ZOZO、営業利益は前期比58.3%増と大幅伸長 商品取扱高の成長に伴う粗利の増加や販管比率の改善が利益に貢献

2021年6月23日 09:07

21/03期 連結業績の概要

栁澤孝旨氏:取締役副社長兼CFO、栁澤孝旨でございます。私からは、2021年3月期の通期の決算内容についてご説明いたします。

当期の決算概要はスライドに記載のとおりです。当期の商品取扱高は前期比21.5パーセント増の4,194億円、その他商品取扱高を除く商品取扱高は前期比18.2パーセント増の4,077億円となりました。営業利益は前期比58.3パーセント増の441億円、営業利益率は前期比2.7ポイントの改善の10.8パーセントとなりました。

商品取扱高、営業利益ともに、2021年1月29日に開示した上方修正後の会社計画を上回り、非常に好調な実績での着地となりました。商品取扱高、営業利益はそれぞれ過去最高実績を更新しています。

商品取扱高好調の要因は、新型コロナウイルス感染拡大を契機に、デジタルシフトによるプラスの影響が期初より継続しており、コロナ禍での消費活動の減速によるマイナス影響を大幅に上回ったことです。新規会員の獲得状況も非常に好調に推移しました。

営業利益は商品取扱高の成長に伴う粗利の増加や値引きコストの減少に伴う粗利率の改善、そして販管費率の改善により、商品取扱高成長率を大きく上回る伸び率となりました。以後の業績のご説明は、その他商品取扱高を除いた商品取扱高をベースにお話しさせていただきます。

連結業績の概要(四半期毎)

7ページは、連結業績の四半期推移になります。第4四半期期間において、その他商品取扱高を除いた商品取扱高は、前年同期比17.3パーセント増となりました。第4四半期は1月以降、首都圏で長期にわたり緊急事態宣言が発出されていたことにより、外出自粛による需要減が進むのではないかとの懸念もありましたが、その心配をよそに好調な状況が継続しました。

第3四半期までに獲得した新規ユーザーの定着、既存ユーザーの訪問増加に加え、引き続きコロナ禍でのデジタルシフトが進んだことにより、前年同期の暖冬によるマイナス影響の反動も相まって、このような結果になりました。

営業利益については、「ZOZOCOSME」の開始に伴い、テレビCMを含めたプロモーション施策を実施したことにより、プロモーション関連費を積極投下しました。また、期初計画および修正後計画達成に伴い、従業員への還元として期末に決算賞与を支給しています。

したがって、当期第3四半期までの水準よりも高額な販管費を計上しました。しかし商品取扱高の成長に伴う粗利の増加がプラスに効いたため、前年同期比21.8パーセント増の増益、営業利益率は9.7パーセントとなりました。以下では、業績詳細を抜粋してお話ししたいと思います。

営業利益の増減分析(対前期比)

8ページは、当期の営業利益の増減分析です。営業利益は前期の278億円から当期は441億円と、163億円の増益となっています。内訳については、営業利益の押し上げ要因となる「PayPayモール」を含めた取扱高拡大による受託手数料売上増加によりプラス197億円、また、広告事業による粗利の増加でプラス15.2億円となりました。

取扱高拡大による、その他売上の増加およびPB関連の評価損減少による粗利の増加でプラス50.9億円となりました。加えて、プロモーション関連費の減少によりプラス12.4億円、その他費用の減少でプラス2.7億円となりました。

一方で、押し下げの要因として物流拠点の増加、社員数の増加、決算賞与の支給等による固定費の増加でマイナス33.8億円となりました。取扱高拡大に比例して増加する変動費の増加についてはマイナス81.8億円となっています。

連結財政状態

9ページはバランスシートですが、特に目立った動きはありません。

連結キャッシュ・フローの推移

11ページ、営業活動によるキャッシュ・フローは順調に増加しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、当期においてyutori社の株式取得および、新オフィス・物流新拡張に伴う支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済のため増加しています。

商品取扱高の推移(四半期)

