イーロンマスクの発言と中国の規制強化でビットコイン反落 それでも買いか?
2021年7月6日 08:22
米電気自動車大手テスラのイーロンマスクCEOが5月12日に、SNSでビットコインによるテスラ車の売買取引を停止する方針を発信した。これは、テスラが保有するビットコインが会社資産の7%にも及んでいたことから、これ以上の保有はハイリスクだとヘッジを掛ける意味があったようだ。
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この発言を受けた暗号通貨市場は騒然となった。実は、それまで上昇トレンドにあったビットコイン相場が、その発言の3日前にあたる9日の630万円から、10日中に580万円まで急落していたのだ。すでに保有通貨の売却が始まっているとの懸念から、12日には売り注文が殺到し、取引価格は600万円から一気に530万円へと暴落する。
その後も疑心が不安を増幅させ、19日にはピーク値の半分以下となる320万円台まで落ち込んだ。だが真相はやや違っていた。マスクCEOは、保有するビットコインの売却に関しては否定しているのだ。下落要因はこれまでの急上昇に対するポジション調整、行き過ぎた上昇を冷却したとみるべきで、マスクCEO発言はきっかけに過ぎないだろう。
5月19日に日足チャートで80万円ほどの下ヒゲを付けたビットコイン相場だが、それが底打ちではなかった。ちょうどその日に、中国が仮想通貨に対して徹底した取引規制を掛けると公表した。中国の国内銀行における仮想通貨関連取引を一斉に禁止すると公表した。加えて仮想通貨マイニングファームが集中する四川省では、当局がマイニングマシンを強制的にシャットダウンさせるとの通達を出したのだ。
ビットコインマイニングの中枢となる中国・四川省でのマイニングが事実上封鎖された。これによってビットコインのハッシュレートが大幅に低下したのだ。仮想通貨レポートのBlockchain.comによると、7月1日時点でのハッシュレートがピークから半減したと言う。これは取引価格が反落したのと同等の下落率だ。具体的には、この5月14日に180.666EH/sまで上がってきたハッシュレートが、7月1日には89.036EH/sまで下落した。
ちなみにハッシュレートとは、暗号資産の取引承認作業(マイニング)の速度を示す指数で、数値が高いほどマイニングボリューム(マイナーの総力)が大きいことを意味する。つまり、ハッシュパワーの上昇はマイナーの増加を意味し、ビットコイン投資の増加を表すものとなる。必ずしも取引価格とハッシュレートが比例関係にあるわけではないが、これまでの推移をみると相乗効果の関係が見てとれるのだ。
さて、長い話になったが、結果としてはビットコインの取引価格が反落し、相場の熱量を示すハッシュレートも半減している。これでビットコインは過去のものとなってしまうのか?その答えは「否」だと考える。
まず、ビットコインの過去チャートを検証しよう。実は、直近の4年間をみると、ビットコイン相場は毎年50%下落を繰り返している。
・2017年: 238万円から170万円以上の下落で64万円へ
・2018年: 94万円から59万円の下落で35万円へ
・2019年: 150万円から80万円の下落で70万円へ
・2020年: 115万円から74万円下落して41万円へ
そして2021年も700万円から320万円まで半値落ちとなったが、ビットコイン相場が始まって以降、1BTCの価格が初値の約0.07円から700万円まで7億倍になった事実を忘れてはならない。長期スパンで分析すれば、定期的な半値落ちは急上昇のポジション調整の感がある。
なお、今後法定通貨のポジションを得るだろう暗号通貨のトップブランド・ビットコインは、始動初期の価値設定としては控え目だとさえ言える。現在、米ドルのマネーサプライM2は22兆ドルに達しつつある。世界の通貨供給量は90兆ドルを超える計算だ。
だがビットコインの時価総額は1兆ドルに達してはいない。すでに発行量の上限に差し掛かったビットコインだが、ポスト米ドルを意識した暗号通貨だとすれば、相対的なボリュームとしては低すぎる数値と言える。
取引価格とハッシュパワーが低下している今、相場がポジション調整をしているこの間にこそ、ビットコインを資産として購入しておくチャンスだと考えることもできるだろう。(記事:TO・記事一覧を見る)