崎汽船、日本郵船などが軒並み高騰している。決算も良く、商船三井は配当金を150円から550円に増配するなど、投資家にとっても魅力的な投資先となっている。

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 新型コロナウイルスのワクチン効果による経済再開への期待感だけでなく、運賃の上昇、業績自体も回復しているなど、実体のともなった好調とも言える。

 海運株への影響が大きいバルチック海運指数(BDI)も好調で、4000を突破し2009年11月以来の高値水準を記録した。世界的に海運への需要が高いことを示しているが、今後も好調は持続できるのか?

●バルチック海運指数(BDI)とは?

 ロンドンのバルチック海運取引所が算出・公表している、外航不定期船運賃の総合指数であり、毎営業日のロンドン時間13時に公表される。1985年1月4日を1000として算出している。

 つまり、現在は1985年の基準から4倍ということになる。端的に言えば、船の輸送コストを示す指数であり、世界の需給動向を示す指数として重視されている。2008年リーマンショック時にも、危機を察知した指数として知られている。今年3月にはスエズ運河の座礁事故で40%近くの高値を記録した。

 鉄鉱石、石炭、穀物で6~7割を占めるが、最大の輸入国は中国で、中国の景気動向を計る指数としても注目される。

●死角はないのか?

 好調な業績を受け、海運株の予想株価も引き上げられている。

 忘れられつつあるが、数年前までは海運不況と言われていた。

 リーマン前の好況による船舶バブルがはじけ、逆に船余りになり、海運各社は運賃の値下げを余儀なくされた。日系海運業もリストラし、好調だった韓国の韓進海運も2016年に破たんするなど、造船業も撤退・再編が相次いだ。輸送船舶の大型化により、効率化が進んだことで供給過剰となったとも言われている。

 コロナ禍による巣ごもり需要、中国の景気回復などが追い風となった海運業だが、バルチック海運指数も、リーマンショック前までは回復しておらず、まだ道半ばである。

 バルチック海運指数がさらに上昇すれば、あらゆる物価の上昇は避けられず、FRBも利上げを前倒しにせざるを得ない状況になる可能性もある。となれば、株価にも大きな影響を与えることになるため、バルチック海運指数は上がりすぎても手放しでは喜べないかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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