16ページは、商品取扱高の四半期推移となります。第4四半期の会計期間において、Zホールディングスによる積極的な販促投下により、「PayPayモール」の実績が特に好調でした。全体に占める「PayPayモール」の取扱比率が10.5パーセントと、初めて2桁の成長となりました。

販管費の推移(四半期)

22ページは、販管費の四半期推移についてです。第4四半期の会計期間において、「ZOZOCOSME」の開始に伴うテレビCMを含めたプロモーション施策を積極的に実施しました。これにより、商品取扱高対比のプロモーション関連比率は、2.8パーセントとなっています。

営業利益・営業利益率(対商品取扱高)の推移(四半期)

21ページは、営業利益、営業利益率の四半期推移です。第4四半期の会計期間においては、当期第3四半期までの水準よりも、商品取扱高対比の販管費率が上昇しています。

その結果、営業利益率は9.7パーセントへと低下しました。ただし、前年同期比では改善しました。

販管費の内訳

20ページは、通期累計の販管費の内訳についてご説明します。商品取扱高対比の販管費率は、23.5パーセントとなりました。前期比1.4ポイントの低下となります。

商品取扱高対比で低下した主な理由を4つ挙げます。1つ目は2020年4月から、会員向けの1パーセントポイント還元が終了したことです。ポイント施策の減少等で、ポイント関連費用がマイナス0.8パーセントとなりました。

2つ目が物流拠点内の作業効率の向上により、人件費のうち、物流関連費がマイナス0.3パーセントとなりました。

3つ目が取扱高の成長および一部物流拠点の解約により、賃借料がマイナス0.2パーセントとなりました。4つ目が、前年同期に発生したスポット費用の減少によりその他費用がマイナス0.5パーセントとなりました。

一方で、上昇要因が2つあります。まず、出荷単価の下落に伴う荷造運賃がプラス0.4パーセントとなりました。加えて人員増、期末の決算賞与支給に伴う社員の人件費の増加により、プラス0.3パーセントになったことによります。

年間購入者数

24ページからは、「ZOZOTOWN」の主なKPIをご説明します。以後の指標は「PayPayモール」の実績は含んでおらず、「ZOZOTOWN」本店の数字になります。

第4四半期末時点で、年間購入者数は前四半期比プラス34万人の948万人となっています。そのうち、アクティブ会員数は前四半期比プラス36万人の813万人です。ゲスト購入者は、前四半期比マイナス2万人の134万人となりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴うデジタルシフトにより、新規のアクティブ会員数の獲得は引き続き好調に推移しています。

また、年末や2021年1月の本セールの期間にテレビCM放映を実施、あるいは2021年3月は「ZOZOCOSME」の販売開始に伴うテレビCM放映等を含め、「ZOZOTOWN」リニューアルに絡めた各種プロモーション施策を講じたことが集客の強化につながった要因になっています。

ゲスト会員数の減少は直近数年の会員向けのサービスの強化が影響しており、おそらく今後も減少のトレンドが続くだろうと考えています。

ZOZOTOWN出店ショップ数の推移

25ページは、ショップ数の推移です。第4四半期末の時点のショップ数は、1,468ショップとなり、前四半期末比35ショップのプラスとなりました。

結果として、通期で新規出店したショップ数は合計で225ショップ、前期末から131ショップの純増となりました。第4四半期の出店数は79ショップで、主なショップとしては、「POLA」「ESTEE LAUDER」「Jo Malone London」といったコスメブランドです。

ラグジュアリーブランドでは、「クロエ」「メゾン マルジェラ」「Jil Sander」などが挙げられます。その他、双子のインフルエンサーがディレクションを務める「jumelle」といったようなインフルエンサーブランドがオープンしています。

平均商品単価の推移

30ページは、商品平均単価出荷単価についてです。平均商品単価は3,748円、前期比マイナス4.1パーセントとなりました。商品単価下落の要因は、比較的商品単価が低い価格帯の商品の売れ行きが好調なことが要因となっています。

平均出荷単価の推移

平均出荷単価は7,991円、前年同期比3.2パーセントのマイナスとなりました。1注文当たりの購入点数は、第4四半期は前年同期比で増加していましたが、商品単価の下落の影響で出荷単価も同じく下落したかたちとなりました。ここまでが2021年3月期の実績です。

