日本の共働き夫婦に急速な変化をもたらしたテレワーク。新たなパートナーシップを築くために必要な力とは(連載第3回)
2021年8月6日 15:53
(連載第3回)2020年の春、突然始まったテレワーク。このテレワークという新しい働き方は、これまで仕事も家庭も大切にしようと過酷な共働きを続けてきた私たちにとって、ピンチでもありチャンスでもあるのではないでしょうか。本連載では「家族のそばで仕事をする」という経験が共働き夫婦にもたらした変化を、実際のエピソードを通して紹介しています。ご自身の働き方・生き方の本質を見つめ直し、ぜひ未来について考えてみてください。本連載は4回を予定しています。ご興味いただけた方は記事最後に紹介している書籍『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク』もぜひご覧ください。
本連載は、書籍『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク−進化を止めるな!テレワークで見つけた「これからの私」−』(2021年5月発行/著者:ikumado)の一部を、許可を得て抜粋・再編集し収録しています。
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■今こそ、男女分業への思い込みを解消する!
緊急事態宣言によって突然始まったテレワーク。これまで仕事も家庭も大切にしようと過酷な共働きを続けてきた私たちにとって、ピンチでもありチャンスでもあるのではないでしょうか。
本書では、「家族のそばで仕事をする」という経験が共働き夫婦にもたらした変化を、実際のエピソードを通して紹介しています。
いま仕事と家族の関係に悩みながら子育て中の方、そして企業で人事部やマネジメント職にいらっしゃる方にも参考にしていただける内容が詰まっています。
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夫婦の時間の圧倒的増加とパートナーシップの顕在化
テレワークを考える3つのテーマの2つめは、「パートナー」です。
今までの日本のパートナーシップは、夫婦共にフルタイム勤務であっても、妻側に子育てと家事の負担が大きいケースが大半でした。
しかし、今回のテレワーク勤務で、今までせいぜいお盆休みか年末年始の1週間しか一緒にいたことのない夫婦が、24時間1か月、家にこもって生活することになりました。
これは、日本の共働きパートナーシップにかつてない急速な変化をもたらしたのではないでしょうか。
今回は、ikumadoコミュニティの中で起こったケースをいくつかご紹介しながら、テレワークのポジティブな要素、ネガティブな要素について考えていきます。
ケース① 半日ずつ「子育て+料理」を担当。パートナーシップがフラットに
夫は秘書、妻は大学の教務、2歳の子供がいるご夫婦のケースです。妻のコメントコロナ前、夫は出社時に娘を送ってくれていましたが帰宅は遅く、私が保育園の迎えと料理・洗濯を担当。夫は帰宅後に食器洗い、部屋の片付けを担当していました。
コロナ禍で夫婦ともテレワークになり、当初は子育ての合間を見てなんとか仕事をしていましたが、お互いに仕事が回らなくなりました。
そこで、朝6時~12時までの6時間を私の仕事タイムとし、夫が子育てをし昼食をつくる。そして13時~19時までの6時間を夫の仕事タイムとして私が子育てと夕食をつくる、と1日を2つに分けて仕事時間を確保しました。集中して時間を確保できることで、ようやく仕事が回りだしました。
夫が在宅していることで、保育園の迎え後の家の状況(子育てと家事と持ち帰り仕事をすること)の困難さを実感してもらえました。その結果、テレワークでなくなっても休日や夜対応しなければいけない時には早く帰ってきてくれるなど、その変化が続いています。夫婦がチームワークで子育てと家事をする意識が前より強くなったと思います。
ただ、ネガティブな面としては、一度在宅でチームワークを組んでしまうと、緊急事態宣言が解除になって夫が出社するようになって、前の生活に戻ることにかえってストレスを感じてしまうことがあげられます。
子供を保育園に預けられない境遇を経験し、子育てと仕事を両立する難しさを実感しました。以前から感じていましたが、共働きの環境で夫婦が協同することの大切さを再度感じました。
また、効率的にパパとママで仕事と子育てと育児を分担しても、子供はパパともママとも遊びたいので、子供の近くにいても仕事で遊んであげられないテレワークの難しさを感じました。インタビューからの気づきこのように「子育て&家事」と「仕事」の担当を決め、時間で分けた夫婦はikumadoコミュニティで複数見られました。中には「夫と妻が交代でホテルに泊まり、缶詰になって仕事をした」というケースも!
