塩野義製薬、新型コロナ治療薬の治験を開始 経口摂取で重症化抑制
2021年7月27日 17:46
塩野義製薬は26日、これまで開発を進めてきた新型コロナウイルス感染症の治療薬(開発番号:S-217622)について、第1相臨床試験を開始したと発表した。22日に初回投与をおこない、特に安全上の問題は確認されていないという。
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■塩野義製薬が開発を進めてきた治療薬とは
塩野義製薬が開発を進め、今回第1相臨床試験入りした新型コロナ治療薬は低分子の経口抗ウイルス薬だ。
新型コロナウイルスが増殖するためには、3CLプロテアーゼと呼ばれる酵素が欠かせないが、今回の治療薬はこの3CLプロテアーゼの働きを選択的に阻害することで、新型コロナウイルスの増殖を抑える。
早期に使用することで重症化の抑制や症状の改善が期待できるという。
動物実験では、すでにウイルスの量を迅速かつ有意に低下させることが確認されている。
今回の臨床試験では、20歳から55歳までの健康な成人男性75人を対象に、服用時の体内動態、安全性、忍容性の確認などがおこなわれる。
新型コロナウイルスの抗ウイルス薬としては、すでにレムデシビルが国内で承認されている。レムデシビルは、アメリカの製薬会社ギリアド・サイエンシズ社がエボラ出血熱の治療薬として開発を進めていたもので、重症者に対して点滴により使用される。
■治療薬の社会的ニーズ
現在、日本も含め、新型コロナワクチンの接種が進んでいる。
だがたとえワクチンを接種したとしても、新型コロナの感染・発症を完全に防ぐことはできない。また、新たな変異株が登場した場合に既存のワクチンが有効であるという保証は必ずしもない。
そこでワクチンだけではなく、治療薬も必要となる。
特に、塩野義製薬が開発を進めてきた今回の治療薬は、「経口」治療薬であり、その利便性は大きい。感染初期に用いれば、新型コロナウイルスの増殖を抑えて、重症化を抑制し、症状を改善する効果が見込まれている。
ワクチンの開発では海外勢に後れを取ってしまったが、治療薬の開発では国内勢の奮闘に期待したい。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)