22/03期 通期連結業績予想・配当金

ここからは2022年3月期の会社計画について簡単にご説明します。33ページは進行期の通期連結業績予想と配当金を記載しています。商品取扱高は前期比12.7パーセント増の4,728億円、その他商品取扱高を除いた商品取扱高は4,504億円で、成長率は10.5パーセントというかたちになっています。

営業利益は、前期比8.3パーセント増の478億円、営業利益率は10.6パーセントと計画しています。配当金に関しては今回、進行期よりも配当性向を引き上げまして、配当性向50パーセント以上を目標とし、1株当たりの配当金は55円と予定しています。

進行期は主に、「ZOZOTOWN」本店と「PayPayモール」店の2モール合算の商品取扱高を成長させていく方針であり、その他商品取扱高を除いて、全体で10パーセント以上の成長率を目指していこうと考えています。

なお、進行期より収益認識に関する会計基準が適応されることに伴い、これまで販売費に計上していたポイント関連費用の相当額を、売上高から控除するかたちで計画値を表示することになります。

事業区分の変更について

34ページでは、2022年3月期から事業区分を変更する計画について記載しています。

スライドに記載のとおり、事業区分の変更の背景として、「ZOZOTOWN」本店における商品取扱高の集約および、在庫リスク負担の有無や、商材の性質別に区分を明確化しようということで変更しています。

具体的には今までZOZOTOWN事業で、受託ショップと買取ショップ、「ZOZOUSED」を行い、これに加えて、PB事業、MSP事業というかたちで事業を区分していました。これについて、進行期からZOZOTOWN事業は受託販売、買取・製造販売、USED販売の3つとさせていただきます。そして、これまで別区分としていたPB事業、MSP事業に関しては、買取・製造販売に包含していこうと考えています。

新品、中古、商品の受託、買取という区分は、在庫リスクのあるなしによって区分分けしていこうと考えています。これに伴い進行期の事業別目標は、新たな事業区分で表示したいと思っています。

22/03期 事業別目標

35ページは、事業別目標についてです。受託販売が多く占める、ZOZOTOWN事業に関しては、引き続き事業単体で商品取扱高の2桁成長、前期比10.1パーセント増という目標で進行していこうと思います。

「PayPayモール」に関しては、今期も引き続きZホールディングスの販促費用の投下の恩恵を受けながら、当社としても、最大限の取り組みを進めていきます。「PayPayモール」は330億円、前期比17パーセントプラスと想定しています。

私の方からは以上になります。続きまして、代表の澤田よりご説明差し上げます。

売場・商材拡張を着実に実施

澤田宏太郎氏:みなさま、こんにちは。私の方から前期の簡単な振り返り、および今期以降の過ごし方についてご説明を差し上げます。

まず、前期の取り組みですが、みなさまこちらのスライドを覚えていますでしょうか? 昨年の今頃に売り場の拡張と、商材の拡張の両翼で今期は過ごしていきますという話をしたと思います。前期はここに掲げたものを着実に実行した1年だったと思っています。

売り場の拡張に関しては、先ほどから出ている「PayPayモール」に「ZOZOTOWN」として出店したため、その売上をどんどん伸ばしていくという方向でした。それ以外に商材拡張、スライド右側の部分に関しては、「ZOZOMAT」に始まり、珪素技術を利用しながらあるカテゴリーを強化していこうとしたところが主だった部分ですが、「ZOZOSHOES」そして、3月18日に「ZOZOCOSME」のモールを「ZOZOTOWN」の中にオープンしました。

また、みなさまご存知のように、第3四半期の終わりに発表させていただいた「ZOZOGLASS」の技術を使いながら、「ZOZOCOSME」を立ち上げていきました。同時に「ZOZOVILA」というハイエンドのブランドを集約したゾーンを作りオープンした次第です。

それ以外に夏頃には、D2C関連として、インフルエンサーをフックにしたプロモーションを実施した服の販売にもトライしていきました。このようなかたちで着実に実行した1年だったと考えています。