コロナ前までは、保育園の「送り担当」が朝の時間を固定化され、「迎え担当」が夕方の時間を固定化されていました。私の終電は8年間17時25分でした。ところが、子供の送迎と通勤が無くなったために、どちらの親でもフレキシブルに育児ができるようになりました。そのため、日常生活では固定化していた役割分担が、いったんご破算になり、このご夫婦のような「半分分け」が可能になったのです。
また、片方の親が担当している時にも、もう片方が近くにいるためにフォローがしやすいことも、思い切った役割分担ができた一因でした。
「自分がいないと何が起こるかわからない」という責任感で、子供をパートナーに任せられない、というボヤキをよく聞きます。実際、新生児を車に置き忘れる親もいるぐらいですから、あながち根拠のない恐れでもないのです。
しかし、同じ家にいれば何かあった時には気づいて対処することができます。狭い家の中に親子全員がいることは、ストレスでもありましたがパートナーの支え合いが生まれ、パートナーシップがより堅固になったケースも多かったのではないでしょうか。
ケース② 妻の育児と家事の負担が増え、辛くなってしまった
夫はテレワークができない仕事、妻は調査会社の営業でフルタイム勤務、2歳の子供がいるご夫婦のケースです。妻のコメントコロナ前は、保育園への送りと料理が私、迎えと料理以外の家事は夫となっていて、かなり分担できていました。
コロナ禍、夫はテレワークができない仕事のため、緊急事態宣言が出ても休んだのは3日だけ。一方私は出社停止になり、9時~18時を勤務時間としてテレワークをすることになりました。
保育園は休みになったため、1日中子供と一緒に仕事をしつつ、掃除、洗濯も仕事の合間に私がやるようになっていました。夫はお風呂掃除のみという状態。
ある日夫が「コロナで身体がラクだなあ」と言うのを聞いて「この人は何を言っているんだろう?」と思いました。普段より家事をやっていないからだと気づいていないのだなと。
私は家にいると、ついできていない家事に目が向いてしまい、掃除をしたり洗濯をしたり、お皿まで洗ってしまっていました。また早く子供を寝かせたいために、自分で子供をお風呂に入れてしまうなど、やりすぎてしまっていた面もあると思います。
夫のその一言を聞いて、テレワークでも家事をしないようにしました。そうしたら分担は元の通りに戻って今に至っています。
自分がいつの間にか家事をしてしまっていたことに気づきました。また、自分が余計に家事をしても、夫はたいして気づいていないどころか「身体がラク」くらいにしか思っていないことに気づきました。物理的に家にいるからといって家事をやる必要はない、ということに気づいて、やらないことはやらないようになりました。
子供を預けられず、夫がいない状態でフルタイムの仕事をするのは本当に大変でした。にもかかわらず、同僚には「休みのようでラクだったでしょう?」と言われました。ほぼ女性がいない職場なので、こんな風に見えているのかと思うとがっかりしました。インタビューからの気づきこのご夫婦の場合は、片方がフル出社、片方がフルのテレワークとなったために、今まで2人とも出社していた時には頑張って分担していた家事育児が、いつの間にか女性に偏ってしまいました。
コロナ時のテレワークは、子供の面倒をみながら仕事をするという、むしろ出社していた時よりも過酷な状況でした。にもかかわらず、物理的に家にいるために目の前の溜まった家事が見えてしまい、思わず洗濯や掃除をしてしまった人も多かったのではないでしょうか。
特に、普段は夜に洗濯していた共働き家庭では、洗濯の誘惑が大きかったように思います。そこに太陽があるから干してしまうのです。
ただ、そこには「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」が大きく関わっていると考えます。晴れた青空を見て「洗濯ものを干したいなあ」と思う男性はどのくらいいるでしょうか(育休を取る男性よりは多いかも?)。どうしても「家事育児は妻の担当」という思い込みがあり、気になってしまうことが家事への関与を増やしてしまいます。
自分の意識にバイアスがあることを自覚し、あえて混沌には目をつぶり、パートナーの担当分はパートナーに任せることが必要です。青空を見上げながら、たまった洗濯ものをやりすごすのはストレスになることもあるでしょう。しかし、そのスルーする力が、共働きパートナーシップには必要なのです。
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緊急事態宣言によって突然始まったテレワーク。これまで仕事も家庭も大切にしようと過酷な共働きを続けてきた私たちにとって、ピンチでもありチャンスでもあるのではないでしょうか。
本書では、「家族のそばで仕事をする」という経験が共働き夫婦にもたらした変化を、実際のエピソードを通して紹介しています。
いま仕事と家族の関係に悩みながら子育て中の方、そして企業で人事部やマネジメント職にいらっしゃる方にも参考にしていただける内容が詰まっています。
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著者:千木良(堀添)直子
育休&共働きコミュニティikumado代表/株式会社COEO 代表取締役/ 2児の母。リクルートで育休を2回取得した際の社会との隔絶感を社会課題と感じ、2018年に「育休&共働きコミュニティ ikumado」を立上げた。2021年3月現在、500名のメンバーが参加し、週に2~3回のオンラインイベントが行われている。今後はチームでプロジェクト型の複業を担う事業で創業予定。国家資格キャリアコンサルタント。
著者:中村 友美
ikumado運営メンバー/中小企業向け営業企画支援 CLEAR WATERS代表 1児の母。日本放送協会(NHK)や大手広告代理店などでの会社員経験を経て、夫の仕事都合による海外移住を機にフリーランスに転向。海外での出産・育児で孤独感に苛まれていた際、ikumadoに出逢って救われる。2020年に帰国し、中小企業の営業・マーケティング・業務フロー構築を支援するCLEAR WATERSを設立。仕事の傍らikumado運営に携わる。
ikumado – 育休&共働きコミュニティ
子供が産まれても、社外のいろんなひとと自分軸の話をしたい男女が集まる参加無料のコミュニティです。イベントは主に「ZOOM」を使っていますので、自宅にいながら気軽に参加できます。内容は、キャリア、ビジネス、ワークライフバランスなど。共感いただける方、ぜひFacebookでつながりましょう! 元のページを表示 ≫