大半を無観客にした東京五輪と、野球やサッカーの試合に沸く欧米 彼我の隔絶した対応は何故?

2021年7月17日 09:34

 13日、米メジャーリーグベースボール(MLB)・エンゼルスの大谷翔平が、MLBの第91回オールスター戦に出場した。場所はコロラド州デンバーの「クアーズ・フィールド」、投打の「二刀流」で出場することが注目を集めていた大谷は、今やMLBのアイドルのような存在だ。日本人が全米単位で、こんなに率直にリスペクトされたのは異例だ。クアーズ・フィールドの収容人数は4万9,469人、そこに当日は4万9,184人の観客が集まった。実質満員と呼べる状態だった。

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 新型コロナウイルスの新規感染者数は、米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると(以下の感染者集計も同じ)、米国では7月13日、4万1,402人が確認されているが、観客席にはお祭りを楽しもうとする陽気なアメリカンが集い、マスクをしている人はあまり見受けられなかった。

 東京オリンピックと同様に、1年間延期されていた欧州サッカー連盟(UEFA)の2020年欧州選手権(ユーロ2020)決勝戦は、9万人を収容できるロンドンの「ウェンブリー・スタジアム」で、11日に行われた。感染対策を意識して当日の観客数は上限の75%に制限されたが、6万人以上の観客が熱狂。MLBのオールスターゲームと同様に、マスクをしている人はほとんど見かけなかった。

 英国では13日、3万6,216人の新規感染者が報告されている。

 日本では13日、2396人の感染が確認され、第5波の危険が声高に語られ始めていた。東京オリンピックは既に大半の競技が無観客となることが決定していた。

 3カ国の人口はそれぞれざっと、米国が3億2000万人、英国が6600万人、日本が1億2000万人だから、13日に於ける100万人当りの感染者は、米国が129人、英国が549人に対して、日本は20人だ。新型コロナによる累計死者数では、米国が60万7399人、英国が12万8697人に対して日本は1万4991人なので、100万人当りに換算すると米国が1896人、英国が1954人で、日本は125人だ。

 大規模イベントが開催された2カ国と比較して、感染者数も死者数も圧倒的に少ない日本で、オリンピック競技の大半を無観客にするという対応は、欧米人からは明らかに過剰と見えるだろう。

 13日のインタビューで国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、オリンピックの開催について「日本国民が恐れる必要はない」と述べ、日本の専門家の助言による検査や防疫に対して「最も厳しい措置だ」と答えている。真意を推し量ることは出来ないが、日本の四角張った対応に”戸惑い”を感じた発言と聞こえないだろうか?

 新型コロナが基礎疾患のある人や高齢者にとって、脅威であることは以前から言われているだが、その脅威を実質的に「インフルエンザと大差ない」程度と見ている専門家は少なくない。もちろん、インフルエンザと同等程度の脅威と考えても、WHO(国際保健機関)が「破壊的」と批判した、熱狂的なサッカーの観戦振りは”やり過ぎ”だったろうが。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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