PayPayモール ZOZO店 好調

いくつか商材ご紹介します。まず、「PayPayモール」ZOZO店について、上期はかなり苦しい部分もありました。しかし、下期からプロモーションの費用を投下することにより、かなり伸びています。

スライドのグラフを見ていただければわかりますが、上期と下期は大違いということで、プライスプロモーションを中心としたプロモーションをZホールディングスで行っていただくことにより、「ZOZOTOWN」店では雪だるま式にユーザー数と売上が大きくなってきているという状況です。

さらに3月28日に、「PayPay祭り」のグランドフィナーレで相当なお祭り騒ぎとなり、初めて単日でZOZOの本店の売上を超えました。

これはエポックメイキングと言いますか、われわれにとっても驚きの数値になりました。進行期の「PayPayモール」店の姿についても、この調子でどんどん売上を増やしていくと思っていただいて構いません。

ZOZOGLASS /COSME①

2点目としては、「ZOZOCOSME」、「ZOZOGLASS」です。詳細な内容はご説明したとおりですが、現在「ZOZOGLASS」については注文件数が90万件を突破しています。おかげさまで非常に好評いただいています。

無料でお配りしている部分もありますが、非常に受けがよい状況です。「ZOZOTOWN」のアクティブユーザーは900万人いますが、その1割くらいの方が既に「ZOZOGLASS」を注文しているという状況です。

発送が追いついていない部分もあり、まだ待っているお客さまもいらっしゃいます。一刻でも早くお客さまに届けるために今、順次製造を増やし、頑張っているところです。

これを利用した肝心のコスメについては、コスメゾーンを立ち上げました。初日のコスメの売上は、細々と行っていた去年と比べていきなり20倍の売上をたたき出し好調なすべりだしとなりました。

第4四半期にはプロモーションもかなりかけているため、その効果が実際出てくると考えていただいて構いません。

ZOZOGLASS /COSME②

もう1つ、その「ZOZOGLASS」がどのように寄与しているかというところです。「ZOZOGLASS」注文による新規会員が10パーセント増加というのは何を指しているのかと言いますと、「ZOZOTOWN」における新規のお客さまが、このグラスが登場したことによって、10パーセントアップした数値になっています。

私どものほうで、新規のお客さまをどんどん取っていくことが業績アップの一番の近道ということで、それをずっと追いかけてきました。このようなかたちで、新たな技術やサービス等を投入することにより、さらにお客さまの獲得を加速させていくということで、本当に狙いどおりのかたちとなっています。

SNS等で散見されるコメントをいくつか拾ってみましたが、非常に好印象を持っていただいている状況です。肌の色を診断するというサービスや、実際に肌の色と一緒の色のファンデを推奨するといったものもあります。そして、「買ってみたらばっちりだった」というコメントが結構見られ、我々としてはうれしい限りですし、非常に手ごたえを感じています。

経営戦略として「MORE FASHION×FASHION TECH」ということを掲げています。このようなテクノロジーを軸にしながらファッションおよびコスメなどのファッション関連商材を売っていくというのが、これから我々の進む道と理解していただいて構いません。

簡単ですが以上が前期の振り返りとなります。ここからは、今期以降の戦略についてお伝えします。ただ、単年度というよりは、今後数年の過ごし方をご紹介することを最初に申し上げておきます。

戦略の3本柱

今後数年、この3本の柱で走っていきます。まず1点目は、今の「ZOZOTOWN」をどのように伸ばしていくかということで、非常に基本的な戦略的になります。後ほど順を追って説明しますが、「買う」以外のトラフィックをどんどん増やしていこうというのが戦略の1本目です。

2点目は、生産支援に踏み込みます。そして3点目は、技術ライセンスの販売にトライしていきます。特に3点目に関しては、海外へどう攻めていくかというところにフォーカスした戦略となります。

1. 「買う」 以外のトラフィックも増やす

1点目は、一言で言いますと、「ファッションを『買う』ならZOZO」というところに向けて、我々は走ってきましたが、それを「ファッションの『こと』ならZOZO」へというように、掛け声を少し変えていきます。

