日立、社会イノベーション事業のグローバル展開により成長を目指す
2021年7月25日 07:58
日立製作所は7月14日、Lumada事業のデジタルポートフォリオ強化を目的として、米Global Logic(グローバルロジック)社の買収を完了したと発表した。グローバルロジックのIoTやAIと現場の制御・運用技術をつなぐ高度なデジタルエンジニアリングなどと、日立のLumadaを中心とするソリューション・サービス・テクノロジーを融合して、新たな価値の創出を目指す。
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日立は1910年、久原鉱業所日立鉱山の工作課として、小平浪平によって設立された。故障の多い輸入機械の修理を手掛ける中で、自前の技術で開発・設計を行う必要を痛感し、1920年「株式会社日立製作所」として独立。技術の日立として発展してきた。
2020年3月期の売上収益は8兆7,291億円。事業別の構成比は、IoT基盤Lumadaを中心とするIT事業が21%、電力・発電・運営などのエネルギー事業が12%、製造・物流・空調などのインダストリー事業が9%、鉄道・交通などのモビリティ事業が13%、家電、ヘルスケアなどのライフ事業が24%、その他事業が5%。またグループ上場子会社で、建設機材を扱う日立建機が8%、金属材料・部品・製品を扱う日立金属が8%を占めている日立の動きを見ていこう。
■前期(2021年3月期)実績
前期売上収益は8兆7,291億円(前年比0.4%減)、調整後営業利益は前年よりも1,667億円減の4,951億円(同25.2%減)であった。
調整後営業利益減少の要因としては、高度な送配電システムを行うABBパワーグリッド社買収に伴う無形資産償却の増加によりエネルギーが612億円、鉄道の不振によりモビリティが175億円、売上減によりインダストリーが91億円、画像診断関連の収益性悪化によりライフが48億円の減益であった。
上場子会社では、売上減により日立建機が439億円、日立金属が193億円の減益。また前期末に売却した日立化成分の減益が352億円であった。
一方、コスト構造の改善によりITが200億円、全社調整その他が45億円の増益であった。
■中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)による推進戦略
社会イノベーションのグローバルリーダーとして、2022年3月期売上収益9兆5,000億円(同8.8%増)、調整後営業利益7,400億円(同49.4%増)を目指して、次の戦略を推進する。
●1. 社会イノベーション事業のグローバル展開
生産性向上の日立ハイテク、送配電システムの日立ABBパワーグリッド(2020年7月統合)、自動車部品、EVの日立Astemo(2021年1月統合)を中核に、グローバルにビジネス基盤の効率化、共通化を推進。
●2.社会イノベーション事業をデジタルで強化
グローバルロジック社の買収で、顧客協創によるソフトウエアエンジニアリングの強化により、デジタルトランスフォーメーションの拡大。
●3.上場子会社の資本政策見直しによる事業ポートフォリオ変革
2020年4月の日立化成売却と2022年3月日立金属売却(予定)。
●4.地域密着による成長
地域ごとの環境、レジリエンス、安心安全ニーズに対応した地域戦略の推進。
製造技術の強化・開発から出発して、制御・運用技術と情報技術の強化により新たな価値を生み出し、社会課題の解決を目指す日立のイノベーションを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)