相場展望7月22日 米株急落は、「デルタ株」急拡大で景気悪化恐れ 急騰は、好業績発表で、景気堅調との見方に転換
2021年7月22日 09:12
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/19、NYダウ▲725ドル安、33,962ドル(日経新聞、NHK)
・下落率は▲2.09%と2020年10月28日以来の大きさで、ほぼ1カ月ぶりの安値。
・アジアでもインド型株感染拡大が続き、米国でも新規感染者数が6月の1万人台 ⇒ 7/16に3万人(7日平均)に迫り増加基調が鮮明化した。マスク着用の義務化など規制を再導入する自治体が増えている。
・景気に業績が影響を受けやすい銘柄が軒並み下落し、一時▲940ドル安となった。
・投資家のリスク回避姿勢が強まり、米国債に買いが入り、金利は1.1%台に低下。
・経済再開の恩恵で上げてきた映画・娯楽銘柄が安い。
【前回は】相場展望7月19日 日本株軟調の要因は、『政治リスク』の混迷 離れた外国人投資家を呼び戻すには、この解消必要
2)7/20、NYダウ+549ドル高、34,511ドル(日経新聞より抜粋)
・前日に▲700ドル超と今年最大の下落幅となった反動で、短期的な戻りを期待した買いが景気敏感株を中心に幅広く入った。
・米景気の強さと、企業業績の好調さを踏まえると、前日の市場の懸念は行き過ぎとの見方も出た。
・長期金利低下は景気減速のサインと受け止める投資家が多く、金利低下が一服したことも市場心理の改善につながった。
3)7/21、NYダウ+286ドル高、34,798ドル(日経新聞)
・米長期金利の低下一服を受けて、米景気の過度な懸念が薄れ、景気敏感株が買い直された。
・好決算を発表した銘柄が買われ、相場を押し上げた。
・長期金利の上昇で利ザヤ縮小の懸念が和らぎ、銀行株が上昇した。
・また、原油高で石油株が高かった。
●2.米株式の急落は「デルタ株」で景気後退懸念、反騰は「好業績発表」で懸念払しょくで
1)米国株の一時的下落の要因は、「デルタ株」急拡大で昨年の大幅な景気後退と、米国株急落を思い出したため。
2) 好決算発表で、長期金利低下が一服し、米景気は堅調に拡大するとの見方に転換した。
3)恐怖(VIX)指数も急伸から、平常に戻りつつある。
・7/19に22.50を付け、投資家心理を測るVIX指数は投資家心理型が高まった状態とされる20を上回った。
・7/20~21は米株式の上昇で、17.91に低下した。
4)金利低下とナスダック
・金利低下はハイテク株の多いナスダック総合には追い風となってきた。
・ところが、直近は金利が低下してもナスダックは下落するという逆転の流れになっていた。
この要因は、行き過ぎた長期金利低下が、変異種「デルタ株(インド株)」の感染急拡大で、米景気後退を示唆するものと受け止められたため。
・米長期金利低下が一服したため、景気後退懸念⇒景気堅調に転換したため、ナスダックは息を吹き返した。
5)注視されるのは、2年債vs10年債利回り差は縮小傾向にあること。
●3.米上院共和党は、超党派のインフラ投資法案1.2兆ドルを巡る採決の延期要求(ロイター)
1)法案を巡る協議は、財源確保で難航している。
●4.金利先物市場では、米FRBの早期の利上げ観測後退(フィスコ)
1)世界、米国での新型コロナ変異株流行が、回復の障害になるとに懸念が強まり、金利先物市場ではFRBの利上げ開始時期見通しが従来の2022年12月⇒2023年3月に先送りされた。10年債利回りが1%まで低下するとの見通しも浮上した。
2)だが、デルタ型(インド型)変異株が、景気見通しのリスクになるとしても、(1)欧米でワクチン接種率が急ピッチで進んでいる (2)治療薬の開発も進んでいる ことから、2020年のような深刻な景気の落ち込みは、回避できると考える。
3)2022年の経済成長率は歴史的に見て、2021年から半減する傾向にある。2021年は超大規模な財政刺激策という特別要因が成長を著しく押し上げたためである。
●5.米7月住宅市場指数80と、6月81から低下、前年7月は72であり需要は強い(フィスコ)
1)住宅価格の高騰で、購買見込み客指数は65と、今年初めて70を下回った。
●6.主要産油国で段階的生産量増の合意で一時65ドル台と約1カ月半ぶりの安値に(NHK)
1)7/6には、主な産油国の増産協議難航として、一時77ドル近くまで値上がりしていた。
●7.米ズームは、コールセンター向けクラウドサービスを手掛ける米「ファイブ9」を147億ドル(約1.6兆円)で買収すると発表(NHK)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/19、上海総合▲0、3,539(日経新聞)
・コロナ感染再拡大が不安視され、米中関係悪化も警戒された。しかし、中国人民銀行(中央銀行)の緩和スタンスに対する期待感は続いている。