今まで、我々は、ブランドからお預かりした商品をどのように売っていくか、またどうやって品揃えし、どのように買いやすいかたちで買っていただくかを、とにかくひたすら考えてきました。それが今の「ZOZOTOWN」だと思っています。

そしてここから、もう一段ステップアップをする時期に来ていると考えており、ファッションを売るという意味で、圧倒的なカテゴリーキラーとして突き抜ける所存です。そのための武器が何かということですが、1つは、パーソナライズがキーワードになってくるかと思います。

我々は非常にいろいろなデータを所有しているため、それを操るAIに関する人材もたくさん集まってきてくれます。そのようなものを使いながら、トラフィックを増やしていくことを考えています。

もう1つは、ブランドの持っているコンテンツを、もっと「ZOZOTOWN」で活用していただこうという戦略も持っています。このように、ここまでに養ってきたものが、未だアウトプットとして活かせていない部分があります。買うだけはなく、買わなくてもいいけれども、「『ZOZOTOWN』って楽しいよね。おもしろいよね」と思ってとにかく毎日来ていただけるところにする戦略です。

実際に、このように毎日でも楽しみにしながら来てくれるお客さまが増えれば、買っていただかなくても、収益を獲得できるチャンスが生まれます。そのような目的を持ち、この戦略を立てています。これだけでは、具体的なイメージが湧かないと思いますので、たとえ話を1つします。

パーソナライズ

例えば、パーソナライズドコンテンツという毎日来てみて楽しいと思っていただけるアプリ、サイトを仕立てていくにはこのような考え方を持っています。

何度も申し上げているように、我々は唯一無二の計測技術を持っています。先ほど「ZOZOGLASS」でもご説明したように、ユーザーから非常に好評を得ているものです。

「ZOZOSUIT2」はまだ一般の方に行き届くかたちにはしていないのですが、これを使って、ユーザーの骨格診断が行えます。人それぞれに合わせたかたちで骨格を診断することができるのです。

「ZOZOGLASS」は肌の色を計測できるようになっているため、そうした情報を組み合わせていくことにより、リコメンドの精度が非常に上がると思っています。骨格や体格に合っていて、かつ肌色にも合うコーディネートや商品をしっかりリコメンドできる環境があります。

そうすることにより、商品に限らずコーディネーションも、同じ体格や肌色のモデルの画像を紹介できるようになります。これがファッション雑誌に代わるWebにおける雑誌などの読みものになり得ると思っています。

毎日来ていただき、毎日見てもらうということで、自分に合った商品やコーデ、いろいろな情報が詰まっているサイトならば、そのようなことが実現できると考えています。

あくまでもこれは1つの例ですが、何を申し上げたいかと言いますと、我々の持っているオリジナリティのもとで、カテゴリーキラーとして突き抜けていくということになります。

ブランドコンテンツ

もう1つはブランドの持っているコンテンツを存分に「ZOZOTOWN」上で発揮していただく、あるいは披露する仕組みについてです。現在、1つのプロダクトを絶賛開発中です。今年度中には間違いなく世の中に出せると思っています。こちらは、一般消費者に使っていただくアプリではなく、主にブランドショップ店員の方に使っていただくことを想定して作り込んでいるものです。

名前を「FAANs」とつけていますが、これは「Fashion Advisors Are Neighbors」、日本語では「あなたの近くにいるファッションアドバイザー」というコンセプトです。何ができるかと言いますと、まず、新型コロナウイルスの影響で店舗の在り方も変わってきているショップ店員の方に自らのコーデ投稿を、ウェアを中心に積極的に行ってもらいます。

そこに関して実際にどのように行っているのか、またどのような効果があるかなど、投稿者からはなかなか確認できない状態でしたが、自分が投稿したものがWeb上でどのように見られているか、またどのような人に見られているか、そして伸びているかを確認できるアプリとなっています。

加えて、実際に店舗等からライブ配信するような仕組みも揃える予定です。実際にユーザーとコミュニケーションを取れるかたちを想定しており、プッシュ型とまではいかなくてもライブ配信によるWeb接客が可能です。

