コロナ禍の生活苦でもクレジットカード現金化は絶対NGである理由
2021年7月19日 16:01
総務省が公表した2020年の完全失業率は、コロナショックにより、前年より0.4%悪化の2.8%であった。就業者数は前年より48万人減、非正規雇用者に至っては75万人減となった。しかも、この年に職を失った女性は、男性の2倍にのぼったという。
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直近の海外のニュースに目を向けると、南アフリカ諸国では、生活苦に追いやられた国民による暴動が問題視され、キューバでも大々的なデモが起こっている。コロナショックによって、世界の飢餓人口が1億人以上増加したとWFPが警鐘を鳴らしてもいる。
国内でも、政府による大規模な経済対策を行なわれる一方で、日々の生活さえままならない状況に追い込まれた人たちもいる。リーマンショック以降、前代未聞の大量の通貨を市場にばらまき続ける日銀だが、その資金は社会の弱者にまでは届かないのが現状だ。
さて、このような世知辛い社会状況の中、少ない資金を増やそうと、クレジットカードでキャッシングして運用資金を調達する人も増えている。これから返済トラブルを起こす事例もある。さらに、もうキャッシングができないと、クレジットカードのショッピング枠で現金化するケースもあるのだ。
リーマンショック以降に利用者が増えたとされるクレジットカードの現金化は問題だ。クレジットカードについては、安定収入のない専業主婦でも利用することができる。いわゆるショッピング枠のみの支払い代行システムも利用可能だ。例えばショッピング枠30万円までとあれば、その範囲内でキャッシュレスにより買物ができるわけだ。もちろん代金は、その後数カ月に分割するなどしてカード会社へ返済する。
そこで、急遽現金が必要になった際、クレジットカードで高級品を購入し、それを質屋や買い取り専門店へ行って現金化する行為を繰り返す人がいる。これがクレジットカード現金化の原点だ。厳密にいえば、カードで購入した商品に関しては、返済が完了するまで、その所有権はカード会社にあるとされる。だが現在の法律では、その点を追求することができない。つまりカードで購入しようが、一旦購入した商品の処分は購入者にあるとするのが現行の法律で、その隙間をついた現金調達法がこれなのだ。
クレジットカード現金化のニーズが一気に膨らんだリーマンショック後では、現金化サイトも乱立した。まったく価値のない品物を高値でカード購入させ、その品物を他の業者(関連企業)が7掛け・8掛けで買い取る仕組みだ。購入時にキャッシュバックサービスで購入代金の70%以上を返金するタイプもある。
例えば10万円の商品を購入したとする場合、利用者は即時に7万円以上の現金を入手でき、返済は翌月以降の分割払いで良いこととなる。もちろん、現金化で10~30%の手数料が取られ、分割返済のための手数料も負担する。結局は闇金で借金することと大差ない高金利となるのだが、目の前の金銭問題を解決するには有効な手段に見えるかもしれない。
ただし、この利用方法はクレジットカード会社にとって極めて不利益な行為であり、2010年以降では、ほぼ全てのクレジットカードで現金化を利用規約違反と定めるようになった。
現金化は違法行為ではないが、利用者の権利を逸脱する行為であることには変わらない。どのカード利用者も、契約時に規約を承諾して利用する以上、規約違反はカード会社への背任行為であり、場合によっては損害賠償の対象となることに注意したい。
実際のところ、現金化を発見したカード会社ではカードの利用停止と強制解約で対応している。刑事訴訟や裁判沙汰にするほどの心配はないかもしれないが、それで安心することは禁物だ。強制解約になれば、カード利用の未返済分は一括返済を求められる。現金化する程資金で苦しんでいる人にとって、いきなり数十万円もの残債を完済するのは極めて困難だ。
するとカード会社は債務整理によって法的に解決を図る。多くは任意整理(利息免除・返済回数の延長)で話を付けるのだが、債務整理の行為が個人信用情報機関に登録され、登録が抹消されるまでの数年間は、金融機関からの借金が不可能になる点に注意したい。
なお、それまで使っていたクレジットカードも最終的には全て利用停止・強制解約となり、当面は現金生活を余儀なくされるだろう。このペナルティはあまりにも大きすぎるが、信用こそが第一の金融業、その信用を裏切れば当然受ける仕打ちであるのも事実だ。(記事:TO・記事一覧を見る)