新型コロナウイルスが、大学の学長人事と新聞社の生死にまで、猛威を振るっていた!
2021年8月14日 08:42
1月25日、北海道の旭川医科大学(旭川医大)の役員会は、学内情報を漏洩したことなどを理由に、旭川医大附属病院の古川博之院長を解任した。学内情報が具体的に何を指しているかは、明らかにされていない。
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発端と思われるのは、2カ月ほどさかのぼる昨年11月、旭川市内で発生したコロナ患者の受け入れを進言した古川院長(当時)は、受け入れに反対した旭川医大の吉田晃敏学長から「受け入れてもいいが、代わりにお前が辞めろ」と言われたことだ。医療体制の危機が喧伝されていた時期に、医療の手を差し伸べようとする病院長に返す言葉としては、随分底意地の悪いパワハラ発言だ。既に双方に感情的行き違いが発生していたことをうかがわせる。
吉田学長はコロナ患者の受け入れを不許可とした理由を、「院内の体制不備など」としたそうだが、昨年11月17日に開催された学内の会議では、「コロナを完全になくすためには、(クラスターを発生させた)あの病院をなくすしかない」と発言したと、12月の文春オンラインで報じられた。コロナ患者の受け入れを拒んだ際の発言も、クラスターを発生させた原因が病院にあるかのように揶揄する発言も、相当個性的な発想を口にする人物であるようだ。その後(文春の記事が出た後)吉田学長は「不適切な発言であることを反省している」と、コメントを出している。
以後、旭川医大では吉田学長の解任を求める署名活動が行われるなどのお家騒動が勃発し、吉田学長解任の是非を審査する学長選考会議が俄かに注目を集めた。
学長選考会議が開催された6月22日に、旭川医大内の立ち入り禁止フロアに侵入して「会議の様子をスマホで録音していた」として、建造物侵入罪で現行犯逮捕されたのは、今春北海道新聞社に入社して3カ月目の新人女性記者だ。
入社早々の新人記者が自分の意志で立ち入り禁止フロアに侵入して、会議の様子を録音することは有り得ないと考えるのが社会の常識だろうが、のちに北海道新聞社がまとめた「社内調査報告」では、誰が指示を出したのかは「はっきりしません」で済まされている。
当時北海道新聞社は逮捕された女性記者を含めて、4名のチームを旭川医大に送り込んでいた。ところが、3名のうちの誰が女性記者に指示を出したのかが、「はっきりしない」のだそうだ。日頃、行政や警察の説明の曖昧さを厳しく指弾する新聞社自体が、自社内で発生した不祥事の責任者を3名の中から割り出せないで「社内調査報告」としてまとめたという、信じられないような話だ。
「社内調査報告」を真に受ければ、右も左も分からない入社3カ月目の新人女性記者に全ての責任があることになるから、このことを評して「北海道新聞は死んだ」と表現する人もいる。
新学長の選考は12日に公示され、9月に候補者の推薦受付が始まり、11月には新学長が決定する運びだ。
新型コロナは人間の生死を左右するのみならず、大学の学長を解任に追い込み、基礎疾患のある新聞社をも死に至らしめる恐ろしいウイルスだったようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)