イギリス英語の多様性がよくわかる、おすすめの映像作品2選
2021年7月8日 07:57
過去数回にわたって紹介してきたイギリス英語のさまざまなアクセントだが、特徴的なアクセントはまだまだある。今回は比較的新しいアクセントと、イギリス本国以外で話されているアクセント、および、それを確認するのにおすすめの映像作品を紹介したい。
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■MLE(多文化的ロンドン英語)
MLEとは、「Multicultural London English」の頭文字を取ったもので、日本語で表すなら「多文化的ロンドン英語」とでも言おうか。ロンドンで話されるアクセントは以前取り上げたが、こちらは、20世紀後半から今世紀初頭にかけて主流になりつつある新しいアクセントだ。
近年のイギリス社会は、昔と比べると厳然たる階級差がなくなってきており、その傾向は若い世代ほど強く見られる。特に文化の中心であるロンドンでその傾向は顕著で、ロンドンの若者たちの話す英語からは、さまざまなアクセントが混じり合った他に見られない独特のアクセントが聞かれる。
MLEは、そうやって作られていった新しいアクセントで、イギリス国内だけでなく多文化の影響を受けて生まれた。特に影響の大きいのがカリブ海系移民の話す英語で、それに加えて、アジア系やアフリカ系の移民からの影響もあって、現在のように「MLE」として区別されるアクセントができあがったのである。
そんなMLEを聴くのにぴったりの作品が、『Top Boy(トップボーイ)』だ。2011年に第1シーズンがスタートしたこのクライムドラマは、おもにイーストロンドンを舞台に、麻薬密売に手を染める若者たちの生活を描いている。MLEのほか、ジャマイカ系のアクセントもふんだんに聴ける作品だ。日本でも配信中なので容易に視聴できる。
■(Irish English)アイルランド英語
北アイルランドのアクセントについては前回取り上げたが、アイルランド本国にも多くのアクセントや方言が存在する。国民の大半は英語を母国語とするが、アイルランド語が第1公用語であり、日常的にアイルランド語を話す人も少なくない。また、移民の増加によって、最近ではポーランド語などの中央ヨーロッパ系の言語も多く聞かれるようになった。
そんな事情もあって、簡単にアイルランド英語とひとまとめにはできないのだが、ここではアイルランドを代表するコメディアン、Chris O'Dowd(クリス・オダウド)主演のシットコム『Moone Boy』を紹介したい。アイルランドのほぼ中央に位置するロスコモン州ボイルを舞台に、少年と彼の空想上の友だちを中心に描く作品だ。クリス・オダウド自身ボイル出身で、彼の半自伝的作品とも言えるだろう。
アイルランド英語の代表的なアクセントが聴けるが、最初はとっつきにくいるかもしれない。しかし、良質なコメディで話自体が面白いし、字幕の助けを借りれば聴き取りもじきに慣れるはずだ。残念ながら日本では配信されていないようだが、国内でもDVD等で視聴できる。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)