下水熱を利用して省エネに車道融雪 国総研らが技術開発
2021年6月25日 08:51
SDGsが2015年に国連で採択されて以来、省エネルギーに対する関心や要求は高まり続けている。省エネルギーの実現に向けて有効活用が期待されているリソースの1つが、下水の熱エネルギーである。国土技術政策総合研究所(以下、国総研)は23日、積水化学、興和、新潟市と共同で、下水熱を利用した車道融雪技術を開発したと発表した。
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下水は一般に、冬は暖かく夏は冷たいという特性があるため、大気との温度差を生かして熱エネルギーとして活用することが出来る。特に都市部においては、下水は常に大量に存在しているが、これまではその熱エネルギーが活用された事例は少なかった。そのような背景から、国総研は下水熱を車道融雪に活用する実証の取り組みを2018年度より行ってきた。
下水熱を車道融雪に有効活用するために、採熱管や舗装の熱伝導性能を高くする技術を導入。また、採熱管の折り返し構造が無い「片押し方式」と呼ばれる採熱方式の採用や、水流を遅くするといった工夫も行われた。これらの技術によって、従来の電熱ヒーターやボイラーのような、熱を増幅する機器を使用する必要がなくなる。そのため、従来技術を用いた車道融雪よりもエネルギー消費を抑制することが期待されていた。
下水熱を利用した今回の方式を新潟市で導入した場合の効果を、エネルギー消費と年間総費用の観点から試算。その結果、今回の方式は従来の方式と比較して消費エネルギーを90%以上低減すると試算。また、年間総費用も電熱ヒーター方式より約14%、ボイラー式より約5%削減されるとの結果が得られている。
技術の概要や評価、設計・維持管理、導入検討事項などの今回の開発成果は、国総研のホームページにガイドラインとして公開されている。このガイドラインを参照することで、下水道事業者が車道融雪の技術の導入を検討することが出来るようになっている。