飲食卸売業倒産、6月に急増 事業継続断念が大半
2021年7月20日 17:14
新型コロナ感染症対策としての飲食店への営業制限は長期化しており、このところ周辺業種へも悪影響が広がりつつある。酒類を提供する飲食店との取引を停止するよう要請が出るなど卸売業者でも顧客を失いかねない営業制限が強まっている。資金繰り支援などにより落ち着いていたコロナ関連の倒産状況も春以降、自ら事業の継続を断念する「あきらめ型倒産」も増加傾向のようだ。
7月13日、東京商工リサーチが「2021年上半期(1-6月)の飲食料品卸売業の倒産動向調査」の結果を発表しているが、これによれば、今年上半期における負債額1000万円以上の飲食料品卸売業の倒産は前年同期比22.6%減の106件で、上半期では過去30年間で最少を記録した。主要取引先の飲食業の業況は悪化しているものの、巣ごもり需要を背景にした小売店からの受注が増加、支援策にも下支えされ飲食料品卸売業の倒産は低水準に抑制されてきたようだ。
しかし、緊急事態宣言やまん防が持続的に続いている4月以降は、3カ月連続でコロナ関連倒産の構成比が35.0%を超え、新型コロナの影響が徐々に顕在化し始めており、直近6月の飲食料品卸売業の倒産件数は27件と急増、10カ月ぶりに月間20件を上回り30件に近づく勢いだ。7月12日、東京都に4度目の緊急事態宣言が発令され、政府は卸売業者に対し、酒類を提供している飲食業者との取引を停止するよう要請するなど、飲食料品卸売業者にも混乱が広がっている。国民からの激しい批判によって政府は取引停止の方針を取り下げたものの、東京都では卸売業者にたいする同様の要請は続いており業者の混乱、戸惑いは払拭されたとは言えない。
形態別に倒産状況を見ると、消滅型の破産が84件で、全体の79.2%と約8割を占めており、先行きの見通しが立たず、事業継続を断念する「あきらめ型」の倒産・廃業が大半を占めているようだ。企業規模別に見ると、資本金1000万円以上で55件、構成比51.8%と5割を超え、さらに1億円以上でも3件発生しており、中堅以上の規模でも厳しさが増している状況がうかがわれる。コロナ禍の長期化で業績回復が遅れ、息切れする企業も出始めている。レポートでは「長引くコロナ禍で飲食業の不振の煽りを受けて事業環境は悪化しており、今後の動向が注目される」と結んでいる。飲食業の営業制限を強化するために関連業種への制限も強化されており、今後関連業種への悪影響が懸念される。(編集担当:久保田雄城)