「ZOZOTOWN」に来ていただいたお客さまが、買う前に何か気になることがあったり、「ここさえわかればもっと買うのにな」と思ったときに、ブランドをよく知るショップスタッフの方の接客が、実際に接客することにより購入への後押しとなります。「ZOZOTOWN」上ではすごく安心してブランドの商品が買えるという仕組みです。

このようなかたちで、店舗の在り方が変わってきている中で、結局、最終的に店舗の価値とは何かと考えると、人間のところだと思います。ショップスタッフの方の知見、そのようなものが、リアル店舗における最大の価値だと思っていますので、遺憾なく「ZOZOTOWN」上で発揮していただく仕組みをご用意しています。

これにより、先ほどの話と同様に、「ZOZOTOWN」に来るお客さまが非常に安心してお買い物ができますし、またショップ店員からのいろいろな提案を毎日お客さまへ届けることもできると思います。そのようなすごく楽しめるサイト、アプリになるように目論んでいます。

その他、利益ドライバーの拡張

結果として、どのようになっていくかというお話です。元の話に戻りますが、我々はファッションを買うということに、とにかくフォーカスしてきました。しかし、ここから少し視点を広げることにより、利益自体を獲得できるフィールドが少し増えていくのではないかと想定しています。

例えば、広告ビジネスです。すでに行っていますが、ここを伸ばせると考えています。我々の技術では、髪型で画像が検索できたり、コーディネートの検索を髪型ベースでできたりします。そうしたコンテンツが入ってくれば、ネイル、ヘアサロンの業者の広告や、送客するといったことも考えられるかと思います。

先ほど申し上げた「FAANs」では、どうしてもリアル店舗でものが見たいという方もいらっしゃいますので、そうしたリアル店舗へ送客していくことも考えられます。

いずれにせよ、手数料やアフィリエイトのようなかたちでGMVを、買わなくても収益を稼げるようなモデルを今後は志向していくことになります。

将来的には、「服のことならZOZO」というところまで進めば、例えばファッション関連の人材マッチングビジネスやサービスも創造でき、また出店時のローンなどの金融関連にも踏み込むことができるため、かなり広がりのあるかたちになるかと思っています。

2. 生産支援に踏み込む①

2点目は、生産支援に踏み込むということです。我々は、小売りということで、製造に関してはあまりタッチしてこなかったのが現状です。ところが、世の中ではアパレルブランドがかなり作り過ぎて在庫が余ると環境にも悪いといった世論もあり、それは事実だと思っています。

そのような中、我々ができることは何かと考えた時に、生産の方に踏み込むべきだという意思決定をしました。ただのブランドではなく、あくまでも生産支援というかたちで踏み込んでいきます。

これにより、我々われわれなりの方法でサプライチェーンのところを秀逸なものにできるのではないかと考えています。なぜできるかと言いますと、1つの理由として売り場を持っているというところが大きいと思います。

実際に、在庫が売れないという時に、「ZOZOTOWN」のTOPページに掲載すれば、一瞬ではけるといった需要のコントロールができるのが最大の強みと考えています。

2. 生産支援に踏み込む②

もう1つの方法は、MTOです。受注生産というかたちについて、かなりの短納期が可能となる仕掛けが実現できると考えています。そこは技術の力になります。

Webで受注して工場に実際に受注データが流れていき、そこから製造ラインが動いていきます。この部分のIT化を進めることにより、MTOという在庫ゼロのビジネスモデルが可能となると確信しています。そこにしっかりトライしていくことをここでお伝えします。

3. 「技術ライセンス販売」 にトライ①

3本目の柱は、技術ライセンス販売にトライというところです。すでにいくつか紹介しましたが、測定技術に関しては、非常にユニークなものになってきています。世界的に見ても非常にユニークだと評価をいただいています。

ちなみに、スライド左下に「ZOZOMAT for hands」がありますが、こちらは、足ではなく、手なのです。同様の技術を使うことにより、3Dで手の測定ができる技術がすでに完成に近づいている状況です。まずはこのような技術をライセンス販売していこうというのが3本目の柱です。どのように活きるかということについては、いろいろとトライをしていく必要があるためまだこれからになります。