・市場では、景気腰折れを回避するため、もう一段の金融緩和があるとの見方も流れている。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、鉄鋼・セメントの一角も冴えない。反面、医薬品株は高かった。
2)7/20、上海総合▲2安、3,536(亜州リサーチ)
・WTI原油先物の急落が、商品市場で売りを誘う流れとなった。コロナ変異種(デルタ株)がアジアや欧米で感染拡大しつつあり、経済回復が鈍化するとの警戒感が高まった。
・ただ、中国政府の景気テコ入れ策に対する期待感が根強く、下値は限定された。
・業種別では、非鉄・鉄鋼・資源などの下げが目立った。反面、半導体関連株は急伸した。
3)7/21、上海総合+25高、3,562(亜州リサーチ)
・3日続落のため値ごろ感から自立反発狙いの買いが先行した。
・景気回復の腰折れ回避のため、金融当局は緩和スタンスを強めるとの期待が強い。
・業種別では、自動車の上げが目立ち、ハイテク株も急伸した。反面、銀行株は冴えない。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/19、日経平均▲350円安、27,652円(NHK)
・インド(デルタ)株変異種が急速に拡大する国が相次ぎ、世界経済が減速することへの懸念が強まっている。加えて、中国の上海総合指数などアジア主要市場も軒並みに値下がりして、投資家がリスク回避姿勢を強め売り注文が膨らみ、下げ幅は一時▲500円を超えた。
・米7月ミシガン大学消費者マインド指数が予想を下回る。(ブルームバーグ)
米物価上昇の見通しも示され、米経済成長の持続性に対する懸念が強まった。東証1部の値下がり銘柄数は、全体の9割を占めている。
2)7/20、日経平均▲264円安、27,388円(日経新聞)
・感染力の強いインド型(デルタ株)の感染拡大懸念から、前日のNYダウが▲700ドル超下落したのを受け、日本株にも売り圧力が強まった。
・値ごろ感から買戻しが入ったが、米長期金利は低下し、WTI原油先物相場も大幅安になるなど、リスク回避の動きが市場全体に広がった。
・7/22から始まる東京五輪の4連休を前に手控えムードがあり、商いは低調だった。
3)7/21、日経平均+159円高、27,548円(日経新聞より抜粋)
・前日まで5日続落し、下げ幅は▲1,330円となっていたため、短期的な戻り期待や値ごろ感からの買いが優勢だった。
・新型コロナ感染再拡大で急落した米ダウが大幅に反発したのを受け、投資家心理の悪化にひとまず歯止めがかかった。
・日経平均は一時+400円を超えたが、明日から4連休に入るため見送りムードが広がり上げ幅縮小した。
●2.日本株、東京五輪祝日のため市場は休場
1)オリンピック祝日で7/22から4連休となるため、買い手控えられた。
●3.小型衛星網の構築へ、政府が観測データを事前購入で開発支援(読売新聞より抜粋)
1)100~500kg程度の小型衛星を群れのように連携させて運用する観測網は、「衛星コンステレーション」と呼ばれる。
2)データを地震や水害などの被災状況の把握、不審船の監視などに常時使える利点がある。
3)政府は、20基以上の小型衛星打ち上げを計画する企業を対象に、データ購入契約を締結する。日本独自の観測網の実現を目指す。
4)米宇宙企業スペースXは、1万基以上の衛星による高速通信の実現を目指すほか、農林水産業や交通・物流などでの活用が期待されている。
●4.企業動向
1)トヨタ 半導体不足で豊田市の高岡工場一部の生産ライン停止へ(NHK)
コロナ感染急拡大踏まえ、国内での五輪関連CM放送見送り(NHK)
2)キオクシア 旧:東芝メモリ、月内にも上場申請、半導体需要増が追い風(朝日新聞)
時価総額は3兆円との見方もある。
3)日本電産 台湾・鴻海精密工業とEV用モーター製造で、年内に合弁検討(京都新聞)
日本電産は、鴻海が量産を目指すEV向けに駆動用モーター等を供給
●5.企業業績
1)岩井コスモ 4~6月期純利益は+7.4億円と、前年同期比▲51%減(日経新聞)
2)ゲンダイAG 4~6月期営業利益+0.2億円黒字、前年▲3.4億円赤字(フィスコ)
3)タマホーム 5月期純利益+71億円、前年比+40%増(日経新聞)
4)キヤノン 12月期営業利益1,980億円⇒2,830億円に上方修正(フィスコ)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4062 イビデン 好調な業績。TSMCとの共同研究開発期待。
・6367 ダイキン 業績好調。原材料の銅価格の一服。
・1928 ライト工業 国土強靭化関連。
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