3. 「技術ライセンス販売」 にトライ②

海外に出て行くにあたり、商習慣や好みなどに合わせて服を販売していくというよりは、これらの技術には共通言語に近い部分があるため、活用できれば海外には打って出やすいものと考えています。実際に、「この技術をオープン化していきます」という宣言をしている中で、いろいろな企業から声掛けいただいています。

例えば、「ZOZOSUIT2」について言いますと、ダイエットサービスを提供している企業、また、医療関係に関しても供給の可能性が出てきています。「ZOZOMAT for hands」に関しては、想像のとおり、ジュエリー販売会社やメーカーとの協業も考えられます。とにかく、いろいろなところから、いろいろなお声掛けいただいており、うれしい限りです。

これらを実際に輸出していきながら、もちろん国内も含めて、いろいろな企業とパートナーを組むことにより最終的には収益化をするということを目論んでいます。

利益ドライバーの複数化へ

最終的にどのような姿を想定しているのかについて、スライドに記載しているとおりに、GMVの成長だけに頼らない利益構造を作ることを目的としています。先ほど予算の発表もあったように2桁成長はマストだと宣言していますが、それだけに頼らない利益構造が要ると考えています。

それぞれ、1、2、3本の戦略によって、GMVの成長に頼らない利益を稼いでいくモデル、そのような姿を目指しながら、ここ数年は、この3本柱の戦略で走っていく所存です。

以上が、今期以降の過ごし方についてのご説明となります。

ファッションとテクノロジーで 事業成長と社会課題解決を目指します

サステナビリティの取り組みに関してです。我々は今までCSRの範疇でいろいろなことを行ってきました。震災への支援や千葉に根差したいろいろなことを行ってきてはいるのですが、遅ればせながらそのようなことを一度体系立てるということで意思決定し、骨子をご説明します。

まず、どういったかたちでサステナビリティというものに取り組んでいくかということです。企業理念は、「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」そして経営戦略は、「MORE FASHION×FASHION TECH」と掲げています。

必然的に、ファッションとテクノロジーというものを使って社会の課題解決を目指していくということになります。もちろん、事業成長自体も追いかけるというかたちになっていきます。

サステナビリティステートメント

一番の基礎となるサステナビリティステートメントというものを作りましたが、一言で「ファッションでつなぐサステナブルな未来へ。」です。

ここでのこだわりは、「つなぐ」ということで、我々は、プラットフォーマーとして、このまま突っ走っていくということになりますので、つなぐというところが我々の価値なのです。

人と人とをつなぐ、もしくは、企業と企業、技術と技術などいろいろなつなぎ方があります。その中でプラットフォーマーなりのつなぎ方により、サステナブルな方向へ世の中を持っていくことをここでは宣言させていただきます。

サステナビリティ 4つの重点取り組み

具体的に何を行うかということについては社内で非常に活発な議論をしました。そしてこの4つの重点取り組みに絞らせていただきました。

1つ目は、サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供です。直感的にわかりやすいと思うのですが、そのような商品を志向するお客さまと、そのような商品を作っているブランドをつなぐということです。

2つ目は、直球ですが、先ほどの戦略の2本目とほぼ同じです。廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築ということで、本丸になってくると思います。とにかく在庫を少なくすることにより、無駄なものを減らして環境負荷を下げるといったことを、我々が今まで養ってきたものをフル活用して目指すということになります。

そして、3つ目に関しては、ファッションに関わる全ての人のダイバーシティ&インクルージョン推進ということです。僭越ではありますが、ファッション業界の先頭を突っ走っているという自負があるため我々が率先してこのような考えを、いろいろなブランドや制作者などへ発信していきながら、いろいろな人と人をつないで巻き込んでいくという考えです。

4つ目は、今まで行ってきたことの延長が多いと思うのですが、我々の本社を移転し、そこに根差していくことを決めています。そのためまずは地域の課題解決に向けて我々のできることを精一杯実行するということになります。

ゆくゆくは、そのような方法がほかの地域にも派生していく未来を想像しています。

少し時間を超過しましたが、我々としてのサステナビリティに関する取り組みのお話も含めてご説明させていただきました。私からは以上になります。ありがとうございました。

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